マーケティングカオスから抜け出せ 第2回

ジャーニーマップの第一歩はペルソナから

ジャーニーマップを作るうえで一番はじめに手掛けることは、自分たちがどんな人々をメインターゲットにしたいのかを明らかにすること。新規顧客を取り込みたいのか、すでに姿が半分見えかけているリードを顧客にしたいのかを明らかにすることです。

この記事のポイント

Point1 リアルもデジタルも合わせて考え、情報発信を設計していくための戦略を練る
Point2 購入する人は、社内でその購入責任を持つことも意識する
Point3 ジャーニーマップを作る際の流れは4つのステップで

新規顧客はどんな人なのかはっきりとは分かりません。ただ自社商材でビジネス上の課題を解決できる人たちである可能性が高いことは確かです。

一方、姿が半分見えているリードもいます。展示会や資料請求などを通して連絡先の名刺情報だけは保有しているリードです。自社や自社商材に少しは興味を持っていることも分かっている相手です。

「ペルソナ・クリエーション」と呼ばれる手法で、ターゲット像を明らかにしておくと、どんな検討過程を経て購入に至るのかをつかみやすくなり、営業につながるリード育成の可能性が高まります。

しかし、特にBtoBではなかなか顧客になりきることができません。またBtoBの場合、性・年齢、趣味などパーソナリティーだけを知り、顧客になりきったつもりになってもあまり意味はありません。

BtoBの世界では、たとえ担当者が30代女性だからといって、そのペルソナ設定に従って、例えば30代女性が好むであろう猫の話をして、売り上げにつながることはまれでしょう。業務の世界では個々人のパーソナリティーや好みが、購買を決定する要素となりにくいからです。

目標を達成するためタイミングを示す

多くのBtoB製品は個々人の好き嫌いではなく、業務上の要不要によって評価され、購買されます。当たり前の話です。業務上の要不要は、ビジネスの目的を達成できるかどうかで決まります。
だからペルソナの構築が重要となります。ジャーニーマップのポイントは、仕事上の目標を達成するための道筋に合わせて、必要な情報をタイミングよく示せるかどうかとなるからです。

ですからBtoBにおけるペルソナでまとめるべきは、ターゲットとする人々や組織がどんなビジネス上の目標を持っているのか、その目標を達成するために、または目標を達成するうえで解決したい課題に対して、売りたい商材がどんな効果を発揮できるのかを示すことです。

情報提示のタイミングも大切です。いくら良い商材でも押し付けではいけません。知りたいタイミングで、知りたい情報、欲しい機能を届けましょう。解決できる課題の例、購入・導入後の活用事例、価格、スペック、サポートなど、知りたいときに知りたい情報がすぐに見つけられるようにすることがベストです。これらを示すタイミングもジャーニーマップで見えるようにできます。潜在顧客への働きかけや、顕在化したリードなどへの情報提供の在り方という意味では、Web上のショートトリップ・ルートと呼んだ方がよいかもしれません。この考え方については、別の回でまとめます。

また、相手がどんな人かをまったく考慮せず、戦術やコンテンツを検討することだけにこだわると、それはまたリスクがあります。あまり先走っても、不信感を持たれてしまうことがあるからです。いつ、どんな情報を必要とするかを推し量るためには、ある程度相手を知る必要があります

このため、BtoBを主体とする製品のマーケティングにおいては、業務や役割に沿った「ロールモデル」を設定するとよいでしょう。「ロールモデル」は、年齢や性別、行動範囲にはそれほどまで重きを置かず、その人の業務上の課題、必然性などを重視します。特に、ターゲットがどんな課題をかかえ、課題の解決または解決に近づくために自社商材がどんな役に立つのかを示すための決め手をつかむことが大切です。

ターゲットペルソナの作成事例

デジタルマーケティングにおけるペルソナというと、10年以上前にアメリカ航空宇宙局(NASA)が作ったカール・ワッツ君(6歳)が私の脳裏に浮かびます。NASAが子供向けのWebサイトを構築するにあたり、5人の子供にインタビューを行って作り上げた架空の人格です。

NASAが作ったカール・ワッツ君とNASAのコンテンツページ

ペルソナは定量調査などで調べた属性をもとに、5~15人への定性調査結果に基づいて作成する(NASAが作ったカール・ワッツ君とNASAのコンテンツページは著作権の関係上、詳細にお見せできずすみません)。

「Dad, it’s I-S-S! not I-I-S!(パパ、違うよ。IISじゃないよ。ISSだよ!)」。父親に負けない知識をひけらかしたいひと言、この言葉に象徴させた子供の姿で表現したペルソナ像が印象的です。知りたがりで好奇心旺盛、興味を持ったものに対する知識欲を満たし、友達に宇宙の知識をもとにした自慢話もできるような情報を掲載しよう。でもまだ長い文章を読むのは苦手だろうから、イラストや写真を多用しようなどと方向性を定めたものだったようです。コンテンツを作成するスタッフたちが、常にカール君に話しかけながらNASAの月世界探検を紹介するWebサイトは、子供たちにたいへん好評だったそうです。

BtoBマーケティングでターゲットペルソナを作る際も、思考プロセスは同じです。
仕事上の目標は何か、仕事上でどんなことに幸せを感じるのか、どんなことを避けたいのかなどを、ペルソナの形でまとめます。

BtoBのペルソナとして設定すべき項目は以下の通りです。架空の人格ではありますが、もちろん勝手な思い込みで書くわけではありません。通常はターゲットに近い人々、お客様やその候補に当たる属性の4~5人へのデプスインタビューを行い、誰に対してマーケティング策を施していくのかを明確にするための道しるべとして表現します。
①ターゲットのプロフィール
②ゴール、目指していること
③避けたいこと
をまとめます。例えば次のような内容です。

●BtoBペルソナの内容例

① プロフィール

性・年齢、仮の名前、仕事上の基本的な属性です。例えば、以下のように簡潔にまとめます。

椎野 良平(52、男性)
150人ほどのBtoB向け製造業営業部課長。もともとシステム専任だったが、専門的な業務は外注し、営業部の中に販促チームを置くことになった。業務ではほとんどパソコンを使っており、スマートフォンを使うことはまだ少ない。

② ゴール、目指していること

仕事上の課題、目標をまとめます。これが達成できると幸せになれると考えていることを抽出します。例えば以下のような内容になります。

作った販促計画をうまく回して、目標値を達成したい。

  • 計画を現場で着実に実践していきたい。
  • 社内関係部署で活用してもらえる計画にしたい。
  • 計画の達成度をきちんと評価したい。
  • 最新販売動向に合わせて、計画をアップデートしていきたい。

③ 避けたいこと

目標を達成するうえで、面倒なことや回避したいことをまとめます。面倒なことを機能コンテンツが肩代わりしてくれれば、Webサイトを利用するモチベーションにもつながります。また、回避したい内容を省いてくれながら、目標に近づくための商材やソリューションなどは購入したい商材となります。以下はWebサイトを構築するうえでの実現目標としてまとめた例です。

情報を探す手間を省きたい。煩わしい作業は勘弁。

  • まとまりのない情報は読みたくない。
  • 関連情報のリンクを集めただけのページでは不満。
    (各情報の概要を掲載するなど、内容に応じたインデックスがほしい)
  • 関連サイトのトップページをまとめただけのリンク集では不満。
    (目的の情報へダイレクトに到達できるリンクがほしい)

こういったとりまとめを常に意識しながら、必要な情報はなにか、必要なタイミングで提供するには、どのような方法で、どのような媒体を通すのが最適かを考えるわけです。その考察結果を「見える化」したものがジャーニーマップとなります。マーケティング施策を核とするパーツが、ショートトリップ・ルートです。

ジャーニーマップで描いた購買決定期に、ターゲットの考える適正な価格で、適正な時期にお届けできるのかを提示できればビジネスは成功します。戦略に合致した戦術を練るわけですから、成功に近づくのは間違いないでしょう。

次回以降、購買ステータス→シナリオ→ショートトリップの流れのうち、シナリオ→ショートトリップ・ルートについてまとめていきます。

(コンテンツコミュニケーション・ラボ)

連載:マーケティングカオスから抜け出せ

このコラムは、
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