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企業研究米国の製造工場を探訪

100周年を迎えたキッコーマンが、グローバルで実践すること

  • 文=吉田健一
  • 2017年10月12日
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千葉県野田市の醤油醸造家8家が合同で、1917年、野田醤油(現キッコーマン株式会社)を設立。今年2017年には、創立100周年を迎えた。同エリアでしょうゆの醸造が始まったのが1600年代中期。起源は、今から350年ほど前までさかのぼる。
日本に長く根付くキッコーマンだが、実はグローバルでの活躍も目覚ましい。売上高の実に約57%を海外事業が占める。グローバル化成功の秘訣はどこにあるのだろうか。

場所の選定にこだわる

シカゴのダウンタウンから北西へ140km。ウィスコンシンの広大なトウモロコシ畑を過ぎると、のどかな風景の中に突如大きな工場が現れる。23万坪の敷地面積を誇るキッコーマンのウォルワース工場だ。

ここではキッコーマンしょうゆを製造し、米国全域に出荷している。キッコーマンは、その商品が世界100カ国以上で愛用され、海外に7つの生産拠点を持つグローバル企業だ。この製造工場が海外で一番大きな生産拠点となる。カリフォルニア州にあるフォルサム第二工場とともに、ウォルワース工場はグローバル事業の屋台骨の一角で、北米がグローバルに占める売上の比率は約7割だ。

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工場のエントランス

食品の安全・品質の管理制度、SQF(Safe Quality Food)で定められた敷地を囲う柵を過ぎ、エントランスに入ると、キッコーマンフーズ(KFI)の清水社長と大浦副社長が笑顔で出迎えてくれた。

キッコーマンは、1957年、米国での販売会社(現KSU)設立後、米国人市場を意識したマーケティングを展開した。販売を伸ばし、キッコーマンしょうゆを製造するウィスコンシン工場を1973年にグランドオープン。現地生産のしょうゆの出荷を開始した。工場のエントランスには、工場でつくられるしょうゆが展示されている。一番の売れ筋は、多くのレストランで使われる5ガロン(約18.9リットル)の業務用だ。

そもそも、なぜここが製造工場の拠点に選ばれたのだろうか。ウォルワースがしょうゆの醸造に向いている理由を、清水社長が説明してくれた。

理由1:物流に適している
現在も米国のハブ空港として有名な、シカゴオヘア空港がある。国際空港評議会(ACI)が発表した旅客数ベース上位空港を見ると、2016年は第6位。工場オープン当時の1970年代は、旅客数、物流数ともに当時NO.1だったこともある。

理由2:豊富な原材料
しょうゆの生産に欠かせない小麦と大豆。小麦は、工場から北西にあたるミネソタ州、また大豆は中西部のイリノイ州、インディアナ州、オハイオ州で、豊富に取れる。

理由3:豊富な労働供給
現在は機械化が進んでいるものの、勤勉なスイス系、ドイツ系の住民が重要な労働力となった。

現地の食材、料理に合う調味料として

ただ、選定後もそれぞれの地において、長らく根付く必要がある。ローカライズだ。キッコーマンは、どのように海外進出の際、ローカライズを図っているのだろうか。それが成功している理由は何だろうか。

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キッコーマンフーズ社 清水和生社長

キッコーマンでは、販売拠点設立当初から、米国のスーパーマーケットを意識し、米国民の食卓での使用を念頭に置いていた。しょうゆを日本料理によく合う調味料として、海外に広めるのではなく、米国の食卓に、日本のしょうゆがどのような存在であるかを訴求した。その際、「Delicious on Meat(デリシャス・オン・ミート=肉によく合う)」というキャッチフレーズを使用した。結果、その後のてりやきソースの爆発的な人気につながった。

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キッコーマンフーズ社 大浦雅己副社長

また、米国での経営は、製販分離体制を取っている。製造会社であるKFIと、サンフランシスコや、アトランタ、カナダのトロントなど北米に7カ所の拠点がある販売会社KSUは別会社で、それぞれが、生産性と収益性のバランスを取る。お互いになれ合わないようにしつつ、両社間でより多くのコミュニケーションに時間を割き、尊重しあう姿勢を見せる。80年代から、キッコーマンはしょうゆのカテゴリーキャプテンとなった。また、尊重という点では、現地米国の経営を重視するため、役員会メンバーは日本人と米国人を半分ずつとし、現法の意見を積極的に取り入れている。製造工程においても、しょうゆの醸造に関わる一部の設備以外は、すべて米国での調達だ。

CSR活動にも積極的だ。1993年には教育関連、災害復興支援などの寄付を行い、現地コミュニティーと積極的に接した。現地に根付き、間違いないものを作り、環境や人を大事にし、地元の人にキッコーマンの工場を誇りに思ってもらう。キッコーマンが「企業市民」として活躍することは、ウィスコンシン州の名誉大使である茂木友三郎取締役名誉会長の意思でもある。

マネジメントとコミュニケーションを両輪で

そんな順風満帆にみえる工場でも悩みがある。現地採用の従業員とのコミュニケーションだ。先日もこんな話があった。

食品の安全管理に関する、国際的なマネジメントシステムとしてSQFがある。KFIもこの製造過程・製品認証基準を満たし、消費者の懸念に対してフィードバックが可能だ。その中で、食の安全を脅かす事案が起こらないように、各企業がどのような対処をしているかを認証の際に報告する義務がある。

SQFでは、原則として性悪説に立ったリスク管理が求められる。工場を囲う柵を設け、工場内のいたるところに監視カメラを配備する。まるで「あなた方を信用していない」と言わんばかりだ。そうではないという説明を、「巡りめぐって、あなた方を守るためにしている」と諭しているという。

一方で、日本人従業員と現地の従業員のコミュニケーションは、おおむね潤滑である。清水社長も年2回、適宜、直接的なコミュニケーションを現地の従業員と図る。その結果が和気あいあいとした雰囲気になるのだろうか。訪問客の私に対しても、みなさん挨拶で迎え入れてくれた。

日本で長らく培った品質にこだわる。さらに、キッコーマンの伝統を現地でも尊重しつつ、海外での振る舞い方を日本の従業員に理解、浸透させ、企業市民として日々業務に当たらせる。ローカライズのあるべき姿を垣間見ることができた。

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  • 2017年10月12日
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