BtoBマーケティングの最適解シリーズ 第4回
なぜ、となりの会社の製品(ソリューション)は、あなたの会社の製品より売れるのか ~CS発想編~
シニアコンサルタント古賀雅隆の答え
「企業ブランドが、商材の信頼性をも支えているから!」
商材、企業の信頼性を向上させるカスタマーサクセス発想のコンテンツは
二つの切り口×二つのコツで
優れたコミュニケーションデザインには、「集客」、「接客」、「送客」、「増客」の4つの要素が不可欠です。日経BPコンサルティング・コンテンツコミュニケーションラボの4人のコンサルタントが、これらの要素をひとつずつ解説します。
第4回のテーマは「接客」。コンサルタント古賀雅隆が、「商材と企業ブランドへの信頼性を高めるコンテンツづくり」についてお伝えします。
“企業ブランド”や“製品・サービスのブランド”を向上させるためのコンテンツとは、どうあるべきでしょうか?
その答えは、顧客のメリットを訴求することに尽きます。テクノロジーはコモディティ化し、製品・ソリューション(=商材)そのものの差別化が難しい時代です。
この状況を打ち破るために提供すべき情報があります。「カスタマーサクセス」(=以下CS)と呼ばれる発想に基づいた情報提供です。CSは、一定期間継続的に収入を確保するサブスクリプションモデルの文脈で語られることが多いようですが、それだけにとどまりません。
CS発想のコンテンツには、大きく二つの切り口があると考えればいいでしょう。ひとつはメリット、成功を示唆する切り口。そしてもうひとつは、顧客の不安、不満を解消する切り口です。前者はあちこちで書かれていますので説明は不要でしょう。後者の、不安、不満を解消するについて説明します。
たとえばある商材について、導入・購入前の不安、購入後の不満が分かっていたとします。不安や不満は購入や契約継続の妨げとなりやすい要因です。不安を解消するための情報、不満を抑えるための取り組みを示唆する情報なども、CSのための情報となります。
原点に戻るとわかる「紡ぐ」ことの重要性
CSのための情報を提供するためには、別の視点からのコツがあります。
Webサイトはリンクの集まりである、という特性を十分考慮して、関連した情報同志を「紡ぎ」ましょう。Webサイト全体での最適化を図ることができ、CSのための情報に強さを与えます。
多くのサイト構成図を見ると、Webサイトはページの集まりに見えます。しかし、実際にはリンクの集まりです。この原点に戻りましょう。関連性の高いコンテンツ同志を紡ぐためのリンクを用意しましょう。
ただし、「関連リンク」などの冷淡な言葉ではなく、気になる関連性を示唆したリンクラベルとすることをお薦めします。Webサイトは、縦横に張り巡らされたリンクの集合体ということを思い出し、コンテンツ間の関連性を強化する発想も不可欠なのです。
たとえば、高齢者をターゲットとした技術開発をしている企業があったとします。開発チームはたいへんな努力をして、最適な技術を作り上げるでしょう。こういった企業ではCSR活動として、高齢者支援や、高齢者向けのサービスを無償で展開している場合も少なくありません。
多くの企業では、技術については商品情報のページ、CSRについては企業情報のページに、別々のコンテンツとして置いています。しかし、これらのページの連携を強化させると、商材のターゲットのことをよく知ったうえで技術開発しているという印象を持たせることができるでしょう。つまり、企業としての活動が、商材に好影響をもたらし、企業ブランドが商材ブランドを下支えしてくれるわけです。
もう一つたとえを挙げましょう。
業務向けのサービスについて調査すると、導入前にコストの不安があることが多いようです。導入コストに見合った成果を得ることができるだろうか、という不安です。
導入を検討する担当者は、自分が担当した仕事が十分な成果を上げられるかどうか不安を抱えています。導入事例は多くの企業サイトに用意されているので、これを示せばいいのですが、書き方が問題です。
単に新機能、高性能を書き並べるのではなく、不安を解消できるようなポイントも、記事中に含ませるべきです。そして、商材の紹介ページから、「心配な導入コストの解消にも一役を買っている事例」などのリンク名で、ページ同志を結びつけます。
後者は商材情報同志の関連性強化の例でしたが、情報同志を紡いで、関連性を強めることによって、CSのための情報を作り上げることも可能になります。既存情報を整理するだけでもいいかも知れません。資産としてコンテンツをすでにお持ちのサイトも、実は多いのではないでしょうか。
商材ブランドを下支えする企業ブランド
さらに信頼性を高めるためのコツをもうひとつご紹介します。
「Why」、つまり「なぜ」、「背景」を整理して提示することです。商材にしろ、企業紹介にしろ、現在だけを語りがちです。現在に限定せずに、背景や経緯、必然性などを、事実、データなども添えて明示することにもトライしてください。一面だけを語らず、多角的に論じるわけです。過去、現在、未来のストーリーラインを重視しましょう。
「過去」として、商材を生んだ社会的背景や、自社で開発に取り組んだ根拠などを示せば、納得感につながります。加えてビジョンを伝えることで、「未来」、つまり企業として取引していい相手だという信頼性のみならず、購入、導入することによって得られるメリットに対する期待感と意義、さらに将来性や伸びしろをアピールすることができるでしょう。
こういった情報の多くは、商材情報よりも企業情報として提供されたほうが座りがよいでしょう。もちろん、商材のコンテンツページと、企業情報内のコンテンツページに関連リンクを張り、情報を紡ぐためのリンクラベルを用意する必要があります。
購入、導入によって、同じくらいの性能、同じくらいの効果が見込まれ、価格にはあまり差がない場合、企業としての信頼性を根拠に商材を選定する、という検討の流れは十分にあり得ます。あの企業だから大丈夫と感じてもらう、少々高くてもこの会社から買えば安心だから選ぶ、というようにしむけるわけです。
商材ブランドを下支えする企業ブランドの力がここにあります。取引して良かった、この商材を購入するための社内稟議を通す努力が報われた、買った甲斐があったと確信してもらうための情報が、売れ行きを左右すると言っても過言ではありません。
最近ではSDGs(エスディージーズ)のストーリーラインも、企業ブランドの向上に役立ちます。SDGsの話は、別稿に譲ります。
デジタルマーケティング、デジタルブランディングの推進においては、カスタマーサクセスなコンテンツに加えて、こういった企業ブランドを向上させる発想も有効ではないでしょうか。
(デジタル本部シニアコンサルタント古賀雅隆)
日経BPコンサルティング デジタル本部 シニアコンサルタント
古賀 雅隆
連載:BtoBマーケティングの最適解
- 第1回 なぜ、となりの会社の製品(ソリューション)はあなたの会社の製品より売れるのか 〜 SEO対策編 〜
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