BJ トレンドフォーカス Vol.2

Xのポスト分析から見る、コロナ禍後の「ファイザー」「モデルナ」のブランド力評価

  • 福田 孝太近影。

    ブランド本部ブランドコミュニケーション部 チーフプロデューサー 福田 孝太

第2回:Xのポスト分析から見る、コロナ禍後の「ファイザー」「モデルナ」のブランド力評価

ブランド・ジャパン2024では、今回ご紹介する「ファイザー」「モデルナ」を含めて、製薬関連で「37ブランド」がノミネートされています。

ブランド・ジャパンとXのポスト分析を通して、コロナ禍後の「ファイザー」「モデルナ」両社のブランド力の評価について見ていきます。

コロナ禍後、2社のブランド力の評価はどうなったか

新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行してから1年以上が経過しましたが、コロナ禍当時を振り返ると、私たち生活者は、感染への恐怖、収入減少への懸念、社会からの孤立など不安を抱える日々が続き、外出制限や仕事の変化による生活リズムの崩れも、心身への大きな負担となりました。 そのような中、製薬会社に対してワクチン開発や治療薬に対する期待と関心が高まりました。各製薬会社、特にファイザーとモデルナは迅速なワクチン開発、供給拡大、膨大なデータ収集と公開など、世界的な期待に応えたこともあり、ブランド・ジャパン2024(調査期間:2023年11月)では、「ファイザー」「モデルナ」の両社が、イノベーティブ因子で高い評価を得ました(※表1)。

表1:「ブランド・ジャパン2024」製薬業界のイノベーティブ因子ランキング TOP10
(全体順位は1,000ブランド中)

業界内順位 ブランド名 全体順位
1 Pfizer ファイザー 86
2 モデルナ 95
3 LION ライオン 123
4 Takeda 武田薬品工業 149
5 meiji 明治 175
6 塩野義製薬 250
7 ロート製薬 292
8 Otsuka 大塚製薬 320
9 沢井製薬 358
10 CHUGAI 中外製薬 366

「ブランド・ジャパン」(一般生活者編)は、企業ブランドと製品・サービスブランド合わせて1,000ブランドが対象。「フレンドリー」「コンビニエント」「アウトスタンディング」「イノベーティブ」という4指標からブランド総合力を算出している。

また、Xポスト分析を通して両社に寄せられた投稿を見てみたところ、評価が高い投稿には以下のような内容がありました。

・コロナワクチンの効果に関する称賛

多くの投稿が、ファイザーとモデルナのコロナワクチンの高い効果と迅速な対応を称賛しました。 「ファイザーとモデルナのワクチンのおかげで、多くの命が救われた」という感謝の声が広がり、両社の科学的アプローチに対する評価が高まりました。

・迅速な製品開発と供給

両社が迅速にワクチンを開発し、世界中に供給したことが高く評価されました。 「短期間でのワクチン開発と供給に感謝」「グローバルな対応に敬意を表します」といった投稿が、多くのユーザーから寄せられました。

・情報の透明性と科学的根拠

ファイザーとモデルナがワクチンの臨床試験データを公開し、科学的な根拠に基づく情報提供を行ったことが称賛されました。 「データの透明性が安心感を与えてくれた」「信頼できる科学に基づく情報提供に感謝」といった投稿が多く見られました。

・新たな治療法の開発への期待

ワクチンの成功を受けて、両社の今後の治療法や医薬品開発に対する期待が高まる投稿が多数ありました。 「今後の研究開発にも期待しています」「新たな治療法に期待を寄せています」といった前向きなコメントが目立ちました。

・社会貢献と企業の姿勢

両社の社会貢献活動や、ワクチンの公平な配布に対する姿勢が評価されました。 「発展途上国へのワクチン供給に感謝」「企業の社会的責任を果たしている」といった称賛の声が多数ありました。

これらの投稿内容は、ファイザーとモデルナがコロナパンデミックに対して果たした重要な役割を評価したもので、ブランド・ジャパン2024における、「ファイザー」「モデルナ」へのイノベーティブ評価(変革・注目)の高さの要因とも考えられます。

2024年の小林製薬に関する話題

製薬業界の企業ブランディングにおいては、「企業としての信頼性」と「情報の透明性」が欠かせません。 製薬会社は製品の効果を裏付ける科学的根拠や、厳格な品質管理体制を示すことなどを通じて、会社の信頼を得ています。またコロナ禍においてもそうだったように、各製薬会社は科学的エビデンスに基づいた透明性のある情報発信を推進しています。

信頼性と透明性が重要な製薬業界において、今年は大きな話題がありました。小林製薬の、いわゆる「紅麹問題」(紅麹原料を含む機能性表示食品による健康被害問題)は皆さまの記憶にも新しいことでしょう。この問題は、健康被害だけでなく、企業のブランド力の棄損につながりかねない問題として、多くの報道がなされました。2024年4月から8月までの期間において、「小林製薬」に対してXポスト分析で見たところ、その対応が後手に回るなど批判的な意見が多くみられました。ただ、同社を応援する声もあり、次回のブランド・ジャパン2025において、Xでポストされたこれらの投稿内容が、ブランド評価にどう影響を与えるのか注目していきたいと思います。

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