企業研究世界最古の企業、金剛組。その「これまで」と「これから」
人材と技の力を守りながら未来に挑む
- 金剛組代表取締役社長 刀根健一社長
聞き手=内野侑美/文=二階堂尚 - 2018年01月22日
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創業1000年を超える会社が7社を数える「長寿企業大国」日本。その中で「世界最古の企業」として知られるのが金剛組だ。飛鳥時代以前の西暦578年に創業し、紆余曲折を経ながら今日までその歴史を守ってきた同社の「長寿の理由」とこれからのビジョンについて、刀根健一社長に聞いた。
途切れずに継承されてきた職人の技
──金剛組の始まりとはどのようなものだったのですか。
刀根:大阪の四天王寺を建立するために聖徳太子の命によって百済から3人の工匠を招いたのが始まりです。そのうちの一人が、金剛組の創業者となる金剛重光でした。その後、大阪を中心に、神社仏閣の建築や改修などを手掛けてきました。
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──来年で創業1440年になります。これだけ長い間続いてきた理由は何だったのでしょうか。
刀根:聖徳太子の命により四天王寺の正大工職(お抱え大工)として補修や再建を一貫して任されてきたのが一番の理由です。もう一つ、おそらく世界にも類例がないのが、職人の技術が一度も途切れずに継承されてきたことです。創業時から宮大工の技術が棟梁から弟子に伝えられ、現在は関西に6組、関東に2組の宮大工集団がおり、今も100人を超える宮大工がいます。
廃業の危機を乗り越えて
──これまで、倒産・廃業などの危機はなかったのですか。
刀根:10年ほど前に非常に大きな危機がありました。金剛組は1955年に株式会社化したのちも、神社仏閣の専門建築会社として専業を貫いてきたのですが、39代目当主が社長に就任し事業拡大を図り、一般建築分野の仕事も手掛けるようになったんです。しかし、一般建築のほとんどが入札で低価格競争に巻き込まれ、不採算工事が頻発することになり、急速に業績が悪くなりました。
負債が拡大して存続が危ぶまれるようになったのは2000年代に入ってからです。そこで、2006年に髙松建設が支援し、金剛組は髙松建設グループの傘下に入りました。私も、もともとは髙松建設の社員でした。
──ということは、会社の歴史はそこで一度途切れているということでしょうか。
刀根:いえ、途切れてはいません。髙松建設やりそな銀行及び多くの債権者の方々の支援により、私的再建でのれん看板を傷つけることなく金剛組の従業員もそのまま残り、宮大工も金剛組を離れようとする人は一人もいませんでした。そして、今の体制になって、金剛組は原点回帰、いわゆる本来の神社仏閣建築の専門家集団に戻ることができました。そう考えれば、社内の組織の形が多少変わったぐらいで、歴史は続いている。そう明確に言っていいと思います。
- 2018年01月22日
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