企業広報調査レポート

変わる広報、変わる企業サイト コーポレートブランディングの「今」

2017.04.21

ブランディング

  • 松井 一郎

    チーフコンサルタント 松井 一郎

ブランディングの重要性が増し、広報活動の最大の目的に

株式会社日経BPコンサルティングでは、企業の広報活動に関する調査を行い、その結果を2016年9月に発表した。そこから浮かび上がったのは、変わりゆく「広報セクション」の役割と、コーポレートブランディングへの関心の高まり、そしてブランディングのツールとしての「コーポレートサイト」への注目度の高さだった。

調査結果から明らかになったのは、広報活動におけるコーポレートブランディングの重要性が増しているという現状だった。回答者の4割が「とてもそう思う」とするなど、肯定が8割を超えている。広報活動の目的についての質問も、これまでは「自社の活動や事業内容に対する認知拡大」が77.8%で最多であったことを鑑みても、企業側の意識の変化がはっきりと見て取れる。

一方で、「今後目的としたいこと」に目を向けると、「自社のブランド(コーポレートブランド)の醸成」が73.0%でトップとなっている。今や企業の広報担当者にとって「ブランディング」は、共通のキーワードになっているのだ。

今後、有力な“武器”として期待されるオウンドメディア

それではコーポレートブランドを社外で醸成するには、どのような手法が有力なのだろうか。

広報担当者が「今後有効だ」と考えている手段は、「自社のWebサイトでの情報提供」が75.5%と最も多かった。「従来メディア(新聞・テレビ等)への情報提供や連携強化」(68.6%)や「メディアヘの企業広告」(49.1%)を上回った結果からは、従来のマスメディアへの依存が薄れ、オウンドメディアに対する期待が高まっている状況が見て取れた。

多忙な広報担当者。広報活動やサイトの自己評価は高くない?

回答企業の3分の2弱が「力を入れている」としたように、自社のWebサイトを通じた情報発信は日々、進歩している。ただし、WebやSNSを使った広報の成果は従来手法を大きく上回るには至っておらず、自社のWebサイトに対する自己評価は、肯定と否定が拮抗しているのが現状である。

広報担当者にとってもう1つ、悩みのタネになっているのが、業務領域の拡大と、それに伴う業務量の増大だ。ただでさえ人手が足りない中でWebサイトでの情報発信をはじめ、これまでよりも行うべき業務が増えるなどの現状は、調査結果にも「運用管理や対応の負荷が大きい」「担当者が多忙」という回答として反映されている。

こうした調査結果を踏まえてぶつけた、「現状の広報活動が適切な状況にあるか」という問いに対しては、否定派がやや上回る結果となっている。Webサイトでの情報提供をより効率的かつ効果的に進め、ブランディング戦略のための時間をいかに確保できるかが、さらに重要になっていくと思われる。

調査概要

調査目的 企業等の広報活動、特にコーポレートWebサイトやコーポレートブランディングに関して、取り組み状況と担当者の意識を把握すること。
調査手法 郵送法
調査対象 年商200億円超、従業員数200人超の企業を主な対象とし、6000社弱の企業の広報担当者宛に、調査への協力を依頼した。
調査時期 2016年6月
有効回答数 915件
回答者の構成 【業種】製造:35.1%、流通:22.3%、建設・土木・不動産:11.0%、金融:9.4%、教育・医療・その他:21.9%、無回答:0.3%
【従業員数】3000人以上:20.8%、1000~2999人:29.9%、300~999人:41.2%、299人以下:7.2%、無回答:0.9%
調査実施 日経BPコンサルティング

 

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松井 一郎

チーフコンサルタント
松井 一郎

1992年京都大学大学院理学研究科修了。同年日経BP社に入社。日経コンピュータ編集部にてICT分野の取材・記事執筆を行う。コンサルティング局マーケット予測部を経て、同局の別会社化に伴い日経BPコンサルティングに出向。2013年より現職。ICT業界を中心に、マーケティングコミュニケーション領域のコンサルティング、調査、制作支援などを多数担当。日経コンピュータ顧客満足度調査をはじめ記事執筆なども手がける。