そこで川崎市では、2017年4月から「川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラム」をスタート。多くの"イクボス"も活躍しています。
第一弾では、働き方・仕事の進め方改革担当の総務企画局・北川友明さんと坂本篤史さん、イクボスアワードを受賞された環境局の井田淳さんにお話を伺いました。
聞き手=内野侑美/文=小口梨乃/写真=吉澤咲子
充実した市民サービスを提供するための、働き方改革
「川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラム」について教えてください。
年度末のお忙しい中、お時間をいただきました。ありがとうございました!
北川 全国的に働き方改革が進む中で、2016年11月に市長を本部長とする「川崎市働き方・仕事の進め方改革推進本部」を立ち上げて具体的な取り組みを検討し、2017年3月末に「川崎市働き方・仕事の進め方改革推進プログラム」を策定しました。
その大きな目的は、充実した市民サービスを提供するために、職員が元気に働ける環境を作ること。そのために、「職員の働く環境の整備と意識改革」と「多様な働き方の推進」に関する、計11項目の具体的な取り組みを掲げています。
具体的にはどのような取り組みをしたのでしょうか。
坂本 例えば、最初の課題として掲げた「長時間勤務の是正」では、水曜日の完全定時退庁や午後8時以降の時間外勤務の原則禁止などを行いました。2017年度の職員一人当たりの平均時間外勤務数は、前年度より10%程度減少しましたが、仕事の進め方やマネジメントの方法を大きく変えていかないと、効果が持続しません。それは現在取り組んでいる大きな課題のひとつですが、まずは時間の枠組みの中で仕事をしてみよう、というところから着手し、総合的な取り組みにつなげていきたいと思っています。
長時間勤務を減らしていくためには、上司の役割も大きいですね。
北川 仕事と生活を両立できるような職場づくりにおいて、上司の役割は非常に重要で、上司のマネジメント次第で、職場の働き方の価値観を変えていくことができると考えています。
そうした趣旨から、「川崎市イクボス宣言」を、2016年に市長をはじめとした幹部職員が行っています。また、どのように職場のマネジメントが行われているか、優れたマネジメントや部下のワーク・ライフ・バランス支援を実践する上司の取り組みを表彰し、庁内で共有しようということで、2018年1月に「イクボスアワード」を実施し、職員の推薦を受けたイクボスの中から選考により3人が表彰されました。
仕事と育児を、自然に両立できる職場に
井田さんはイクボスアワードで表彰されたお一人と伺いました。普段はどのようなイクボスライフを送っているのでしょうか。
環境局総務部庶務課 課長 井田 淳さん
井田 夫婦共働きで、4歳になる娘を育てています。保育園に迎えに行くのは私の担当。お迎えに行くと、同学年のお母さんや先生と話ができることもあって、とても楽しいんです。お迎えに行くためには、定時に仕事を終わらせなくてはならないので、なるべく早く帰ろうという意識を持って、日々仕事に取り組んでいます。
子育てを経験して、仕事に対する意識は変わりましたか?
井田 妻が時短勤務でお迎えをしていた時はあまり感じなかったのですが、自分がお迎えをするようになったら、そのために仕事を段取りよくこなすことのむずかしさや大変さを痛感しました。
また、育児に限らず、介護など、それぞれの職員が様々な事情を抱えながら働いています。個々人の事情を把握して、一日に一回は声をかけて進捗を確認したり、手間が増えないように的確な判断をしたりして、無駄な時間を減らすことも、私の大切な仕事だと思っています。
私も残業はほぼしませんし、部下にも定時になったら声をかけますので、だらだらと残っている職員もいないと思います。
井田さんのような方が上司だと、働きやすそうですね。
井田 そうだといいですね……(笑)。部内には30歳前後で独身の職員が多いのですが、将来子供を持ったとき、こんな風に働けばいいんだと、思い出してくれれば嬉しいです。
家事はどのように分担していますか?
娘さんのために作った手作りのお弁当
井田 保育園のお迎えのほか、夕食作りも私の担当です。その間に妻は次の日の保育園の準備をしたりして、二人で一緒に家事をやらないと終わらないので、自然と今の形に落ち着きました。毎晩10時までは座れないので、ダブルワークをしているような感じですね(笑)。たまにお弁当も作ります。明日はちょうど遠足なので、頑張りますよ!
イクボス宣言をしてから、普段の生活に変化はありましたか?
井田 イクボス宣言をしたからというわけではなく、自分にとって当たり前のことをやってきただけなので、受賞したときは恥ずかしい思いもありましたが、今は開き直って、少し私生活も出して職場を刺激しようかな、と思っています。
仕事と育児が両立できる働き方が当たり前になれば、毎日が楽になると思うんです。職員の方々には、上司の働き方を見て、取り入れたいところは取り入れて、自分らしい仕事の仕方を見つけて欲しいですね。
コンテンツ本部 編集2部
内野 侑美(うちの・ゆみ)
女性向け雑誌や実用書を扱う編集プロダクションを経て日経BPコンサルティングに入社。企業広報誌やPR誌から、現在は周年史、統合報告書、カード会員誌を担当。コンセプト設計からコンテンツ制作、撮影のディレクションまで行います。
連載:地方のワーク・ライフ・バランス
- 第1回 本州最北の地 青森県の「あおもり働き方改革」の取組み
- 第2回 「思いやりルール」で働きやすく caseヒグチ
- 第3回 社員同士のコミュニケーションを深め、青森の文化をつなげる Case 西田組
- 第4回 イクボスが働きやすい職場を作る! 川崎市役所の取り組みとは
- 第5回 人口急増中の川崎市が着手した、オフピーク通勤