社内コミュニケーションのニューノーマル 第3回

やはり大事な「飲みニケーション」、オンラインで開催するには?

2021.01.04

テレワーク時代のコミュニケーション術

  • コンテンツ本部 編集2部 鷹野 美紀

新型コロナウイルスへの感染を避けるため、家族以外との食事を控えている人は多いでしょう。会社や部署をあげての飲み会を自粛するよう呼び掛けている企業も多いようです。しかし、「上司や同僚と気軽に話せる場が減った」「雑談をする機会がなく、新しいアイデアが生まれづらい」「人と話す機会が減って孤独を感じる」といった声も上がっているようです。企業において、「飲みニケーション」は不要なのでしょうか。withコロナ時代に合わせたオンライン飲み会を部署で開催する場合、どのような点に気を付けるべきなのか、探ってみましょう。

「部署に中途採用の社員が来るらしい」という噂が流れ始めました。しかしフジキ興産は新型コロナウイルスの感染拡大が本格化した2020年3月から、対面での部署の飲み会が禁止となっていて、以前は職場内でしばしばあった雑談も、テレワーク導入後は減っています。そこで、新たなメンバーとの関係をうまく築くためにも、中川課長から西村部長に「オンライン歓迎会をしてはどうか?」との提案がありました。藤田君も含む3人で、オンライン飲み会を巡るビデオチャットが始まったようです。彼らはオンライン飲み会を開催できるのでしょうか。

50代はオンライン飲み会が嫌い?

中川課長(以下、中川) 先日もお話しましたが、中途採用の社員のオンライン歓迎会、ぜひやりましょう。こんな時期に入社するなんて心細いでしょうから。せっかくの機会ですし、部署の全員に声をかけてオンライン飲み会をしてみませんか。意外と楽しいものですよ。幹事をやってもらおうと、藤田君にもビデオ会議に入ってもらっています。

西村部長(以下、西村) オンライン飲み会かぁ。オンラインでの会議にはようやく慣れてきたが、飲み会となるとちょっと緊張するな。

藤田君(以下、藤田) 西村さん、もしかしてオンライン飲み会したことないですか。

西村 うん、実はな。そもそも飲み会っていうのは、一緒に酒を飲んだり、食事をしたりするから楽しいものだろう? オンラインじゃ盛り上がらないんじゃないか? そもそも最近の若者は、飲み会を嫌がる傾向があるっていうし。

中川 たしかにオンラインでもリアルでも、会社での飲み会には参加したくないという人は一定数いるでしょうね。でも、オンライン飲み会は、実はそこまで嫌われているわけではなさそうなんですよ。10代~50代の男女を対象にしたオンライン飲み会に関する調査結果を見てみてください。

会社のオンライン飲み会に参加したい?

会社のオンライン飲み会に積極的だったのが30代。「絶対に参加したい」「できれば参加したい」を合わせると半数に達した。一方、消極的なのが50代だ。出典=総合メディアの「Lip Pop」が、2020年4月25日に10代~50代の男女を無作為に抽出して会社のオンライン飲み会に関する調査を行った結果

西村 ほら、20代は「絶対に参加したくない」「できれば参加したくない」を合わせると75%もいるじゃないか。

藤田 でも西村さん、30代を見ると、参加したい派が半数ですよ! むしろ気になるのが50代ですね。参加したくない派が83%もいます。

西村 私みたいにオンラインでの開催に戸惑うんじゃないか。 それに、自宅で家族が近くにいる環境だと、オンライン飲み会に参加しづらいと感じる人もいるかもしれないな。

中川 とはいえ、テレワークが日常化したことで他愛のない雑談をする機会がなくなって、寂しいと感じている人は多いようですよ。新しいメンバーも、いきなり顔も名前も知らない人と仕事をするよりも、オンラインでもいいからフランクに会話をしておいたほうが、今後、仕事がやりやすくなるのではないでしょうか。

西村 やはり今の時代も「飲みニケーション」は大事なのかねぇ。

中川 類人猿の研究をしている京都大学の山極壽一総長によると、人間を人間たらしめているのは「共食(きょうしょく)」だそうです。食は、人間が言葉を発明するずっと以前から人間同士を結びつけ、和解・共存させる手段だったといわれています。一緒に食事をすることで、信頼関係を培ってきたのですから、オンライン飲み会は、部署の絆を深めるよいきっかけになるのではないしょうか。

西村 それなら一度、やってみるか。 藤田君、幹事を頼むよ!

オンライン飲み会、アルアル失敗談

西村部長は、別のオンライン会議があるため退室し、中川課長と藤田君が残されました。オンライン飲み会を開催したことがある2人の経験から、会社のオンライン飲み会のルールを探っていきましょう。

藤田 友達同士では何度かオンライン飲み会をしたことがありますけど、仕事の付き合いの人とは初めてなんですよね。どうすればいいのかなぁ。

中川 これまでに体験した失敗から考えてみましょうよ。私が最初に思いついたのは、会議でもありがちだけど、大勢が集まると、会話がかち合うことね。それから、たくさん話す人と、全然話さない人で二極化しがちになること。本当は4~5人くらいがベストだけど、部署の全員が参加するとなると大人数になってしまうのが問題ね。

藤田 先ほど、西村さんが話していたことも気になります。家族と同居している人は、家族との生活時間帯に飲み会をセットされると、参加しづらいのかもしれません。かといって、あまり遅い時間から始めるのも良くないですね。それなら、あらかじめ途中参加や途中退室もOKと伝えておくと、気軽に入ってもらえるかも……。

中川 途中参加や退室ができるのは、オンラインならではの良さよね! リアルだと、なかなかそうはいかないもの。そういえば、私が初めてオンライン飲み会をしたときは、なんとなく緊張して、盛り上がるまでに時間がかかったわ。逆に慣れてくると、だらだらとおしゃべりしてしまって、気づいたら12時を過ぎていたってこともあったっけ……。終わりの時間を決めておくことが大切かもしれないわね。

藤田 色々とヒントをありがとうございます! オンライン飲み会の仕切り方を考えてみますので、また相談させてください。

誰もが楽しめるオンライン飲み会の心得

2日後、どうやら藤田君が「オンライン飲み会を成功に導く5つのポイント」をつくり上げた様子。中川課長から合格をもらえるか!?

藤田 中川さん、僕、考えてみましたよ。オンライン飲み会を成功に導く5つのポイントです!

オンライン飲み会を成功に導く5つのポイント

中川 あら、ずいぶんと具体的なものができたわね。

藤田 この2日間、寝る間も惜しんで考えましたから! 特に気を付けた点は「ダラダラ防止」「オンラインならではの良さを生かす」「対面の飲み会に近づける」です!

中川 ほぉ~、いいんじゃない?

藤田 オンライン飲み会は、なんとなく気が緩んでダラダラしがちです。そこでしっかりとしたタイムスケジュールを立てます。司会は僕がやりますが、乾杯の挨拶は中川さんに、締めの挨拶は西村さんにお願いします。会社の飲み会ですから、締めるところはきちっと締めることが大切ですよね。

中川 確かにそうよね。今回は、新人さんにも挨拶してもらわないとね!

藤田 その一方で、やはり途中参加・退室はOKにしておいた方が良いと思いました。小さなお子さんがいる人は、寝かしつけとかもあるでしょうし。そこは臨機応変にしておけば、参加率が上がると思うんです。

中川 それと同時に、終了時刻も決めておくのね。

藤田 はい。西村さんの挨拶でいったん中締めとします。もちろん、もっと続けたい人はご自由に、というスタンスで。飲食店で開催していたら長居はできませんが、延長できるのはオンラインならではの良さですね。

中川 「アイスブレイクとなるような話題」というのはどういうこと?

藤田 リアルの飲み会なら、目の前にある食べ物が会話のきっかけになることもありますが、オンライン飲み会では難しいです。ならば、あらかじめ「今日は〇〇についてみんなで話しましょう」とテーマを伝えておくんです。例えば「最近、ハマっているテレビ番組は?」とか「よく食べているお菓子」とか。これなら盛り上がりますし、口下手な人も話しやすいと思うんです。

中川 なるほど、飲み会を告知する時に伝えておけば、自分が話すことを考えておく時間も作れるわね。

藤田 最後はグループ分けです。オンライン飲み会は人数が多くなりすぎると、つまらなくなりがちなんですよね。そこで対面の飲み会をヒントに考えました。飲食店では、4~5人で1つのテーブルに分かれますよね。あれをオンラインで再現するんです。

中川 それ、いいわね! 大勢いると、話しづらかったり、会話がかちあったりするけれど、少人数ならその心配が減るわ。

藤田 まず参加メンバーをあらかじめ4~5人ごとのグループに分けておきます。さらにグループの「部屋」となるリンクを用意して、一定の時間になったら、全員が各自の部屋に移ってもらうんです。

中川 普通の飲み会の幹事も大変だけど、オンラインはさらに事前の準備と気遣いが必要になるわね。でもその分、達成感もあるんじゃないかしら。

藤田 はい! オンライン飲み会は、遠く離れた場所にある部署の人や出張中の人も参加できるという利点もあります。withコロナ時代ですから、ツールをうまく活用して、部署全体のコミュニケーションを深めていきたいですね。

※この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

連載:社内コミュニケーションのニューノーマル

コンテンツ本部 編集2部
鷹野 美紀(たかの・みき)

パソコン誌、飲食店経営専門誌、マネー誌などでの記者経験を経て、オウンドメディアの編集者に。読者に少しでも多くの「へぇ~!」をお届けすることを目指し、現在は食品流通、医療、金融系の媒体を中心に担当している。

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