BJ トレンドフォーカス Vol.3
企業の社名変更と、その前後のXポストに関する分析
2024.11.06
ブランド・ジャパンは毎年秋に想起調査をおこない、ノミネートする1500のブランドを精査・決定しています。新しくノミネートに加わるブランドもあれば、想起されずに前年のノミネートから落ちるブランドもあります。毎年どんなブランドがノミネートされるのか、いつも楽しみです。また、社名を変更し、新たな名称でノミネートされるブランドもあります。今回は、2023年に社名変更したブランドについて、様々なコミュニケーション施策が、ブランド・ジャパン2024(調査期間は2023年11月8日~11月27日)の結果やXのポストに、どのように反映されたのかを探っていきます。
ニデックの社名変更とXでの反応
日本電産株式会社は2023 年に創立 50 周年を迎えるにあたり、2023年4月1日に、ニデック株式会社に社名変更しました。もともと「ニデック」は海外でも使われていました。社名変更の前後に、テレビCMやオウンドメディア、SNSなどで、様々なコミュニケーションを実施しました。社名変更の同日から第一弾のテレビCMの放映を開始しましたが、「ニデック」をCM中に繰り返し、新社名の積極的な浸透を図りました。その後、同年10月1日からは新バージョンのCMがスタート。ニデックのモーターなどの部品が、日常生活で使う家電製品などに組み込まれていることを表現しながら、ニデックが身近な存在であることを訴求しました。その後も、いろいろなバージョンのCMを展開し、社名と事業内容の両方を訴求しています。また、企業のWebサイトでは特設サイトを設けて、CM内で登場する自社製品を紹介しています。そのほかにも、XやInstagramといったSNSでのプレゼントキャンペーンを実施しており、複合的なコミュニケーション施策をおこないました。
世間からの反応として、Xポスト分析を通して寄せられた投稿を見たところ、CMに出演しているタレント名のハッシュタグ以外にも、「プレゼント」「キャンペーン」といった語句が上位にあがっていました(※表1)。ニデックのオルゴールのプレゼントキャンペーンをおこなっていた際は「オルゴール」の語句も多くみられました。投稿内容として、「素敵なキャンペーンありがとうございます。ご縁がありますように」といった当選結果を心待ちにする投稿や、実際の当選者からは「母の日のプレゼントとして送り、喜んでくれたので私もうれしかったです」という喜びの投稿がみられました。
このようなネット上での盛り上がりを反映してか、ブランド・ジャパン2024(ビジネスパーソン編)の結果をみると、広告接触率は「よく見かける」「ときどき見かける」の合計が58.5%となり、前回の26.8%から31.7pt上昇(※グラフ1)しました。また、ブランドのイメージ項目では「顧客を大切にしている」「チャレンジ精神がある」といった項目が前回よりも伸びました。プレゼントキャンペーンではドライヤーがプレゼントの対象になったことがあったのですが、このドライヤーは最小最軽量のパワフルなモーターを搭載し、従来のモデルと比べて約40%の軽量化に成功したものでした。Xでは「こだわりのニデックのモーターを使った世界一のドライヤーをぜひ使ってみたい」「ニデック製のパワフルなモーターで速乾が実現できているんですね。愛用したいです」といった投稿がみられました。世界No.1総合モーターメーカーとしての最小最軽量への挑戦や、その技術が搭載された製品の体験を通じて、前述のイメージ向上にもつながったのかもしれません。注目を集める情報を積み重ねて発信することで、ブランド・ジャパンの各種指標のスコアが、さらに上がっていくのではないかと思われます。
TOPPANの社名変更とXでの反応
社名変更後も認知率を維持している企業の好例として、「TOPPAN」があります。凸版印刷株式会社は2023年10月1日にTOPPAN ホールディングス株式会社に社名変更しました。テレビCMでは、社名とあわせて企業姿勢もしっかりと訴求しています。Xポスト分析を通して寄せられた投稿をみると、ハッシュタグのトップ3にはテレビCMで起用されているタレント名があがっています。また、「CM」というハッシュタグも上位にあがっており、投稿をみると、「CMのバリエーションが増えてうれしい」「面白い」「CMの歌が脳内再生される」といった投稿がみられ、CMが前向きな影響を与えていることがうかがえます。
ブランド・ジャパン2024(ビジネスパーソン編)の結果にもその影響が見て取れ、企業認知率は67.9%で、同2023の63.5%より認知率が上昇しました(※グラフ2)。認知率の内訳をみると、「名前だけは知っている」が37.4%となり、2023年の22.0%より増えました。こうした「名称のみ認知者」が企業のことを「よく知っている、詳細認知者」にどのくらい変化するのか、今後注目していきたいところです。
ブランド・ジャパンの本調査は、各ブランドに対して「知っている」「興味がある」と回答した人を対象にイメージ項目などの設問を聞いています。ブランディングを推進するうえで、まずはブランド名を「知ってもらう」ことが最初の砦です。この2社は、その砦を様々なコミュニケーション施策を通して超えつつある好例であると言えます。
グラフ1:ニデックの2年間の広告接触率「見かける計」
グラフ2:TOPPANの認知率の内訳
表1:ニデックのハッシュタグ上位10(2024年4月1日~2024年9月30日)
順位 | ハッシュタグ | 出現回数 |
---|---|---|
1 | #Nidecプレゼントキャンペーン | 221 |
2 | #Nidec | 21 |
3 | #ニデック | 21 |
4 | #ニデック京都タワー | 15 |
5 | #Amazon | 12 |
6 | #Amazonプライムデー | 11 |
7 | #PR | 7 |
8 | #日本電産 | 6 |
9 | #京都ハンナリーズ | 6 |
10 | #がっちりマンデー | 5 |