日経BPコンサルティング事例 File.04
日経ナショナルジオグラフィック社
日本オリジナル特集が国際的に評価され、海外版に転載
『ナショナル ジオグラフィック日本版』
吉田 秋葉のプロフィールはこちらから
『ナショナル ジオグラフィック日本版』のアートディレクション
明治神宮特集の扉。神を祭るにふさわしい森を目指し100年前に植えられた木々に囲まれる鳥居の写真を使用した(日本版2016年1月号 明治神宮特集より)。
グラフィックデザイナー
吉田 秋葉
テレビや新聞で報道されない“世界の今”を、一流写真家が切り取った美しい迫真の写真と臨場感ある文章で伝える。それが『ナショナル ジオグラフィック』だと私は考えます。120年以上の間、同誌が受け継いできたその精神を日本の皆様にいかに伝えるか。毎月、編集部とせめぎあい、デザインを磨いています。
この特集は最初、編集長から「明治神宮の知られざる生物多様性への取り組みを紹介したい」と言われ、膨大な写真を吟味するところから始まりました。前述の精神から、デザインは写真を生かすことが第一で、選定は編集者とともに行います。実は明治神宮の森には、動植物が約2800種も生息するのですが、3万本超の木の幹はすべて人の手で測られるなど、100年前から計画的に育てられてきた森なのです。その素晴らしさを伝えるため、生態や体色の異なる生物の写真を厳選し、類いまれな多様性を誌面で表現しようと懸命にレイアウトしました。光栄にも、結果としてこの特集は本国の目に留まり、フランス版と台湾版に翻訳されましたが、私が嬉しかったのは、言語を超えて他国の編集者にも良さが伝わったと思えたことです。
3万本超の樹木を樹種や幹の太さと記した地図(左)や、鳥や蛇、昆虫、菌類の写真群(右)で、東京のただ中と思えない生物多様性を表現。
課題解決の過程
課 題世界の今を映す美麗な写真と迫真の文章で、読者にメッセージを届けたい
解決策企画コンセプトをいかに表現するか追求しハイエンドな誌面デザインに
成 果日本オリジナル特集が本国に評価されフランス版・台湾版にも転載
“ベストエディット”に選出、海外版に転載された日本オリジナル特集
●翻訳転載された「明治神宮特集」
米国本部にグローバルのデザイン統括者がおり、各国語版のクオリティを管理している。さらに毎号、各国オリジナル記事から優れたものを「ベストエディット」として選定、各国編集部へ配信しており、その中から翻訳転載のオファーが行われる。明治神宮特集もそうして転載された。
●フランス版の「多摩川特集」と「火星企画」
半世紀前は「死の川」と呼ばれた多摩川の驚異的な水質改善を紹介。扉にはマルタウグイの写真(上)。火星企画では人工的に着色した地表の画像を並べ、表情の多彩さを伝えた(下)。
Client's Voice
米国の編集部が作るページと遜色ないものを仕上げるのは簡単ではありません。写真を見極め、分かりやすいグラフィックを作り、ストーリーをレイアウト全体で表現する。吉田さんのようなデザイナーがこうした作業を繰り返してくれたおかげで、日本版の記事がフランスや台湾などでも読まれることになったのだと思います。
ナショナル ジオグラフィック日本版 編集長 大塚 茂夫 様
日経BPコンサルティング グラフィックデザイナー
吉田 秋葉(よしだ・あきは)
2008年に日経BPクリエーティブ(現・日経BPコンサルティング)入社。『ナショナル ジオグラフィック』『ecomom(エコマム)』をはじめ、日経媒体の記事広告や同梱別冊など、雑誌・書籍を中心にデザイン・制作に携わる。
ナショナル ジオグラフィック日本版
1888年に創刊し、古代遺跡発見や自然の脅威と神秘、未知に挑む冒険や調査などを紹介。180カ国に850万人以上の読者がいる月刊誌。