人的資本向上のための従業員エンゲージメント
社内報でパーパス共感度・実践度を上げる―すぐ使える目的別マトリクス付き
人的資本の情報開示に向けて国や先行企業での取り組みが進む中、従業員エンゲージメントに改めて注目が集まっています。経済産業省の『人材版伊藤レポート2.0』では「社員エンゲージメントを高めるための取組」が共通要素の1つに取り上げられ、人的資本情報開示のガイドラインであるISO30414では「組織文化」領域の中にエンゲージメントの項目が記載されています。どういった切り口で従業員エンゲージメントを可視化するのか。経営戦略を実現させるための手段としてどのように従業員エンゲージメントを意義付けるのか。国・研究機関・企業が試行錯誤している状況です。
従業員エンゲージメント向上はステップで考える
従業員エンゲージメントと業績向上との関わりは研究途上ではありますが、手をこまねいて待っているわけにはいきません。従業員エンゲージメントの向上には時間がかかるからです。経済産業省の『人材版伊藤レポート2.0』において「社員のエンゲージメントレベルの向上には、それに資する様々な取組について試行錯誤を重ねることが必要」と書かれているように、トライアンドエラーのプロセスが避けられません。
ただ、やみくもに試行錯誤しても膨大な時間と手間がかかります。従業員エンゲージメントの向上にはステップ(順番)があります。ステップにのっとって自社に適した施策を立てることが重要です。ステップはシンプルなものです。「認知・理解」から「共感」へ、さらに「行動(実践)」へという流れで考えます。
自社の現状を把握せず、いきなり行動(実践)から始めてしまうと独りよがりな活動になってしまいます。自社は「認知・理解」「共感」「行動(実践)」のどのステップにいるのか。現状を知らなければ対策の打ちようがありません。まずは調査による従業員エンゲージメントのデータ化から始めましょう。
従業員エンゲージメント向上におけるステップ
エンゲージメント向上にはステップ(順番)があり、自社の現状にそぐわない施策は掛け声倒れになりやすい
まずエンゲージメントをデータ化。次にステップで分析
自社のエンゲージメント調査を行ったことのある企業も少なくないでしょう。調査によって自社のエンゲージメント度合いが数値化できます。経年比較のベースにもなります。
調査項目にパーパス(社会的存在意義)の浸透度と、心理的安全性の実現度合いが入っていればなおよいでしょう。パーパスドリブン経営という言葉が使われるように、経営戦略にパーパスが欠かせない状況になっています。経営戦略実現のための人的資本という文脈の中で、パーパスの浸透度合いは大きな要素となります。
心理的安全性も人的資本の意味合いの中で重要な要素となりそうです。心理的安全性は、生産性が高いチームの共通点としてGoogle社が見いだしたことで有名になりました。チーム内で思ったことを発言しても、拒否されたり人間関係が悪くなったりせず、安心して主張ができると確信している状態を指します。「多様な人材が活躍しやすい風土」(「人材版伊藤レポート2.0」)には、思ったことを言える社風が欠かせません。
調査では、エンゲージメントとして仕事への情熱度や組織への愛着度を測るとともに、パーパス浸透度、心理的安全性の実現度をデータ化しましょう。ただ、調査を実施したからといって安心してはいけません。データ化自体が目的ではないからです。データを基に、自社が今どのステップにいるのかを分析します。まだ認知・理解のステップにいるのなら、次は共感を目指します。共感にたどり着いているなら行動(実践)を目指すのです。
エンゲージメント調査においてデータ化すべき項目
「従業員エンゲージメント」「社会的存在意義(パーパスなど)」「心理的安全性」のクロス集計から思わぬ気付きが得られるケースも
エンゲージメント社内報で次のステップへ
調査で自社の現状を把握したら、それぞれの要素で次のステップを目指します。そのとき注意すべきは、いきなり「行動(実践)」を目指さないことです。
失敗例を挙げてみましょう。パーパスを組織に定着させたいとします。ある社長は、経営にはパーパスが重要だと思い、「今日からわが社はパーパスをすべての業務の基軸にします」と宣言しました。この宣言自体はとても意味のあることですが、パーパスという概念自体をよく知らない従業員は「なんかまた社長が言い始めたぞ」と警戒心を持ってしまいます。それまで理念を語ってこなかった会社であったなら、なおさら従業員はけげんな顔をするでしょう。
ですから、まずは「認知・理解」から始めましょう。発言するたびにパーパスを語ってもいいですし、社内報でパーパスの意義を語るコラムを掲載するのも有効です。概念を知った上で、パーパスに基づいたエピソードを伝えれば「共感」が生まれます。感情が動けば、自分たちもやってみようという「行動(実践)」の姿勢も出てきます。
日経BPコンサルティングが2022年に実施した5000人規模のエンゲージメントサーベイでは、「社会的存在意義」(パーパスや企業理念など)の社内浸透に今後「役立ちそう」「効果がありそう」と思える施策の第1位が「社内報」でした。社内報において、「認知・理解」「共感」「行動(実践)」の各ステップとコンテンツを対応させれば、自社に最も適した社内報コンテンツが見えてきます。コンテンツ数を絞って最大の効果を狙えるようになります。
このたび「認知・理解」「共感」「行動(実践)」各ステップに対応したコンテンツの考え方とコンテンツ例を記載したコンテンツマップ(目的別マトリクス)を用意しました。従業員エンゲージメント向上の具体的な施策立案の参考にしていただければと思います。
ホワイトペーパーダウンロード
共感度・実践度を上げるにはエンゲージメント社内報が効果的です。課題解決モデル掲載のコンテンツ設計資料、コンテンツマップ(目的別マトリクス)、サービス資料の無料ホワイトペーパーを3点まとめてダウンロードできます。
社内報コンテンツ設計の説明資料―課題解決モデルも掲載
エンゲージメント社内報におけるコンテンツマップ(目的別マトリクス)
パーパス経営・人的資本経営を支える「エンゲージメント社内報」サービス資料
コンテンツ本部ソリューション1部/周年事業ラボ コンサルタント
菅野 和利
BtoB企業の広報誌やWebサイト、ニュースリリースなど、企業メディアの戦略立案から媒体設計、制作まで支援。PR誌制作においては日本BtoB広告賞を5年連続で受賞している。企業コミュニケーション全般のコンサルティング、周年事業のコンサルティングにも携わっている。