地方のワーク・ライフ・バランス 第3回
社員同士のコミュニケーションを深め、青森の文化をつなげる Case 西田組
昭和47年に設立された西田組は、土木工事、解体工事、産業廃棄物処理、建築工事、除雪作業などを行う、青森県を代表する総合建設業社。さらに石油販売や浄化槽の維持管理などを行うグループ会社があり、全8社の西田グループとして、事業を幅広く展開しています。
働き方改革を行うのが難しいといわれる建設業界において、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
聞き手=内野侑美(カスタムメディア本部 第一編集部) 文=小口梨乃 写真=武藤奈緒美
慢性的な人手不足を解決するために
「あおもり働き方改革推進企業認証制度」に申請した理由を教えてください。
西田社長 建設業界の会合などでは、必ず働き方改革に関する議題がのぼります。その背景として、慢性的な人手不足があり、業界全体で取り組まないと解消できない深刻な問題です。弊社でもその課題に取り組んでいこうと思い、認証制度に申請しました。
とくに弊社のような中小企業は、就業規則を一度作ってしまうと、なかなか見直すことはありません。私は社長になって4年目なのですが、それではいけないと思い、ちょうど同時期に規則の整備を試みていたので、認証をもらえれば、社内の働き方改革をより推進できると考えたのも、ひとつの理由です。
御社での人手不足はどの程度深刻なのでしょうか。
西田社長 現在社員は129名で、職場定着率は92%と高いのですが、新卒の学生がなかなか確保できません。なので、65歳が定年ですが、70歳まで延長して働いてもらう場合もあります。しかし、運転作業などは年齢的に難しいので、業務内容は限られてしまいます。
新卒の学生は、都市部で就職をしたり、地元に残る学生も各企業がアピールしたりするので、人材の確保が難しいのが現状です。定期的に採用していかないと、技術職として一人前になるにも時間がかかりますし、世代間のバランスが崩れてしまいます。
人手不足でとくに問題になることは何でしょうか。
今 青森県特有だと思いますが、毎年12〜3月には除雪の仕事があります。深夜から朝6時くらいまでのハードな作業なので、連日出勤は避けたいのですが、どうしても2日連続になってしまうこともあります。何しろ自然が相手なので、待機していても積もらない日もありますし、3〜4日間降り続ける場合もあります。重機の運転の可否も関係するので、ローテーションを組むのにいつも頭を悩ませています。
男女問わず、休暇を取得しやすい環境づくりを推進
建設業界は休暇が取りにくいのでしょうか。
西田社長 有休取得を促してはいますが、気象条件などの関係で工事ができないと、工期が詰まってしまうこともあるので、どうしても予定通りにならない部分があります。建設業界全体の課題でもありますが、4週8休を目指すことで、働く環境を改善していきたいと思っています。
育休や産休の取得はいかがですか?
西田社長 現在女性社員の割合は13.9%で、事務職が多いのですが、重機を運転するなど現場で働く女性も増えてきました。育休や産休も積極的に取ってほしいと考えています。先日グループ企業の西田石油販売の社員が産休を取得したのですが、グループ全体の人事で産休中の仕事を分担してサポートしていました。
西田(友) 復帰後も、子育てをしながら働きやすい環境だと思います。私は高校生と中学生の娘が3人いるのですが、現在所属している環境部は早朝からの勤務で7時半から4時半が定時なので、帰宅してからも好きなことができ、生活が楽しくなりました。中学生の娘がねぶた祭りに参加することになったので、夕方送迎をすることもできますし、親に任せっきりだった畑も自分でやり始めて、お弁当用の野菜を育てています。
夏前にはねぶた小屋がつくられ、ねぶたの制作が始まる。ねぶたに参加する人のレッスンに毎週通っている西田さんの娘さん。
愛犬のゴンちゃんと今さん。若いうちは何の気なしに食べていた山菜も、歳を重ねて青森の食文化のひとつとして気付いたそう。
青森の文化を伝えることで、社員同士の会話を生む
休日はどのように過ごしていらっしゃいますか?
今 山菜採りや家庭菜園、犬の散歩、トレッキングなどが趣味で、休日には妻と一緒に出かけます。とくに山菜採りが好きで、工事をしているときに山菜が生えている場所を見つけて、内緒にしておいて後で採りに行くんです(笑)。漬物にして会社で配るのですが、喜んでもらえるので嬉しいですね。
ここはすぐ近くに山や海がある地域なので、自然の中で食材になるものが色々あるんです。私も祖父母に教えてもらいましたが、会社の若い世代にも地元の文化を伝えたいと思っています。
社員同士、お互いのことをよく知っているように感じました。
西田社長 普段から社員同士のコミュニケーションを大切にしています。私の場合は、会議のあとは必ず飲みにいって、クールダウンしてプライベートの話をするなど、コミュニケーションを深められる場をつくるようにしています。仕事とプライベートをすべて知っておく必要はありませんが、ある程度共有することで相互理解につながり、仕事も円滑に進められるのではないかと思います。
3回にわたって、連載をした「あおもり働き方改革」の取組み。東京で毎日、満員電車に揺られていると気付けなかった、人と人のほどよい距離の取り方、気づかいに、青森県でお話を伺って改めて感じました。
ご協力いただいた方々、ありがとうございました。次はあなたの県に伺うかもしれません!
ぜひ、わが県の「働き方改革」を紹介したいという方は、当社までお問い合わせください。
コンテンツ本部 編集2部
内野 侑美(うちの・ゆみ)
女性向け雑誌や実用書を扱う編集プロダクションを経て日経BPコンサルティングに入社。企業広報誌やPR誌から、現在は周年史、統合報告書、カード会員誌を担当。コンセプト設計からコンテンツ制作、撮影のディレクションまで行います。
連載:地方のワーク・ライフ・バランス
- 第1回 本州最北の地 青森県の「あおもり働き方改革」の取組み
- 第2回 「思いやりルール」で働きやすく caseヒグチ
- 第3回 社員同士のコミュニケーションを深め、青森の文化をつなげる Case 西田組
- 第4回 イクボスが働きやすい職場を作る! 川崎市役所の取り組みとは
- 第5回 人口急増中の川崎市が着手した、オフピーク通勤