「ブランドを科学するシリーズ – 定量的ブランド力評価調査結果と、ソーシャル・リスニングからの感性データ分析結果のデータマッチング」共同研究を開始

株式会社日経BPコンサルティング

2020年7月1日

株式会社日経BPコンサルティング(東京都港区)は、富士通株式会社(東京都港区)と、定量的ブランド力評価調査結果と、ソーシャル・リスニングからの感性データ分析結果をマッチングする共同研究を開始した。

共同研究の背景

企業のブランディング担当者は、自社の継続的なブランド力向上のため、定期的なブランド調査を実施・分析するが、無形資産である企業ブランドの力の変化がどのようなファクトに起因しているのか、追えない場合も多い。どのようなファクトが、どのように消費者に響いたのか、分かりづらいことがある。今回、そのような課題に対応すべく、長らくブランド評価サービスを提供している日経BPコンサルティングは、ソーシャル・リスニングからの感性データ分析を進める富士通と共同研究を開始した。

日経BPコンサルティングが実施・運営する日本最大規模のブランド力評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」の調査結果に対して、富士通が収集するソーシャル・リスニング情報を基に、独自に感性データ分析したものを掛け合わせ、ブランド力の変化を、定量的・定性的の双方で、分析できるようにするための共同研究である。

研究の目的

ブランド・ジャパンの評価結果の要因を、ソーシャル・リスニング情報の感性データ分析から探る。

日経BPコンサルティングの「ブランド・ジャパン」とは

「ブランド・ジャパン」は企業、商品・サービスのべ1,500ブランドを、6万人以上の一般生活者とビジネス・パーソンが評価する日本最大規模のブランド価値評価プロジェクト。今年で20年目を迎える。ブランド理論の第一人者らが開発した客観指標を用い、毎年秋にブランド評価を行っている。ブランド・ジャパンの特徴は、一般生活者、ビジネス・パーソンの両面から共分散構造分析(SEM)を使ったブランド評価手法を採用している点。一般生活者編では4つ、ビジネス・パーソン編では5つの潜在変数を伴う仮説を立てた独自の解析手法を用いる。これにより、時系列でブランドの成長と変化を具体的な数値で確認できるのと同時に、ブランド総合力・各潜在変数のスコア、各イメージの得票率を比較することで、そのブランドの性格、長所や短所をつかむことができる。
(詳細)ブランド・ジャパン

今回の研究では一般生活者編の結果を用いる。マッチングで使用するデータは、調査対象となった1000ブランドごとに聴取したアンケート調査項目にあたるブランドイメージ項目16(親しみを感じる、時代を切りひらいている、品質が優れているなど)の得票率(%)である。

富士通のソーシャル・リスニングの感性データ分析とは

SNSなどのソーシャルメディアから収集したテキスト文章を分析し、そこから感性データを抽出する技術。感性データとは、感情をはじめ、感情の発生要因となるテキストの書き手の価値観、欲求、感情の向く対象、また、感情が発生する瞬間・モーメントのこととしている。

従来のソーシャル・リスニングにおけるテキスト感性データ分析技術は、文章からの単語の抽出・キーワード化や、テキストの持つネガティブ・ポジティブ感などが、それぞれ単一要素として取得可能であった。しかし、単語・キーワードと、書かれた時のテキストの書き手の重層的な感情との関係性など、複眼的に捉えることができなかった。そのため、表層的な感情の可視化にとどまり、使いづらい側面があった。

今回採用する感性データ分析では、それが可能となる。感性データを構造的に捉えることで、いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、にテキストを分解し、特定することが可能となる。ソーシャル上の感性を構造的に把握することで、新たなブランディング施策の立案や、消費者のニーズの発見などに利用できる可能性がある。

分析アプローチ

共同研究では、大きく2種のデータ群を扱う。企業ブランド力は、定量的ブランド評価調査「ブランド・ジャパン」の結果を用いる。具体的には、調査対象1,000ブランド(企業や商品など)のブランド力にまつわる様々な数値データである。もう一方は、SNSなどのソーシャルメディアから収集したテキストを、富士通独自のクレンジング技術を経て、文書解析・感性データ分析をした結果である。

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「ブランド・ジャパン」は、調査回答者総数が6万人を超える、極めて規模の大きな定量調査である。1ブランドあたり、700人から800人の調査回答者が存在する。調査では、調査回答者は、任意の「企業(ブランド)1」に対して、設定された16のブランド・イメージ(好き、親しみがあるなど)に関し、そう思うか、思わないかを判断する。よって、「企業(ブランド)1」に対し、「そう思う」と回答した16の得票率(%)が存在し、それが対象ブランド分データ化される。対象ブランド数は1,000で、これを業種ごとにまとめると53となる。また16の項目は4つの潜在変数(フレンドリー、コンビニエントなど)に束ねられる。

一方、SNS上で書き込まれたテキストは、分解、解析したあと、感性データ分析を経て、感性データ分析で定義した「感情」「価値観」「価値基準」「欲求」に分類する。例えば、「感情」は、テキストを書き込んだ際の書き手の感情を8つ(喜び、信頼、恐れなど)に分類している。この作業を、ブランド・ジャパンで対象となった1,000ブランドについて行い、さらにブランド・ジャパンで規定している53の業種ごとにデータをまとめる。結果、ブランド・ジャパンと感性データ分析、それぞれの対象ブランド・業種設定が同じになる。

定量的ブランド調査結果である「ブランド・ジャパン」の数値データと、SNS上の書き込みテキストを感性データ分析後、その定義に合わせて数値化したデータという、2つの異なる環境下で収集・解析したデータをマッチング・相関関係を分析することで、定量的調査結果の要因を、世の中で発信されたテキストの中から探索することが、この研究の目的である。さらに、そこに規則性があれば、感性データ分析から、次回の定量的ブランド調査の結果予測ができるのではと考えた。

共同研究の具体的事例~「自動車ブランド業種における、2種データマッチングの結果」

本リリース制作時にはすでに研究は進められており、今回その結果の一部を下記の通り示したい。

ブランド・ジャパンが規定する53の業種から、今回の事例では、自動車業種に着目する。この業種でブランド・ジャパンの対象となっている、トヨタ自動車、本田技研工業、スバル、マツダ、レクサス、メルセデス・ベンツ、テスラの7ブランドを分析対象とした。「ブランド・ジャパン2019(一般生活者編)」では、それぞれのブランドの16のイメージ項目データ(%)を、また感性データ分析では、ハッシュタグ「#ブランド名」でSNSに投稿されたコメント(期間:2017/12~2019/11)から無作為に抽出した1ブランド当たり、4,000件を使用する。ブランド・ジャパンの結果と、感性データ分析の結果の相関関係を明らかにしたうえで、自動車ブランド業種における特徴をあぶりだす。

ブランド・ジャパンと感性データ分析結果の2種類のデータの相関係数を取った結果が下記である。相関の強さは凡例にある通りである。

ブランド力の向上に、何をすれば一番効果的なのかは、ブランドの置かれているポジションによって、千差万別であろう。しかし、基本的には、その業種全体で強いとされているイメージの醸成と、その業種全体では特に目立たない、いわば業種の持つ弱みにあたる部分でのイメージ醸成の双方の視点を持ちブランド戦略を企画・推進することが良い。業種の持つさがとしてまつわるイメージを醸成しつつ、他社にはない差別性・個性を生むことで、ブランドを強くするという考え方だ。少なくとも前者は、その業種の属するすべてのブランド共通の課題となり、フィギュアスケートでいうところの、求められる必須要素技術を試されるショートプログラムである。本件における正の相関の強さは、まさに業界全体で共通して求められる項目のあぶり出しに使える。

例えば、感性分析データにおける「信頼」と、ブランド・ジャパンの「ステータスが高い」「かっこいい、スタイリッシュ」との間には、強い正の相関関係が認められる。「信頼」にまつわるSNS上のテキストには、「今保有している車は、世界中の悪路を走り続ける大ヒットモデルだ」「今10数年乗っている車は、死んでも手放さない」などがあった。こういった書き込みをしたくなるほどの信頼度の醸成が、この2つのイメージ項目スコア、さらに、これらをグルーピングする「アウトスタンディング(卓越性)」のスコアを押し上げる可能性がある。ステータスやかっこいいという言葉は、このような車の堅牢さや長年乗り続けることでの愛着などと関連があることがわかる。SNS上でこのようなテキストが増えれば、次回のブランド・ジャパンにおいて、この2つのイメージ項目スコア、また、これらをグルーピングする「アウトスタンディング(卓越性)」のスコアが上昇する可能性があるといえる。さらに、この「信頼」に対して、「品質」「他にはない魅力」「際立った個性」などとも正の相関がある。信頼コメントが増えれば、これらのイメージ項目も上昇する可能性がある。

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以上のように、ブランド力に変化を与える視点、側面が何かを探索するにあたり、2種のデータのマッチングが効果的であることを示すことができた。これは、ブランドスコアの分析をより多面的にし、現状評価を付加価値化するとともに、今後のブランドスコアの予測も可能にするものであると考えている。

日経BPコンサルティングでは、今後も企業のブランディング啓発・推進の一助となるべく、ブランド評価、またマッチング精度の向上を続けながら、ブランド研究にまつわるより付加価値の高いデータを「ブランドを科学するシリーズ」として提供していく。またさらに新たなサービスローンチに向けて、研究を継続する。

日経BPコンサルティング:日経BP全額出資の「調査・コンサルティング」「企画・編集」「制作」など、コンサルティング、コンテンツ関連のマーケティング・ソリューション提供企業。(2002年3月1日設立。資本金9000万円)

このリリースに関するお問い合わせ

株式会社 日経BPコンサルティング ブランド本部 吉田 健一
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