進む中堅中小企業のIT化、BCP対策やセキュリティー管理など潜在リスクの解決が急務
―中堅中小企業のIT利用・活用調査―
2012年01月23日
日経BPコンサルティング(東京都港区、戸田雅博社長)はこのほど、中堅中小企業におけるITの利用・活用状況を把握するために「中堅中小企業のIT利活用調査」の結果をまとめた。調査対象者は、従業員300人未満の国内企業、団体に勤務する役職者327人から回答を得た。
今回の調査を通じて、パソコン、電話・通信回線、複合機といったIT機器の利用が中堅中小企業に浸透している一方、導入したITを有効活用できていないケースが多いことが分かった。
とりわけ、セキュリティーや災害時運用への対策の必要性を認識しながらも、有効な対策を講じることなくリスクを抱えながらIT機器や業務システムを運用している中堅中小企業が多く、自社要員中心のIT運用管理体制に限界があることが、その背景にあることも明らかになった。調査結果の主要なポイントについて以下に記載する。
本調査から明らかになった主要なポイント
中堅中小企業で進むIT化
中堅中小企業において会計業務や売り上げの集計を中心としてIT対応が順調に進んだ(図1)。
- IT化の比率が最も高いのは会計業務で69.4%、2位は売り上げ集計業務の59.3%だった。
- 今後IT導入が進むのは、「お客様情報の管理」「営業・販売支援・マーケティング」「従業員の勤怠管理」といった業務で、それぞれ1割を超える企業が今後IT化を検討している。
中堅中小企業に光回線が普及、拠点間通信用途にVPNも浸透
光回線を利用している企業は既に77%だった。事業者や店舗などの拠点間連携向けに用いている通信サービスをひとつだけ尋ねたところ、IP-VPNやインターネットVPNと45.7%が回答(図2)。中堅中小企業の主力回線にVPN技術を用いたセキュリティーに強いネットワーク・サービスが求められる傾向も明らかになった。
- 事業所や店舗など複数事業拠点の連絡手段として電子メールを利用するとした回答は89.5%にのぼり、過半数において拠点間で共用ファイルサーバーを運用していることも分かった。
IT普及の裏で課題も山積
順調にIT導入が進むのと同時に、ITを利用・活用する上で各種の課題に悩まされる中堅中小企業の実態も浮かび上がった。
調査ではITを利用・活用する上での課題30項目を、「事実の有無」「改善ニーズの有無」「改善対策の実施状況」に分けて、それぞれ6段階評価で尋ねた。課題30項目は7つの中項目に分類し(※1)、ポートフォリオとしてまとめた(※2)。
※1「その他」とした中項目は図中に表記していない
※2 スコア化に当たっては、6段階評価の最も低いスコアを1点、最も高いスコアを6点として加重平均を求めた
- 6つの中分類の中で「事実がある」に関するスコアが最も高かったのは、「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)、リスク管理、セキュリティー」、次いで「コスト、省電力、省力化」、3位が「拠点間連携」だった。
- 一方「改善ニーズ」スコアでは6項目すべてが3(スコア中間値)を上回る結果が得られた。
- 「改善ニーズ」の場合、とりわけ「システム化・自動化」のスコアが高い傾向があり、「BCP、リスク管理、セキュリティー」がこれに続いた。これら2つの課題は多くの中堅中小企業において改善を求められているといえるだろう。
中堅中小企業では自社で抱える多くの課題に対して改善の必要性を感じている。しかし、実際に改善に着手できている企業は少数である。
図4は、ITを利用・活用する上での課題30項目それぞれについて改善のニーズがあるとした回答者を抽出して、改善対策の実施状況をとりまとめた結果である。30項目の全体平均で67.6%が改善や見直しの対策をとっておらず、多くの課題がリスクとして多くの企業に内在している。
・改善、見直しの実施率が最も低く、対応に遅れが見られる課題は「災害時のPC、FAX ・複合機、通信回線の保全が不安、対策が分からない」で79.3%を占めた。2位は「話題のクラウドコンピューティングを仕事に活用したいが方法や相談先が分からない」、3位は「職場内でPCや通信回線に詳しい人材を育てたいが方法や相談先が分からない」という結果が得られている。課題解決に向けてサポートやアドバイザーを社内外に求める中堅中小企業の実態が見え隠れする。こうしたサポートやアドバイザーへのニーズが背景となり、5位に「仕事の効率化や自動化に興味があるが、方法や相談先が分からない」がランクインしたと考えられる。
IT管理者に過重な負担
前出のように、中堅中小企業において各種アドバイザーを求める声は強く、IT機器を製造、販売する事業者やサポート・ベンダーからの提案を常に待っていると考えられる。その背景としてITの運用管理者の作業負担が日常的に重く、その結果として社内の従業員に対するサポートが手薄になった可能性が強い。
改善の必要性を横軸に、改善の有無を縦軸に配したポートフォリオに、アウトソーシングに関連深い課題をマッピングしところ、「職場内でPCや通信回線に詳しい人材を育てたいが方法や相談先が分からない」はポートフォリオの右下に位置する。改善ニーズが高いのに実施できていない項目の筆頭となっており、職場内におけるIT運用管理要員の不足感を示唆していると解釈できる。
- 事業所や職場の勤務者がPCや業務ソフトなどの利用方法に困った時、どのような体制をとっているかを別の設問で尋ねたところ、52.6%の回答者が「専門の問い合わせ窓口は設けていない。近くにいる同僚に聞くなど勤務者間で自己解決している」と回答した。IT運用管理者が多忙な中で、突発的なトラブルシューティングなどに迅速に対応できない可能性も浮上した。
- 障害からの復旧に対して「特に対策を取っていない」とする企業も全体で39.4%あり、災害など不測の事態の際にIT管理者の作業許容量をオーバーする危険性を秘めている。
- ネットワーク、セキュリティーに関連する課題を対象に作成したポートフォリオでは、「災害時のPC、FAX ・複合機、通信回線の保全が不安、対策が分からない」が中堅中小企業における改善ポイントとしてクローズアップされた。
(三田 政志=日経BPコンサルティング シニア・コンサルタント)
このリリースに関するお問い合わせ
- 調査概要
- 調査名称「中堅中小企業のIT利活用調査」
- 調査目的:中堅中小企業におけるIT機器の利用・活用の実態を調査する
- 調査対象:従業員300人未満の企業、団体に勤務する課長以上の有職者1000人
- 調査期間:2011年11月
- 調査方法:Webアンケート調査
- 回収数:有効回答数:327
株式会社 日経BPコンサルティングについて
日経BP社全額出資の「調査・コンサルティング」「企画・編集」「制作」など、コンサルティング、コンテンツ関連のマーケティング・ソリューション提供企業。
全調査結果
※「改善の必要がある」「少し、改善の必要がある」「どちらかというと、改善の必要がある」のいずれかを選んだ回答者
※「改善の必要がある」「少し、改善の必要がある」「どちらかというと、改善の必要がある」のいずれかを選んだ回答者
※「改善の必要がある」「少し、改善の必要がある」「どちらかというと、改善の必要がある」のいずれかを選んだ回答者
※「改善の必要がある」「少し、改善の必要がある」「どちらかというと、改善の必要がある」のいずれかを選んだ回答者
※「改善の必要がある」「少し、改善の必要がある」「どちらかというと、改善の必要がある」のいずれかを選んだ回答者
※「改善の必要がある」「少し、改善の必要がある」「どちらかというと、改善の必要がある」のいずれかを選んだ回答者
※「改善の必要がある」「少し、改善の必要がある」「どちらかというと、改善の必要がある」のいずれかを選んだ回答者
(三田 政志=日経BPコンサルティング シニア・コンサルタント)
このリリースに関するお問い合わせ
- 調査概要
- 調査名称「中堅中小企業のIT利活用調査」
- 調査目的:中堅中小企業におけるIT機器の利用・活用の実態を調査する
- 調査対象:従業員300人未満の企業、団体に勤務する課長以上の有職者1000人
- 調査期間:2011年11月
- 調査方法:Webアンケート調査
- 回収数:有効回答数:327
株式会社 日経BPコンサルティングについて
日経BP社全額出資の「調査・コンサルティング」「企画・編集」「制作」など、コンサルティング、コンテンツ関連のマーケティング・ソリューション提供企業。