地方のワーク・ライフ・バランス 第5回

人口急増中の川崎市が着手した、オフピーク通勤

2018.04.16

研究員ブログ

  • カスタムメディア本部 第一編集部 内野 侑美

人口急増中の川崎市が着手した、オフピーク通勤
都内への通勤に便利なことから、ベッドタウンとしても人気の高い川崎市。
日本の大都市の中でも最も人口増加率が高く、交通アクセスも抜群。
川崎駅や武蔵小杉駅にはJRや私鉄が乗り入れ、毎日多くの利用者でにぎわっています。
一方で、JR南武線や東急田園都市線など、混雑が激しい路線も多く、
特に朝の通勤ラッシュ時の混雑は大きな問題にもなっています。
そこで川崎市では、混雑緩和を目的に、オフピーク通勤を実験的に行いました。
どのような成果や課題があったのか、第二弾ではまちづくり局交通政策室の久木田直史さんを中心に、お話を伺いました。

聞き手=内野侑美/文=小口梨乃/写真=吉澤咲子

南武線の混雑緩和を目指した、オフピーク通勤

川崎市は都内へ通勤している人数も多いと思いますが、市として何か対策は行っているのでしょうか?

担当課長久木田直史さんまちづくり局交通政策室 広域交通対策担当 担当課長久木田直史さん

久木田 交通政策室の課題のひとつが、電車の混雑緩和です。基本的には鉄道事業者が行うことですが、利用する側 として川崎市でも何か協力ができないかと考え、2017年11月の10日間、JR南武線の最混雑区間(武蔵中原→武蔵小杉)を利用する職員を対象にオフピーク通勤を実施。市役所でも南武線の同区間を利用している1556人の職員を対象として、職員が時間をずらせば少し混雑が緩和するのではないかと考えました。

 

結果はいかがでしたか?

久木田 参加者数は1240人で、1日あたりの平均参加人数は約690人。2つの時差勤務パターンを設定し、①7時30分〜16時15分を選択した職員は55.2%、②9時30分から18時15分を選択した職員は44.8%でした。
アンケートの結果では、②を選択した職員の方がいつもより空いていると実感したものの、相対的には普段とあまり変わらないという意見も多く、今後は民間企業と協力をするなどの対策が必要だと考えています。

オフピーク通勤については、どのような意見がありましたか?

久木田 目的は電車の混雑緩和だったのですが、オフピーク通勤についての理解も深まったのではないかと思います。ただ、毎日ではなく、時々活用したいという意見が多かったですね。最大で2時間ずれますので、会議や打ち合わせの調整などで苦労したという職員もいましたし、どの部署でもスムーズに導入するには、課題があると思います。

今後もオフピーク通勤は継続する予定ですか?

久木田 来年度も実験的な取り組みを行いたいと思っています。民間企業と協力したり、より幅広い路線を対象にしたりなど、今年度の結果を次に発展させていきたいですね。また、川崎市から都内へ通勤する人も多いので、東京都で行なっている「時差Biz」という取り組みとも連携すれば、より効果的だと考えています。

一層の業務改善やテレワークの推進などが今後の課題

民間企業ではオフピーク通勤を推進するために、サテライトオフィスの利用を促していますが、川崎市ではいかがでしょうか。

行政改革マネジメント推進室働き方・仕事の進め方改革担当課長・北川さん(左)、同担当係長・坂本さん(右)「今後はテレワークやサテライトオフィスの推進に向けて現場とさまざまな課題や実情も踏まえて意見交換を行っていきたいです」と行政改革マネジメント推進室働き方・仕事の進め方改革担当課長・北川さん(左)、同担当係長・坂本さん(右)

北川 今後の取り組みとして、サテライトオフィスも考えていきたいと思っています。市役所の業務は市民サービスですので、窓口のある職場などでは、離れた場所で仕事をするというのが難しいこともありますが、昨年7月24日のテレワークデイに合わせて全国的に実施された取り組みでは、職員が1日限定で自宅近くのサテライトオフィスで勤務を行い、時間をずらすことでストレスなく通勤できたり、朝の時間を家族のために有効活用できたりなどの意見が寄せられましたので、各職場の実情を把握しながらオフピーク通勤の取り組みと一緒に進めていけたらと思っています。

オフピーク通勤もテレワークも、業務改善が土台になりますね。

坂本 業務を改善するためには、課題を可視化して、共通認識を持つことが大切です。昨年度は、外部による業務分析を行うため、一般企業に協力をしてもらいました。長時間勤務が課題となっていた職場などで取り組みを行い、今年度はそこでの改善プロセスを全庁的に広めていければと考えています。
サテライトオフィスやフレックスタイムを導入している地方自治体から学ぶ部分も多いですし、民間企業の先進事例も参考にしながら、職員が生き生きと働きやすい環境づくりを進めていきたいと思います。

コンテンツ本部 編集2部
内野 侑美(うちの・ゆみ)

女性向け雑誌や実用書を扱う編集プロダクションを経て日経BPコンサルティングに入社。企業広報誌やPR誌から、現在は周年史、統合報告書、カード会員誌を担当。コンセプト設計からコンテンツ制作、撮影のディレクションまで行います。