横河電機「未来への共創 Co-innovating tomorrow」

事業の継続的成長を支えるブランディングの軌跡

  • 山本三樹2023

    サステナビリティ本部 サステナビリティ事業統括補佐 山本 三樹

横河電機は、計測・制御技術の分野で日本のモノづくりを代表する企業であり、産業界を支えてきたブランドである。産業界が直面する加速する変化に対応するため、横河電機は従来のビジネスモデルを超える継続的な成長を目指し、企業アイデンティティの整理とブランドの再構築に着手した。商品・サービスだけでなく、顧客や社会、従業員をステークホルダーとするコーポレート全体のブランディングを、本書で詳しく学ぶことができる。

社会の変化に適応するBtoBブランディングの軌跡

「測る力とつなぐ力で、地球の未来に責任を果たす。」

これは横河電機の社員全員で策定したパーパスである。パーパスの策定と浸透は、多くの企業が直面する課題であるが、横河電機は全社員が参画する枠組みを実現し、従業員の総意としてのコミットメントをゆるぎない精神的な支柱にしている。このような取り組みが成功した一例が社員をブランドアンバサダーとして巻き込んだブランディングの成果と言えるだろう。

これらのコーポレートブランドと経営を結びつける事例が、本書では時系列に沿って紹介されている。本書の帯には、「経営手法としての企業ブランディングとは何かを教えてくれる探求の書!」と阿久津聡氏(一橋大学大学院経営管理研究科国際企業戦略専攻 教授)の言葉が引用されている。これはBtoBブランディングを実践する企業すべてにとっての目標である。

横河電機ブランドブック制作委員会は、「コーポレートブランディングに取り組む方々に示唆を提供できれば」との意図を持って本書を企画・制作した。主に2013年から2023年現在までの時系列に沿ったブランド再構築の記録がなされており、本書はブランディングに関わる多くのビジネスパーソンにとってのヒントを与えてくれる。

例えば、前述したパーパス策定の章では、全社員を巻き込むプロセスとして、全社員アンケートの実施、コメント解析、社長とのラウンドテーブルの詳細が語られている。海外売上高が7割を占める同社では、グローバル全体を巻き込んだ社員の声がマップ化されている点も特徴的である。

体系的にコーポレートブランディングを構築し、浸透させていく過程は、BtoB事業のブランド担当者だけでなく、企業価値向上に関わるビジネスパーソンにとっても、本書は貴重な指南書となっている。タイトル「未来への共創」は、日本のBtoB企業すべてに投げかけられたメッセージである。

目次

Prologue 横河電機のブランディングの歩み

Chapter 1 契機 創立100周年を前にして動き出した
ブランドの再構築

【寄稿】日本企業に求められる“ブランド経営”
重要なのは継続性とチューニングのバランス
中央大学 名誉教授 田中洋氏

Chapter 2 初動 「Co-innovating tomorrow」の誕生

Chapter 3 浸透 社外への認知度向上と社内への
啓蒙活動

【寄稿】BtoB企業が持つ技術や知財を共創の軸に
ブランディングで暗黙知を形式知化する。
事業構想大学院大学 学長 田中里沙氏

Chapter 4 展開 製品、サービス、ソリューションの
領域におけるブランディング

Chapter 5 発展 社員参画による「パーパス」策定と
ブランディングの新たな展開

【特別対談】無形資産としてのブランド価値
一橋ビジネススクール 国際企業戦略専攻
客員教授 名和高司氏

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横河電機株式会社 常務執行役員
マーケティング本部 本部長 阿部剛士氏

Epilogue 横河電機のリブランディングに込めた想い

山本三樹

サステナビリティ本部
サステナビリティ事業統括補佐
山本 三樹(やまもと・みき)

2015年日経BPコンサルティング入社。
入社以来、事業開発とマーケティングを営業開発本部、デジタル本部にて担当。
企業価値が正しく評価される社会の実現がテーマ。
情報開示やコミュニケーションサイドからの支援を行っている。