飲食店の6割が「厨房の湿度・温度の調整がうまくできない」悩みを抱える
―「厨房に関するアンケート」(2011年1月実施)より―

2011年01月25日

日経BPコンサルティング(東京都港区)は、飲食店経営者および勤務者に対して、厨房機器・設備選択時の情報収集方法や、厨房における課題などを尋ねるアンケートを実施し、職場環境としての厨房の実態と共に、電化厨房の認知状況、導入意向などを明らかにした。

厨房機器・設備を選ぶ際の情報源

厨房機器・設備選択時に参考にする「メディア」としては「レストラン業界専門雑誌」「展示会・セミナー」が5割前後でトップに並んだ。これに「飲食店業向けのWebサイト」(41.7%)が続き、専門メディアを参考にしている実態が明らかになった。一方、「人」の場合は「厨房メーカーの営業担当者」が66.3%、「同業者」が44.3%という結果に。口コミ情報も重要な位置づけにあるようだ(グラフ1)。

新規開店時の厨房設備の資金調達や熱源などについて

新規開店時の厨房設備については「新品を購入」との回答が約5割を占め、「リース」は17.5%、「中古を購入」は11.6%である。「新品を購入」のうち、「一部借入金」が59%を占め、残りの41%が「すべて自己資金」という分布となった(グラフ2)。

新規開店時の厨房の熱源を尋ねたところ「ガスのみ」が74.1%と突出。「電気のみ」は11.7%、「炭のみ」は4.2%と、1割以下という結果になった(グラフ3)。

厨房における課題

次に、厨房を評価する項目として、「厨房面積」「温度・湿度の調整」「水道費、光熱費」「衛生面」「加熱機器のラインナップ」の5つを取り上げ、それぞれに対する評価を4段階で尋ねた(グラフ4)。

「衛生面」「水道費、光熱費」に関しては、現状を肯定する層が7割前後を占め、現状に対する評価が高い。反対に、「湿度・温度の調整はうまくできない」という否定的回答が59.5%にのぼり、過半数の飲食店経営者・勤務者が抱える課題であることが明らかになった。さらに、「オーナーシェフ」、「シェフ」、「料理スタッフ」に限定してみると、「湿度・温度の調整がうまくできない」との回答は65.8%に達し、厨房で調理をする人ほど、「湿度・温度の調整」の難しさを切実に感じている。また、回答者全体の4割弱が「厨房面積が狭い」、「加熱機器のラインナップが不足している」と感じており、「温度・湿度」に続く課題といってよいようだ。

回答者から複数寄せられた自由意見には、「動線が効率的ではない」「換気や排気がよくない」「フライヤー等の掃除がしにくい」などがある。同時に、「温度の高さ」に関連して、夏場の室内温度の上昇、夏の食材の品質管理や食中毒、オープンキッチンの熱や臭いが客席に流れる点などについて課題として感じているとの声もある。

電化厨房認知度

一般家庭では、オール電化キッチン、IHクッキングヒーターの普及が進みつつあるが、飲食店ではどうであろうか。現時点での電化厨房導入状況や認知度、その評価などを尋ねた。

「オール電化」導入率は全体の4.5%。「一部電化」も含めると、全体の約1/4を占める。これに「どのような特徴、機器があるか詳しく知っている」「概要は知っている」との回答を合わせると、回答者の約3/4が「電化厨房」を実際に導入していたり、どういうものであるかを理解していることがわかった(グラフ5)。

電化厨房に対する満足度(オール電化または一部電化導入者対象設問)をみると、「非常に満足」が約2割。「まあ満足」を合わせた「満足層」は8割強を占める(グラフ6)。「満足層」からは、「光熱費を抑えられる」など、コスト抑制効果を評価する意見が寄せられた。「温度が上がらない」「掃除しやすい」「客席からの見た目がよい」などの声も見られる。

電化厨房導入意向

電化厨房認知者(全く知らない人を除く)における、電化厨房の導入意向率(「ぜひ、導入したい」+「できれば導入したい」)は31.2%。これに対して、「関心があるが導入できないと思う」が45.3%、「導入したいと思わない」が13.8%(グラフ7)。

導入意向層は、「調理スタッフの負荷を軽減したい」「労働環境を改善したい」などを、導入したい理由として挙げている。

一方、「導入できないと思う」「導入したいとは思わない」「わからない」と回答した理由の上位には、「導入するための予算がない」「機器の価格が高い」「ガス厨房と比べてのメリットがわからない」「実際に使ったことがないから、どういうものがわからない」などが挙がった(グラフ8)。「コストをかけたくない」と「電化厨房がどういうものかわからない」という2つのポイントが電化厨房導入における障害となっていると言ってよいだろう。また、オーナーシェフや調理スタッフが「ガスを使って調理したい」という希望を持っているため「導入したいと思わない」という声もあった。

電化厨房とガス厨房との比較評価

最後に、ガス厨房と比べて、電化厨房はどこが優れていると思うか、または劣っていると思うかを尋ねたところ、「掃除のしやすさ」「環境性」「省スペース」における電化厨房の評価が高かった(グラフ9)。 一方で、「加熱機器の価格」については、ガス厨房と比較して「劣っている」と考える回答者が65.1%にのぼり、電化厨房の加熱機器は価格が高いと感じている人が多いようだ。

回答者属性

●仕事内容(単一回答)
仕事内容(単一回答)

●店舗数(国内)(単一回答)
店舗数(国内)(単一回答)

●中核店、経営・所属する店の席数(単一回答)
中核店、経営・所属する店の席数(単一回答)

●中核店、経営・所属する店の業態(単一回答)
中核店、経営・所属する店の業態(単一回答)

調査概要

  • 調査名
    「厨房に関するアンケート」
  • 調査目的
    飲食店経営者や勤務者の、厨房機器・設備や厨房環境に対する意識や課題を調べる。同時に、飲食店経営者・勤務者電化厨房の認知や理解、導入意向などを把握する。
  • 調査対象
    日経レストラン読者、日経レストランONLINE読者、日経ビジネスオンライン読者、日経BPコンサルティング調査モニターのうち、飲食店経営者・勤務者
  • 調査方法
    Web調査 … Webサイト上にアンケート・ページを提示し、電子メールで告知して回答を募集。
  • 調査実施期間
    2010年12月24日(金)~2011年1月10日(火)
  • 有効回答数
    309件
  • 調査実施機関
    日経BPコンサルティング
グラフ1 「厨房機器・設備を選ぶ際に参考にする情報源」(複数回答:5つまで選択)
グラフ1 「厨房機器・設備を選ぶ際に参考にする情報源」(複数回答:5つまで選択)クリックで拡大
グラフ2 新規開店時の厨房設備の資金準備方法(単一回答)
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グラフ3 新規開店時に採用した厨房設備の熱源(各単一回答)
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グラフ4 厨房に対する評価(各単一回答)
グラフ4 厨房に対する評価(各単一回答)クリックで拡大
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グラフ5 電化厨房導入・認知状況(単一回答)
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グラフ6 電化厨房満足度(単一回答) ※導入済みベース:一部電化を含む
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グラフ7 電化厨房導入意向(単一回答) ※電化厨房 認知者ベース
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グラフ8 電化厨房を「導入できないと思う」「導入したいと思わない」「わからない」と回答した理由(複数回答)
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グラフ9 ガス厨房と比較した場合の電化厨房の評価(各単一回答)
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