ユーザーは「クラウドに強い」ベンダーを選び、従来型ベンダーは存在を問われる
―2020年のICTの在り方に関する調査―

2014年08月21日

日経BPコンサルティング(東京都港区)は、2020年にかけた企業ICTの利用トレンドと在り方を探るため、システム部門や経営・利用部門の勤務者を対象としたユーザー調査を7月に実施した(調査概要は下部参照)。

調査からは、企業情報システムが機器の所有からサービス利用に移り変わり、クラウドやモバイル利用が更に進展していく様子が伺えた。ICTベンダー企業は過去の利用実績よりも、いかにクラウドに強いかで選ばれるようになる。2020年に活躍しているICTベンダー企業は、アマゾンやグーグルなどを含む外資系企業が上位を独占。従来からのICTベンダーの多くはユーザー企業から発注額が減る危険性が浮かび上がった。以下で主要な結果を紹介する。

外部利用、モバイル活用、クラウド化が進む

企業のシステム担当者等に2020年のICT利用と情報システムの在り方を自由記述で尋ねた。回答内容を整理したところ、「外部委託、外部サービスの利用」「モバイル活用」「クラウド化」の3要素が上位に挙がった(図1)。

ICTの利用状況や今後の利用意向からも、クラウドやモバイル関連に対する関心が引き続き見られた(図2)。クラウドでは、今後はプライベートよりもパブリックの利用意向がやや高い。モバイルでスマートフォン以上にタブレットの利用意向が高く、私物デバイス活用(BYOD)も現在の実施率の倍以上、意向があることが分かった。

過去の利用実績より、コストパフォーマンスやコンサル能力でベンダーを選んでいく

ICTベンダー企業を選ぶ際の重視点も変わりつつある。これまでは「自社での利用実績」が50%超と最多の重視点だった(図3)。今後は、「コストパフォーマンスが高い」がトップである。加えて、コンサンルティング能力、顧客指向、先進利用事例の提案などが、これまでより重視される。

上記とは別に、ICTのどのような分野に強いことを重視するかどうかも尋ねた。これまでの最多は「サーバーなどのハードウエア」の48.0%(図4)。ただし今後は25.9%に減少する。今後大きく伸びるのがクラウド。これまでの12.9%から、今後は3倍以上の39.0%である。「セキュリティ」はこれまでの46.3%から今後は57.4%と引き続き重視される。

2020年に活躍するICTベンダーは「クラウドに強い」

ICTベンダーがクラウドで選ばれる傾向が強まることは、2020年に活躍していると思うICTベンダーの特徴を尋ねた結果からも伺えた。自由記述内容を整理したところ「クラウドに強い」が2番目以下を大きく引き離してトップだった(図5)。次いで、「グローバル性」と「総合力」が並んだ。その他、「顧客指向」「革新性、先進性」「ビッグデータ活用」なども挙がった。

併せて活躍企業の具体名を記述してもらったところ、IBMとアマゾンがトップを争う結果になった(図6)。以下、グーグル、マイクロソフトと続き海外勢が上位を独占した。ユーザー企業は次の時代を切り開くICTベンダーとして海外企業を想定している。

ICTの分野別に強いと思うベンダー企業を尋ねた結果からも、すでにその兆候は現れている。企業システムのクラウド化は、トップのIBM、2位の富士通に次いでアマゾンが3位にランクインした(図7)。

大手ICTベンダーの多くは発注額が減少傾向

今回の調査では、現在利用しているICTベンダーに対する評価や認識も尋ねた。その中で興味深かったのが、2020年度の発注額の増減見通しである。図8に利用者が多かった6ベンダーの結果を示した。増減意識をスコア化した数値を見ると、日本マイクロソフトを除く5社がマイナス、つまり減少傾向にあることが分かった。2020年に活躍する企業でトップになった日本IBMも、現利用者からは発注額が減る可能性を示されている。今回調査票に提示した企業は従来からのICTベンダー中心だったが、その多くがマイナス傾向にあった。ベンダー選定時の重視点に関する結果でも浮かび上がっていたが、既存ベンダーとの関係性を見直したいユーザー企業が多いと見られる。

(松井一郎=日経BPコンサルティング テクノロジーインダストリー部長)

図1 2020年のICT利用や情報システムの在り方
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図2 企業等におけるICTの利用状況と今後の意向
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図3 ICTベンダーの選定時重視点(全般的特性)
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図4 ICTベンダーの選定時重視点(強い要素や分野)
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図5 2020年に活躍している「企業情報システムの支援ベンダー」の特徴
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図6 2020年に活躍している「企業情報システムの支援ベンダー」の企業名
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図7 ICT分野別の強いと思うベンダー企業
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図8 利用ICT企業に対する2020年度の発注額増減見通し(対2014年度比)
図8■利用ICT企業に対する2020年度の発注額増減見通し(対2014年度比) クリックで拡大

調査概要と回答者プロフィール

調査概要
  • 調査目的:
    企業情報システムの方向性と利用トレンドを明らかにする。
    ICTベンダー企業に対するユーザーの意識や期待感を把握する。
  • 調査手法:
    Webアンケート
  • 調査対象:
    企業等の情報システム部門、経営系部門、利用部門の勤務者(経営、利用部門は役職者に限定)。日経BPコンサルティングの調査モニターを利用。
  • 主な調査項目:
    ICTの利用状況と今後の意向、 ICT投資の増減、情報システムに関するスタンスと今後の動き、2020年のICT利用や情報システムの在り方、クラウド・ビッグデータ・モバイル・ソーシャルメディアの利用状況と課題、 ICTベンダーの選定時重視点、 強いベンダーの純粋想起、2020年に活躍しているベンダー、ICTベンダーの利用状況・イメージ・満足度・お薦め度・発注額の増減見通し、など。
  • 調査期間:
    2014年7月17日~23日
  • 有効回収数:
    877件
  • 調査企画・実施:
    日経BPコンサルティング
回答者の所属部署
回答者の所属部署
企業規模
企業規模

このリリースに関するお問い合わせ

株式会社 日経BPコンサルティング
テクノロジーインダストリー部長 松井 一郎
03-6811-8304
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