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サステナビリティ経営とESG投資の潮流〈2〉企業理念実践の加速に向けたオムロンのサステナビリティ推進(後編) サステナビリティ経営とESG投資の潮流〈2〉企業理念実践の加速に向けたオムロンのサステナビリティ推進(後編)

サステナビリティの推進において、グローバルな評価機関から高く評価され、先進企業として知られるオムロン株式会社。統合報告書は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用を委託している16機関に選定を依頼した「優れた統合報告書」にも選ばれている。それらオムロンのサステナビリティの取り組みを主導してきたサステナビリティ推進室長、平尾佳淑氏と同エンゲージメント推進部主査の奥田順子氏に同社の戦略について話を伺った。
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聞き手=日経BPコンサルティング 成田美由喜 文=斉藤俊明


4つの注力ドメインとステークホルダーからの期待に応えるという観点から15の重要課題(マテリアリティ)を特定

サステナビリティ方針に基づいた重要課題(マテリアリティ)の策定においてはどのような点を重視されましたか。

平尾: オムロンの中期経営計画VG2.0では、今後10年間の変化を見通し、事業を通じて解決すべき社会的課題は何か、解決することでどんな価値が創出されるのかを考えました。その結果、VG2.0では従来の事業部単位を超えたドメイン戦略として、「ファクトリーオートメーション」「ヘルスケア」「モビリティ」「エネルギーマネジメント」を注力ドメインと設定。これら4つのドメインにおける課題をマテリアリティに含め、非財務のサステナビリティ目標を策定しました。
 当社は一般の方々にはヘルスケア企業というイメージが強いのですが、売上高・営業利益ではFA(ファクトリーオートメーション)事業が一番大きいです。一般消費者からは見えにくい事業ではあるのですが、その意味でもきちんと社会的課題を明確にし、どういう価値を生み出していくのかをステークホルダーに正しく伝えることは、社員のモチベーションを上げるためにも重要だと考えました。

図)オムロンは、自社で定義した注力ドメインから、事業を通じた社会的解決の重要課題を設定した

図)オムロンは、自社で定義した注力ドメインから、事業を通じた社会的解決の重要課題を設定した

注力ドメインから特定したマテリアリティに加え、取引先を含めたステークホルダーから対応を期待される課題もあると思います。その課題にはどのように対処されていますか。

平尾: ステークホルダーからの要求は強くなってきています。それらの課題を解決するために、RBA(Responsible Business Alliance:責任ある企業同盟)のグローバル企業行動規範、DJSI(Dow Jones Sustainability Index)をはじめとした外部評価機関からの要請内容、さらにはSDGs(持続可能な開発目標)などの国際目標からサステナビリティに関する項目を抽出し、オムロンが企業価値を向上していくための課題を整理しました。当社に部品を納めている重要業者についてもRBAに基づいたアンケートを実施し、基準が十分に満たされていないところについてはアドバイスを行うなど対話を続けています。

図)オムロンがステークホルダーから対応が期待されると考える課題をベースに特定した重要課題

図)オムロンがステークホルダーから対応が期待されると考える課題をベースに特定した重要課題

統合報告書では要素をフォーカス、Webサイトでは詳細まで開示
役割分担を明確に

サステナビリティ推進室エンゲージメント推進部 主査 奥田順子氏
サステナビリティ推進室エンゲージメント推進部 主査 奥田順子氏

近年は統合報告書が評価されるようになっています。御社の統合報告書が高く評価されたことで、実際にどのようなメリットがありましたか。

平尾: たとえばひとつの成果として、いま採用が非常に好調になっています。やはり企業理念を前面に出し、どのような社会的課題の解決を目指しているのかということに加え、私たちの発信する非財務情報に共感、共鳴してくださる方が増えているのだと感じます。

財務と非財務の統合報告の成果ですね。また、長期的な企業の成長ストーリーを発信していくのも統合報告書の役割ですが、御社はWebサイトでの発信も重視されています。どのような役割分担を考えていますか。

オムロンのWebサイトはグローバルナビにサステナビリティの項目を加え、常にアクセスできるようにしているほか、トップの強いメッセージ紹介、幅広く整理された情報開示が行われている
オムロンのWebサイトはグローバルナビにサステナビリティの項目を加え、常にアクセスできるようにしているほか、トップの強いメッセージ紹介、幅広く整理された情報開示が行われている

奥田: 経営の考えや注力する取り組みを投資家に向けてアナウンスする場はやはり統合報告書です。ただ、投資家以外にもさまざまな読者がいるので、統合報告書と並行してWebサイトの制作も進めています。
 統合報告書はどうしても紙面が限られますが、Webサイトはより広く、網羅的に情報を掲載できます。DJSIは公開情報でも評価されるので、各部門と連携しながら制作を進めていきました。統合報告書はよりフォーカスしたい要素を凝縮しつつ、一冊でオムロンがわかるようになっています。一方のWebサイトは、もちろん網羅的に伝えるという要素もありますが、ビジュアル的にも充実させ、よりわかりやすく、幅広いステークホルダーに興味を持ってもらえるようにという視点で制作しています。

平尾: 統合報告書はサステナビリティ推進室とIRでプロジェクトチームを作り、議論しながら作り上げていきました。ただ、15のマテリアリティの詳細をすべて統合報告書に載せるのは紙面上難しいので、Webサイトにはすべてを載せることにしました。

Webサイトの情報開示で重きを置いている部分はどこですか。

奥田: オムロンの取り組みをどのように伝えたらいいのかという視点で議論を重ね、2017年9月にサステナビリティに関するWebサイトを大幅リニューアルしました。まず、オムロンにとってサステナビリティとはどういうことかを伝えるコンテンツを最初におきました。ここでは、取締役会議長としてサステナビリティを監督するという立場から会長メッセージを発信し、企業理念とのつながりや取締役会のコミットメントを伝えています。
 あわせて、サステナビリティ方針や体制、マテリアリティを掲載し、サステナビリティの全体像がわかるように工夫しました。そして、これに続く各コンテンツにおいては、マテリアリティに連動する形で各取り組みの詳細を伝える構成としました。このように、取り組みの全体をストーリー化して伝えるところも重視しながら作りました。

統合報告書でもWebサイトでも、重要課題に対してSDGsの何番の目標につながるのかがわかるようにアイコンが付けられています。

平尾: VG2.0はSDGsをベースに策定したわけではありませんが、SDGsはグローバルで取り組まなければならないアジェンダですので、当社が設定したマテリアリティが目標の何番に該当するかという整合はとるように意識しました。情報開示においてわかりやすさを押し出すには、やはりアイコンが効果的です。SDGsの何番の目標を、当社は事業を通じて解決しているとわかりやすく伝えることは大事だと考えています。

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今後の展望について教えてください。

平尾: サステナビリティへの取り組みは、まだ緒に就いたばかりの状態だと考えています。この取り組みをさらに加速させていくには、世の中の変化を踏まえ、きちんとPDCAを回し、その成果を常にモニタリングしていかなければなりません。その意味では、PDCAのCの部分はこれからのテーマです。DJSIをはじめとするさまざまな評価機関や投資家からのフィードバック、国際社会からの求めに対し、オムロンとしてどこまでやるか、何を事業に取り込んで成長させていくか、それによって社会課題をどう解決していくかを考えていかなければならないと考えています。

成田 美由喜

日経BPコンサルティング コンテンツ第一本部 編集部

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