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「地方創生3.0」で、専門分野に強い民間パートナー探しが始まる

2018.05.11

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    日経BP総研 マーケティング戦略ラボ 石井 和也

地方創生元年といわれる2015年、全国の市町村で「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が策定されました。それは、人口減少に歯止めをかけ、地域を元気にするために、政府が地方に出した宿題への解答でした。総合戦略では、移住、起業、子育て支援、6次産業化、観光、グローバル化などをテーマにさまざまな施策が掲げられましたが、自治体のなかには、補助金、交付金ありきのプロジェクトも少なくありませんでした。KPI(重要業績評価指標)も課せられましたが、ハードル自体は、決して高いものではありませんでした。

総合戦略でひとづくりを掲げた与謝野町では、よさのみらい大学を開講写真1 総合戦略でひとづくりを掲げた与謝野町では、よさのみらい大学を開講。住民がビジネスを学べ、教養が身に付く講座を開いた

ただ、その過程で地域の課題が明確になり、役所のなかにも推進役となる人材が表舞台に現れるといった成果が生まれました。そのなかから、地域の強みを生かし、独自の成長戦略を描き、総合戦略を実行に移す自治体が出てきています。2017年は、京都府与謝野町のように、よさのみらい大学を開講し、地域を担う人づくりの育成するところや、福井県鯖江市のようにITを教育や産業に取り入れて地域のブランド化を図るところなど、ユニークな取り組みを取材することができました(写真1)。自治体を中心に地域が主役となって自律的に地方創生に取り組むこの動きを「地方創生2.0」と定義する専門家もいます。

そして、次の地方創生の重要なキャストとなる起業家や企業が今、次々と名乗りを上げてます。かれら民間と自治体とがタッグを組んで、公民連携で地域を盛り上げる「地方創生3.0」が、いま始まろうとしているのです。

キャストは、総合戦略の雛形作成を担った総合的なコンサルティグ会社ではありません。地域創生の起爆剤となる独自のツールを持った民間企業のことです。

地方創生の専門スキルを持つ企業がキャストに

PIAZZA(ピアッツァ、東京)は、スマホのコミュニティアプリを使った地域SNS「PIAZZA」を展開する会社です(写真2)。東京・勝どき、神奈川・武蔵小杉、千葉・流山など、行政とも連携しながら、各エリアのファミリー層を中心ターゲットにした地域SNSを展開しています。住民同士のコミュニケーションのほか、行政、商店などの地域情報が投稿され、地域ネットワークを醸成する機能を持っています。企業や商店は、地域商圏に直接リーチでき、行政も地域内のコミュニティづくりや地域サービス、防災、防犯などの情報発信に活用できるというメリットがあります。現在は首都圏を中心ですが、フランチャイズ展開も含め、全国展開を予定しています。

また、PIAZZAでは、街のコミュニティのつながり加減や活動量などを数値化した「Community Value」を4月に発表、東京都江東区などで事業 KPIとして導入が始まりました(関連記事を新・公民連携最前線PPPまちづくりで掲載予定)。

写真2 地域SNS「PIAZZA」では、エリア内情報が活発に行き来し、地域コミュニティを支えている
写真2 地域SNS「PIAZZA」では、エリア内情報が活発に行き来し、地域コミュニティを支えている。
写真3 地域の工芸品とCreemaのクリエイターとのコラボで生まれた商品をサイトで販売
写真3 地域の工芸品とCreemaのクリエイターとのコラボで生まれた商品をサイトで販売。
写真4 2017年のハンドメイドインジャパンフェスでは、兵庫県の工芸品を販売するブースも設置された
写真4 2017年のハンドメイドインジャパンフェスでは、兵庫県の工芸品を販売するブースも設置された。

クリーマ(東京)は、毎年「ハンドメイドインジャパンフェス」を東京ビッグサイトで開催するなど、自社サイトCreemaや各種イベントでハンドメイドマーケットを展開しています(写真3、4)。地方創生を後押しする取り組みとして、2016年から「全国いいもの発見プロジェクト」をスタート。Creemaのクリエイターと地方の素材や工芸品のメーカーとがコラボして、ハンドメイド作品をイベントやサイトで展示・販売しています。福岡県糸島市や福井県鯖江市、広島県尾道市など、ものづくりの盛んな地域で開催する「クリーマクラフトキャラバン」も地方を盛り上げる展示販売の試みです。

その他、仕事発注サイトのランサーズ、起業支援のETIC.、インバウンドニュースの訪日ラボ、民泊サイトのAirbnb、地域応援クラウドファンディングのFAAVO、温浴施設開発の温泉道場、地域の優れものを紹介する日本百貨店、地域の食材を編集して店舗で取り扱うるるぶキッチン、公民連携の観光地リスクマネージメント指南するJTB総合研究所など、さまざまな業種で自社の持ち味を生かした地方創生関連メニューを持つ企業が登場しています。地方創生3.0では、これら専門性の高い民間パートナーとコラボレーションして、どのように地域を盛り上げていくか、自治体や商工会、商工会議所などのプランニングが重要になります。

日経BP総研もさまざまなジャンルのメディアを取材してきた研究員が在籍し、その知見を活かして地方創生のお手伝いをしております。前出のPIAZZAや日本百貨店など、各企業との交流があり、連携して地域活性化のプロジェクトや地域の課題を解決するソリューションの提案も行います。地方創生3.0は、テーマによってどのキャストを起用し、どう盛り上げていくのか、プロデュース力が問われるフェーズになっています。

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石井 和也

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