日経BPコンサルティング調べ「大学ブランド・イメージ調査 2023-2024」(2023年8月実施)
広島工業大学、福岡教育大学、筑波学院大学がランキング上位に躍進
学部新設が大学ブランド力向上のきっかけに
2023年11月22日
株式会社日経BPコンサルティング(東京都港区)は、今回で17年目になる「大学ブランド・イメージ調査 2023-2024」の結果をまとめ、11月22日に調査報告書を発行・発売した(調査実施は2023年7~8月)。
本調査では、全国9地域457大学について、各大学の認知やブランド・イメージなどを尋ね、大学ブランド総合力を算出し全国9地域ごとのランキングを作成した。
調査結果のポイント
中国・四国編、九州・沖縄・山口編、北関東編でランキング上位に変動あり。広島工業大学、福岡教育大学、筑波学院大学が大幅にランクアップ
名古屋市立大学(データサイエンス学部)、東京都市大学(デザイン・データ科学部)など、学部新設がブランド力向上のきっかけに
調査結果データ
中国・四国編、九州・沖縄・山口編、北関東編でランキング上位に大きな変動
調査対象全9地域それぞれの大学ブランド総合力ランキング第1位は、甲信越編以外の8地域で前回と同様となった(北海道編:北海道大学、東北編:東北大学、北関東編:筑波大学、首都圏編:東京大学、北陸・東海編:名古屋大学、近畿編:京都大学、中国・四国編:広島大学、九州・沖縄・山口編:九州大学)。甲信越編では、前回初の第1位を獲得した新潟大学に代わり、前回第2位だった信州大学が第1位に返り咲いた。
今回、ランキング上位に大きな動きのあった地域は、中国・四国編、九州・沖縄・山口編、北関東編の3地域。
中国・四国編では、広島工業大学が前回から8ランクアップし第4位となった。2017年発行版以来、6年ぶりにトップ5入りを果たした。広島工業大学では2020年から独自の新教育プログラム「HIT.E ▶2024」をスタートさせ、「社会実践力」を養成する教育に力を入れてきた。その取り組みの一環として、地域連携や産学連携、国際交流などを積極的に推進。また、AI・データサイエンスやSDGsといった社会的要請の強い教育分野にも力を入れている。これらの取り組みが認知されたことで、大学や学生に対する評価が高まり、大学ブランド総合力を押し上げた可能性がある。
九州・沖縄・山口編では、福岡教育大学が前回15位から10ランクアップし第5位を獲得した。これまで8位が最高位だった同大学だが、今回過去最高位のポジションとなった。福岡教育大学では、2022年3月卒業者における正規採用での教員就職者数が全国1位となったことから、人材育成力が高く評価されたと考えられる。教員不足が叫ばれる昨今、教員人材を九州・沖縄地域を中心に多数輩出することで、地域の教育レベルを担保するとともに、地域貢献にもつながることから、本調査の6因子分析(※1)でも「地域貢献」因子が大きく上昇したと考えられる。
北関東編では、筑波学院大学が10ランクアップし第5位を獲得した。筑波学院大学は、これまで認知率が4割台となっていたが、今回56.2%と初めて5割を上回った。また、イメージ項目では「知名度がある」が前回から4.6ポイント上昇し6.2%と全イメージ項目の中で最も高い得票率となっている。2024年度に大学名を日本国際学園大学に変更する同大学だが、ここ数年高大連携による公開授業や高校生コンテストなどを実施しており、地域や高校生との継続的なコミュニケーションが奏功したのではないかと考えられる。
(※1)6因子分析・・・36項目のイメージを因子分析によって、「一流」「躍動感」「創造力」「グローバル」「地域貢献」「上品・誠実」に分類し、それぞれを構成するイメージ項目の獲得割合をまとめ偏差値化した。上記で紹介した「地域貢献」因子を構成するイメージ項目は、「親しみが持てる」「地域産業に貢献している」「地域社会・文化に貢献している」の3つ。
その他、各地域で大きくランキングを上昇させた大学があった。(表参照)
最も大きな順位変動(上昇)は、首都圏編の駒沢女子大学で、98位から25ランクアップし73位となった。また、他地域でも、10以上のランクアップをした大学が多くみられた。北陸・東海編で最も大きな順位変動(上昇)は愛知教育大学と東海学園大学の7ランクアップだった。
本調査では、ランキング上位での大幅な順位変動は少ない一方、中位以下では大きく変動することが珍しくない。自学のランキングに大きな変動があった場合は、結果に一喜一憂することなく、6因子やイメージ項目で目立った変動のあった項目を見つけ、上昇または下降の要因を探ることが重要となる。変動要因を分析することで、活動や施策の成果を検証し次の取り組みにつなげていただきたい。
地域 | 大学種別 | 所在地 | 大学名 | 大学ブランド総合力ランキング | ||
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今回 | 前回 | 順位変動(上昇) | ||||
東北 | 私立 | 青森県 | 弘前学院大学 | 20位 | 30位 | 10ランク |
東北 | 私立 | 宮城県 | 尚絅学院大学 | 23位 | 33位 | 10ランク |
東北 | 公立 | 岩手県 | 岩手県立大学 | 11位 | 19位 | 8ランク |
東北 | 私立 | 宮城県 | 東北工業大学 | 9位 | 16位 | 7ランク |
東北 | 私立 | 青森県 | 青森大学 | 15位 | 22位 | 7ランク |
東北 | 私立 | 山形県 | 東北文教大学 | 29位 | 36位 | 7ランク |
北関東 | 私立 | 茨城県 | 筑波学院大学 | 5位 | 15位 | 10ランク |
北関東 | 私立 | 茨城県 | 常磐大学 | 10位 | 18位 | 8ランク |
甲信越 | 公立 | 山梨県 | 山梨県立大学 | 10位 | 20位 | 10ランク |
大学種別 | 所在地 | 大学名 | 大学ブランド総合力ランキング | ||
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今回 | 前回 | 順位変動(上昇) | |||
私立 | 東京都 | 駒沢女子大学 | 73位 | 98位 | 25ランク |
私立 | 東京都 | 東京家政学院大学 | 66位 | 90位 | 24ランク |
私立 | 千葉県 | 中央学院大学 | 67位 | 88位 | 21ランク |
大学種別 | 所在地 | 大学名 | 大学ブランド総合力ランキング | ||
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今回 | 前回 | 順位変動(上昇) | |||
国立 | 愛知県 | 愛知教育大学 | 10位 | 17位 | 7ランク |
私立 | 愛知県 | 東海学園大学 | 39位 | 46位 | 7ランク |
私立 | 愛知県 | 愛知学院大学 | 15位 | 21位 | 6ランク |
公立 | 富山県 | 富山県立大学 | 31位 | 37位 | 6ランク |
私立 | 愛知県 | 愛知産業大学 | 36位 | 41位 | 5ランク |
私立 | 石川県 | 金城大学 | 39位 | 44位 | 5ランク |
大学種別 | 所在地 | 大学名 | 大学ブランド総合力ランキング | ||
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今回 | 前回 | 順位変動(上昇) | |||
私立 | 大阪府 | 大阪国際大学 | 42位 | 59位 | 17ランク |
私立 | 兵庫県 | 神戸松蔭女子学院大学 | 35位 | 51位 | 16ランク |
私立 | 兵庫県 | 兵庫大学 | 50位 | 65位 | 15ランク |
大学種別 | 所在地 | 大学名 | 大学ブランド総合力ランキング | ||
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今回 | 前回 | 順位変動(上昇) | |||
公立 | 広島県 | 福山市立大学 | 32位 | 47位 | 15ランク |
私立 | 岡山県 | 倉敷芸術科学大学 | 28位 | 40位 | 12ランク |
公立 | 高知県 | 高知工科大学 | 23位 | 34位 | 11ランク |
公立 | 高知県 | 高知県立大学 | 25位 | 36位 | 11ランク |
私立 | 岡山県 | 就実大学 | 26位 | 37位 | 11ランク |
大学種別 | 所在地 | 大学名 | 大学ブランド総合力ランキング | ||
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今回 | 前回 | 順位変動(上昇) | |||
私立 | 福岡県 | 日本経済大学 | 23位 | 35位 | 12ランク |
国立 | 福岡県 | 福岡教育大学 | 5位 | 15位 | 10ランク |
私立 | 福岡県 | 西日本工業大学 | 26位 | 36位 | 10ランク |
私立 | 長崎県 | 長崎国際大学 | 21位 | 29位 | 8ランク |
私立 | 鹿児島県 | 志學館大学 | 40位 | 48位 | 8ランク |
私立 | 熊本県 | 九州ルーテル学院大学 | 46位 | 54位 | 8ランク |
学部新設が大学ブランド力向上のきっかけに
本調査にノミネートされた457大学のうち、2023年4月に学部を新設(改組)したのは32大学(学科の新設・改組のみは除く)だった。そのうち、大学ブランド総合力スコアが上昇したのは20大学と6割以上でブランド力が向上している。注目したいのは、設置した学部の内容によって、特定の因子スコアに上昇がみられた点にある。
例えば、名古屋市立大学ではデータサイエンス学部を新設したところ、理工系大学でスコアが高い傾向のある「創造力」因子が、前回から6.7pt上昇し59.2ptまで向上した。東京都市大学(デザイン・データ科学部を新設)や神奈川大学(情報学部、化学生命学部を新設)でも同様に「創造力」因子が大きく向上している。他にも、東北学院大学では国際学部、地域総合学部など4学部を新設したところ、「グローバル」因子が4.2pt、「地域貢献」因子が3.6ptそれぞれ上昇した例がある。
学部新設(改組)の際は、情報発信量が増え、大学の教育姿勢や将来ビジョンを訴求することも多く、大学への理解度が高まると考えられる。そのため、学部新設のタイミングを活用し、戦略的な広報・コミュニケーションを展開することで、「新たな大学ブランド・イメージ」の浸透や、既存の「特徴的なブランド・イメージ」の強化なども可能と思われる。多くの大学では学部の新設や改組は稀なことではあるが、大学ブランド力向上の“きっかけ”として最大限活用していただきたい。
本調査では、大学ブランド総合力を算出するためのイメージ項目以外にも、大学の「認知率」や、口コミなどに影響される「入学推薦率」「採用意向率」などロイヤルティに関わる結果を客観的評価にまとめている。大学ブランドの浸透度合いに合わせた戦略的なコミュニケーション活動に、ぜひお役立ていただきたい。
「大学ブランド・イメージ調査2023-2024」調査概要
【東日本編】【首都圏編】【北陸・東海編】【近畿編】【中国・四国編】【九州・沖縄・山口編】
全国の主要大学計457校(医科大学や体育大学、短期大学などは除外)の「大学ブランド総合力」算出を目的としたインターネット調査。
日経BPコンサルティングの提携先調査機関の調査モニターを中心に、同地域に居住し、仕事をしている方(ビジネスパーソン)や、中学生以上の子どもがいる保護者、教育関連従事者に回答を依頼。「地域産業への貢献度」や「研究施設の充実度」、また学生の「語学力」や「コミュニケーション能力の高さ」など大学や学生へのブランド・イメージ36項目を測定。それらから大学ブランド総合力(偏差値)を算出してランキング化した。調査設計や分析にあたり、企業ブランドおよび製品/サービスブランドの調査で実績のある「ブランド・ジャパン」で培ったノウハウを活用。調査するイメージ項目を洗い出した。調査期間は2023年7月19日~8月17日、9地域全体の有効回答者数は約53、000人。2023年11月22日に地域ごとの調査報告書を発行・発売した。
なお今回、調査設計を一部変更した。調査回答者の回答負荷を軽減するとともに、調査結果がよりシャープに反映されることを目的に、イメージ項目を49から36項目へ厳選した。また、北海道編以外の8地域について、一人の調査対象者が評価する大学数を削減し、同じく回答負荷を軽減することで、より精度の高い調査実施を目指した。
(本リリースのURL:https://consult.nikkeibp.co.jp/info/news/2023/1122ubj/)
大学ブランド・デザインセンターのご案内
BDCU(Brand Design Center for Universities)
大学ブランド・デザインセンター(BDCU)では、大学ブランディング支援の実績が豊富なコンサルタントが、計画的で体系だった大学の全学広報、ブランドづくり、魅力度の向上をサポートします。当社の強みであるブランドコンサルティング力、編集・制作力、情報発信力を最大限に発揮し、大学の「(認知を)ひろげる」「(個性で)とがる」「(ステークホルダーを)よろこばす」という3つのステップを総合的に支援します。
日経BPコンサルティング
日経BP全額出資の「調査・コンサルティング」、「企画・編集」、「制作」など、コンサルティング、コンテンツ関連のマーケティング・ソリューション提供企業。(2002年3月1日設立。資本金9000万円)