地方のワーク・ライフ・バランス 第2回

「思いやりルール」で働きやすく caseヒグチ

  • カスタムメディア本部 第一編集部 内野 侑美

「思いやりルール」で働きやすく caseヒグチ
第1回では「あおもり働き方改革」の取組みについて県庁でお話を伺いましたが、続いて第2回では、今年6月に「あおもり働き方改革推進企業」として認証を受けた「ヒグチ」を訪れました。
今年で創業142年を迎え、OA機器やオフィス用品、医療機器の販売を行う同社は、3年前に県内同業種の東京堂の子会社となり、新しく社長に就任した内田征吾氏が指揮を執り、社員の働き方を改めて見直し続けています。ヒグチならではの「働き方改革」を、専務取締役・川崎秀子さんに伺いました。
聞き手=内野侑美(カスタムメディア本部 第一編集部) 文=小口梨乃 写真=武藤奈緒美

楽しく働けるような環境づくりを

「あおもり働き方改革推進企業認証制度」に申請した理由を教えてください。

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川崎 青森県で働き方改革に取り組む企業を応援する制度がスタートしたと聞いたとき、働き方改革はこれまで弊社で積極的に取り組んできたことでもあり、ぜひ申請したいと思いました。認証されることで企業の認知度アップにもなりますし、若い世代に興味を持ってもらえれば、人材の確保にもつながります。

なぜ働き方改革を取り組んできたのでしょうか?

川崎 私は元々親会社となる東京堂で働いていました。ヒグチの事業譲渡を受けて感じたのは、社内の雰囲気がすごく静かだという印象です。東京堂は女性社員が多いこともあり、オープンで明るい社風でしたので、まずは楽しく働きがいのある職場になるよう環境づくりに取り組みました。

最初に見直したのが、就業規則。実は、譲渡されたときは賞与や退職金などの報酬面の制度が確立されていませんでした。働いた分をきちんと報酬として得られることはやりがいにもつながりますので、制度を見直し、新たに退職金規定を設けました。

社員の家庭環境に配慮した「みんなで思いやり配慮ルール」

そのほかに、どのような点を改善したのでしょうか?

川崎 東京堂のときから実施していた「みんなで思いやり配慮ルール」を導入しました。子供を保育園に迎えに行ったり、親を病院に送っていったり、家庭の事情によってやらなくてはならないことを優先するというルールです。その目的は、お互いに思いやりを持って働ける職場を作ることです。社員一人ひとりが仕事と家庭を両立するためには、それぞれの事情をお互いに理解し、分かり合うことが大切だと考えています。

「みんなで思いやり配慮ルール」は、社内でどのように実践されているのでしょうか?

川崎 就業規則では、日曜日と月に8日間の休みが定められていますが、それだけではお休みが足りない場合もあります。たとえば、津軽から通っている社員は実家が農業を営んでいるので、田んぼやりんご畑の作業が忙しいときは、週休3日を取って実家を手伝っています。また、少年野球をしている小学生の息子がいる社員は、週末の試合に審判として参加しなくてはなりません。その社員には、優先して土曜日に有給休暇を進めています。仕事はもちろん大切ですが、子どもの将来を応援する親として男性にも育児に参加してほしいですから。

「青森の農家が一番忙しくなるのは、りんごの開花と田植えが重なる5月です」と古山さん。りんご畑でご両親と剪定作業中の様子。 「青森の農家が一番忙しくなるのは、りんごの開花と田植えが重なる5月です」と古山さん。りんご畑でご両親と剪定作業中の様子。

野球少年の息子を審判として支援するお父さん。土日に休みをいただく分、平日の仕事は効率よくこなすそう。 野球少年の息子を審判として支援するお父さん。土日に休みをいただく分、平日の仕事は効率よくこなすそう。

ダンスが趣味ですと応えてくれた畑井さん。休日はイベント会場の舞台で思いっきり踊るそう。 ダンスが趣味ですと応えてくれた畑井さん。休日はイベント会場の舞台で思いっきり踊るそう。

若い人材の育成をサポート

「みんなで思いやり配慮ルール」のほかに、実践されていることはありますか?

川崎 事業とも関連している取組みなのですが、社員が自身の能力向上を目指すきっかけづくりの為、建築士・住環境福祉コーディネーター、医療機器取扱い等の資格を会社負担で取得できるような制度を設けています。専門的知識を得ることにより、仕事に取り組む付加価値が加わり、生産性の向上に繋がるものと考えています。
それだけでなく、若い世代の社員には、どんどん外に出て様々なことを吸収してほしいと思っています。出張やセミナーへの参加を積極的に促すことで、知識や経験を積み仕事の幅を拡げてほしいと考えています。
また、健康促進にも力を入れていて、社員が休み時間にリラックスできるよう、血圧計・フットマッサージ機・酸素カプセル等を購入し、事務所の一角に「健康リラクゼーションスペース」を創りました。

課題を解決し、より働きがいのある会社を目指す

これからの課題を教えてください。

川崎 社員の平均年齢は43歳。20代の社員は1名だけです。これから新入社員を迎える上で「この会社で働きたい」と思える、魅力のある企業づくりをしなければならないと考えています。先ずは、社員一人ひとりのワーク・ライフ・バランスの向上に取り組みたいと思っています。

目指していることは何でしょうか。

img_20170524_2.jpg川崎専務(右)と経理課・大塚さん。出産を機に一度仕事を離れたものの、復職。今は家庭の用事があると、思いやりルールを活用しつつフルタイムで働く女性お二人。

川崎 入社したら定年まで勤められるような企業であることです。企業は組織ですので、お互いの理解があれば、働きやすさにもつながり、業績もどんどんプラスに転じていくと思っています。
実は、この3年間の業績は右肩上がりです。社員の頑張りに応えられるような制度を作り、社員が未来に希望を感じながら、楽しく働ける会社でありたいと思っています。

働き方に柔軟性を持たせることで、社員の皆さん笑顔がたえず、イキイキと働いているのが印象的でした。川崎さんとご一緒に取材に対応いただいた大塚さん、ありがとうございました。第3回は西田組さんでお話をお伺いします。

コンテンツ本部 編集2部
内野 侑美(うちの・ゆみ)

女性向け雑誌や実用書を扱う編集プロダクションを経て日経BPコンサルティングに入社。企業広報誌やPR誌から、現在は周年史、統合報告書、カード会員誌を担当。コンセプト設計からコンテンツ制作、撮影のディレクションまで行います。