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サステナビリティ経営とESG投資の潮流〈1〉企業理念実践の加速に向けたオムロンのサステナビリティ推進(前編) サステナビリティ経営とESG投資の潮流〈1〉企業理念実践の加速に向けたオムロンのサステナビリティ推進(前編)

サステナビリティの推進において、グローバルな評価機関から高く評価され、先進企業として知られるオムロン株式会社。統合報告書は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用を委託している16機関に選定を依頼した「優れた統合報告書」にも選ばれている。その取り組みを主導してきたサステナビリティ推進室長、平尾佳淑氏と同エンゲージメント推進部主査の奥田順子氏に戦略について話を伺った。

聞き手=日経BPコンサルティング 成田美由喜 文=斉藤俊明


社員が日々の仕事の中で実践しやすいように企業理念を改定し、持続的な企業価値向上を目指す

サステナビリティ推進室 室長の平尾佳淑氏(右)とエンゲージメント推進部主査の奥田順子氏(左)
サステナビリティ推進室 室長の平尾佳淑氏(右)とエンゲージメント推進部主査の奥田順子氏(左)

サステナビリティの取り組みを始めた経緯を教えていただけますか。

平尾: オムロンは、創業以来脈々とサステナビリティへ取り組んで来ました。創業者の立石一真は、1959年に「社会の公器性」を謳った「社憲」を制定しました。そこでは「われわれの働きで われわれの生活を向上し よりよい社会をつくりましょう」と謳っているのですが、この「社憲」の精神を企業理念として受け継ぎ、事業を通じて社会的課題の解決に努めてまいりました。つまり、オムロンにとっては、事業=サステナビリティの取り組みであると言えます。外部への発信に力を入れ始めたのはここ10年ほどのことですが、当社の取り組みをわかりやすく伝えていくにはどうしたらいいかを考え、統合報告書やWebサイトを活用するようになりました。

社憲に込められた想いをベースに、企業理念も改定されました。

平尾: 2015年5月に3回目の改定を発表しました。当時、海外でも事業が拡大し、さまざまな価値観を持つ社員が増えてきていました。それぞれの事業が成長しようとする遠心力が強くなる一方、企業理念に込められた想いを社員一人一人が日々の仕事の中で実践できていないという実態がありました。そこで、企業理念をいま一度見直し、企業経営における求心力の原点として位置づけ、事業を通じて社会的課題を解決するという想いをグローバルも含めた全社員にわかりやすい形にするため作り変えたのが現在の企業理念です。
 従来、社憲は企業理念の外に置かれていたのですが、それを「Our Mission」という形で企業理念に含め、加えて私たちが大切にする3つの価値観、「ソーシャルニーズの創造」「絶えざるチャレンジ」「人間性の尊重」を「Our Values」と位置づけて、社員がより日々の仕事の中で実践しやすい形にまとめました。

図)3回目の改定が行われたオムロンの企業理念
図)3回目の改定が行われたオムロンの企業理念

御社にとってサステナビリティへの取り組みは、企業のDNAに組み込まれていたこと、と言えるのですね。御社にとって、「サステナビリティ」とはどういうことを表しているのですか。

平尾: 改定した企業理念には創業者の想いに加え、3つの価値観それぞれに「し続けます」という宣言の文言を付けたことで、サステナビリティに取り組む現在の経営陣の想いも入っています。この企業理念の実践とサステナビリティの推進は、同義語だと捉えています。

平尾佳淑氏
平尾佳淑氏

 ですから、当社のサステナビリティ方針も、企業理念の実践を通じて持続的な企業価値向上を目指すことです。それは、企業は事業を通じ社会に貢献し続けることで、持続的に成長し続けるという考えが根底にあり、すべての取り組みが企業理念に通じていくからです。現在、サステナビリティ、CSR、ESGという言葉が様々な場面で混在して使われています。
 当社では、社会と企業の両面から持続可能性を追求する「サステナビリティ」という言葉を使っています。サステナビリティを推進する部門も、かつてはCSR部という名称でしたが、現在はサステナビリティ推進室に変更しています。

図)オムロンのサステナビリティ取り組みのフレーム
図)オムロンのサステナビリティ取り組みのフレーム

サステナビリティへの取り組みを役員クラスの報酬に反映

サステナビリティ推進室は組織としてはどういう位置づけですか?

平尾: 名称を変えたのは2017年4月です。それ以前は取締役会の下の取締役室の中にCSR部があったのですが、サステナビリティ推進をさらに加速させるという役割を担い、取締役室から独立し、取締役会直下の組織として新たにスタートしました。17年度はオムロンの中期経営計画VG2.0がスタートした年なので、サステナビリティ目標をVG2.0に統合できたという意味でもタイミング的によかったと考えています。

文字通り、組織から取り組み体制を作ったわけですね。経営のコミットメントとしてはサステナビリティにどのように取り組んでいますか。

平尾: 2017年度の取締役会運営方針に「サステナビリティ方針に基づき設定した重要課題(マテリアリティ)に対する取り組み」が明記されました。サステナビリティへ向けた取り組みを取締役会がきちんと監督するという強いコミットメントを打ち出しています。
 その取り組みの一例として、中長期業績連動報酬の一部にもサステナビリティ指標が入りました。世界的なサステナビリティ投資の評価機関であるDJSI(Dow Jones Sustainability Index)に、2020年度の時点で組み込まれているか否かで、執行役員と社内取締役の報酬が連動する仕組みを作っています。

図)取締役会の運営方針や役員の報酬制度にもサステナビリティの取り組みが反映される
図)取締役会の運営方針や役員の報酬制度にもサステナビリティの取り組みが反映される

2017年は「DJSI World」の構成銘柄に初めて選定されました。同銘柄に選定されることはやはり目標としていたのですか。

平尾: これまで「DJSI Asia Pacific」には7年連続で選定されていたのですが、「DJSI World」になかなか選ばれませんでした。そこで、社外の視点でどの部分の評価が低いのかを分析し、改善ポイントを検討し、サステナビリティの取り組みに組み入れるよう関連部門と連携してきました。「DJSI World」で選ばれたことは当社の取り組みをグローバルに認めてもらえたということでもあり、大変喜ばしいことであると捉えています。アンケート内容は当然毎年変わりますし、評価の視点も厳しくなっていくので、今後は取り組みをより進化させることが重要だと考えています。

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