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鍛冶の町「三条市」のブランド化に取り組む

2017.10.12

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    日経BP総研 クリーンテック研究所 上席研究員 菊池 珠夫

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日経BP総研 クリーンテック研究所では、地域の課題を解決するために2015年から民間企業と自治体を結ぶマッチング『地域創生研究会』を実施しています。空き家や耕作放棄地の増加、若者の流出、介護担当者の負担増など自治体が抱える課題は、挙げたらきりがありません。しかも自治体の力だけでは、解決しないものばかりです。そこでクリーンテック研究所では企業と自治体が一緒に考える場を設定したわけです。

写真1 西条市への視察の様子

西条市への視察の様子

これまでの地域創生研究会では、富山市、荒尾市、南アルプス市、益田市、西条市、日南市、室蘭市、弘前市、米沢市を訪問しました(写真1)。十人十色と言いますが、どの自治体も他にはない特別な魅力を持っています。同様に、同じ課題でも置かれている環境の違いによって状況は大きく異なります。

三条市を核として日本全体に拡大

2018年春の訪問先として、鍛冶の町「三条市」を選びました。三条市の鍛冶の歴史は、今から約400年前の江戸時代始めに遡ります。農家の副業としたことがきっかけとして始まりました。最初は釘程度でしたが、やがて鎌などの刃物の鍛冶が増え、現在では、包丁などのキッチン器具、かんななどの大工道具、その他にもアウトドア用品、生活用品など幅広い金物を扱っています。

鍛冶産業には課題もあります。後継者不足とそれに伴って技術継承が途絶えることです。こうした三条市の鍛冶産業の現状を理解し、ブランド化による高付加価値を実現するアイデアを出し合う予定です。例えば、包丁のブランド化では和食と組み、美味しい刺身が切れる包丁として世界にアピールする。またインバウンド需要で盆栽に注目が集まっていますから、盆栽と一緒に盆栽ばさみをブランド化する方法です。

三条市のあとは、別の自治体とも連携して日本の鍛冶産業全体を盛り上げる予定です。三条市を核にして、ブランド化を実現し、海外に日本の鍛冶のファンを作っていければと考えています。

自治体に足を運び、首都圏からの距離感や中心スポットごとの距離、特産物、周辺の自然環境、大学があるかないか、日中だけでなく、夜のにぎわいも含めて町の雰囲気を直に感じることが重要です。その感覚を持って、自治体の担当者と一緒に課題解決に向けて、アイデアを出し合い、それを実行に移すための方策を議論します。

写真2 企業連携につながった
日南市でのディスカッションの様子

企業連携につながった日南市でのディスカッションの様子

議論の中で、「そんなことがうれしいですか」と自治体の方からよく言われます。その町の魅力、その町にしかないものについて素直な感想を述べた時の反応です。住んでいると当たりまえ過ぎて気がつかないことでも、外から来た我々にはとても面白く感じることがあります。外から目線でその地域の魅力を伝えます。

この地域創生研究会で訪問したことがきっかけで、日南市にサテライトオフィスを作った会社もあります。IT企業のサクシードです。既にオフィスをオープンして、活動しています。地元からの採用にも積極的で、地域経済の活性化に貢献しつつ、自社のコストの抑制にもつながっているようです(写真2)。

林業とグランピングで経済活性化

地域創生研究会を運営しながら、最近考えているアイデアがあります。豪華なキャンプとして日本各地で始まっているグランピングを使って地域の経済を活性化できないかというものです。この発想は「山が野放しにされると海が痩せてしまう」ということが発端です。山からの恵みが海まで到達しないと海の幸が採れなくなってしまいます。その問題を解決するためには、林業を復活させなければなりません。しかし、林業は輸入木材が安いためにビジネスになりにくい。そこでグランピングを導入し、海の幸、山の幸でもてなして、林業、漁業、グランピングのトライアングルで経済を活性化するアイデアです。そうしたトライアングルで地域の経済を活性化したい自治体の方がいらっしゃったら、是非ともご連絡ください。

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菊池 珠夫