マイクロソフトが北京・上海とも第1位に。日系企業は北京でソニーが、上海でキヤノンが首位
―E34中国市場における初のブランド総合評価調査「ブランド・チャイナ2011」―
2010年12月15日
株式会社日経BPコンサルティング(東京都港区、高橋銀次郎社長)は、中国市場における初のブランド総合評価調査「ブランド・チャイナ2011」の結果をまとめ、本日(2010年12月15日)調査結果報告書を発行・発売した。
本調査は、北京および上海在住のビジネス・パーソン約2万人を対象に企業ブランド力を測定するもので、北京と上海、それぞれの結果を収録している。北京では中国内資企業の強さが目立ったのに対し、上海では外資系企業が強さを発揮し、中国の二大消費地である北京、上海の嗜好の違いが浮かび上がった。
日系企業ランキングでは、北京でソニーが、上海でキヤノンが首位となった(表1)。全体における総合順位ではそれぞれ第54位、第34位と振るわなかったが、「品質・技術が優れている」項目においては、ソニーが北京で第4位、キヤノンが上海で第9位と高い評価を受けた。また、「この企業から学びたい」項目では富士通が北京で第7位、パナソニックが上海で第10位となった。さらに、「環境に配慮している」項目では、塗料メーカーの日本ペイントが北京と上海の両方で第1位を獲得した。一方、北京におけるトヨタの評価がマツダやホンダより低いなどの特徴が見られたほか、全般に、日系企業は「ビジョンがある」「従業員を大切にしている」「正直である」項目の評価が低い傾向にある。ブランド・チャイナは中国に進出した日系企業の強みや弱点、課題を示し、中国マーケットで成功を収めるためのブランド戦略構築に役立つデータを提供している。
本プロジェクトは、2010年に10周年を迎えた日本最大のブランド評価調査プロジェクト「ブランド・ジャパン」のノウハウを活用し、国際展開する初の試み。今回の調査は北京、上海を対象地域としたが、次回以降はほかの地域にも広げ、毎年継続して実施する予定。また、これを契機に中国本土における調査・コンサルティング事業を本格的に展開していく考えだ。
日系企業:北京編ではソニーが首位、上海編ではキヤノンが首位
日系企業ランキングでみると、北京編ではソニーが「ブランド総合力」首位となった。高い技術力はさることながら斬新なデザインも評判となり、「ブランド総合力」を構成する5つの因子のうち、「先見力」因子のランキングで高い得点となった。上海編で「ブランド総合力」首位となったキヤノンも、同じく「先見力」因子の得点が高い。ソニーとキヤノンはデジタルカメラ分野において時代をリードする高い専門性が評価されているようだ。
自動車メーカーは北京と上海で評価が分かれた。特に日本ではブランド力が非常に高いトヨタ自動車が北京ではそれほど高くない。2010年になって大規模なリコール事件が起こり、トヨタブランドに対する中国国民の不信感が広がったことが影響しているとみられる。一方、塗料メーカーの日本ペイントが中国では高い評価を受けた。「環境に配慮している」要素のランキングで、北京と上海の両方で第1位となった。
日系企業は、「この企業から学びたい」、「品質、技術が優れている」の評価が高い一方で、「ビジョンがある」、「従業員を大切にしている」、「正直である」などにおいては評価されていないという実態が明らかになった。これは、日系企業が中国市場で受け入れられるためには、避けては通ることのできない大きな課題の一つといってよいだろう。
北京編:マイクロソフトが「ブランド総合力」首位、「先見力」と「人材力」因子の高い評価が起因
北京編は、「ブランド総合力」82.6ポイントを獲得したマイクロソフトが、首位となった(表2)。「ブランド総合力」を構成する5因子のうち、「先見力」と「人材力」において高い評価を受けたことが影響した。これらの因子を構成する個別評価項目のランキングをみると、マイクロソフトは、北京在住のビジネス・パーソンの中で、「グローバルである」「成功している」「時代を切りひらいている」「経営者に魅力がある」「従業員を大切にしている」「チャレンジ精神がある」などにおいて上位に入った。
「ブランド総合力」の第2位は総合家電メーカーのハイアール(Haier)である。「ブランド総合力」を構成する5因子のランキングを見ると、ハイアールは「信用力」と「親和力」において高い評価を受けたことが分かる。第3位はパソコンメーカーのレノボ(Lenovo)。同社は2005年にIBMのパソコン事業を買収し、世界3位のパソコンメーカーとなった。両社とも中国内資系企業でありながら、グローバル展開にも力をいれており、まさに“今の中国”を代表する企業ブランドである。
第5位は日本ではあまりなじみのないリーニン(LI-NING)。リーニンは中国の元体操選手が引退後に実業家に転身し、自らの名を冠したスポーツ用品メーカーのブランドである。現役時代は「体操王子」として親しまれ、創業後も努力とまじめさが中国国民に評価された。リーニンブランドは「ビジョンがある」要素で第1位となり、「ブランド総合力」ポイントを伸ばした。
また、10位以内にランクインしたブランドをみると、IBM、アップル、バイドゥ(baidu.com)などIT関連のブランドと並んで、清華大学やハーバード大学のような大学ブランドが登場。ブランド・ジャパンには見られない、ブランド・チャイナならではの大きな特徴の1つだ。中国で千年以上続いていた科挙(官僚登用試験)制度の影響もあり、教育や人材育成を重視する傾向が強いようだ。
上海編:マイクロソフトが「ブランド総合力」首位、海外ブランドが優勢に
上海編は、「ブランド総合力」87.2ポイントを獲得したマイクロソフトが、北京編同様首位となった(表3)。
「先見力」と「人材力」の評価が高く、「グローバルである」「成功している」「経営者に魅力がある」「従業員を大切にしている」「チャレンジ精神がある」などのイメージが強い点は北京編と共通している。
「ブランド総合力」の第2位から第5位には、インテル、アップル、IBM、ノキアが並び、北京に比べ上海では海外ブランドが強いことが表れている。北京編では中国内資系企業のハイアールが「信用力」ランキングのトップとなったが、上海編ではフィンランド発の携帯電話端末メーカーのノキアが「信用力」の第1位となった。多くの回答者が「信頼している」「品質がよい」「長年使用している」などのコメントを寄せている。
ほかに上海の特徴として、アリババグループが運営するECサイト、タオバオ(taobao.com)が第7位にランクインしたことが挙げられる。タオバオは中国語で“宝探し”の意味を持ち、親しみやすい社名として認知され、「認知度」スコアでは91.9ポイントの高い得点を獲得した。
(銭愛麗=日経BPコンサルティング ブランド・チャイナ プロジェクト・マネージャー)
ブランド・チャイナ:中国国内で使用されている500企業のブランドを北京と上海在住のビジネス・パーソンが評価する、中国での初のブランド評価調査プロジェクト。調査は、すでに10年の実績のある「ブランド・ジャパン」の評価フレームを用い、認知度のほか、25項目の要素を聞いた。そこから、先見力、人材力、信用力、親和力、活力の5因子、さらに総合力を算出し、ブランドを評価している。今回の調査は、2010年9月から10月にかけて実施し、21,000件の有効回答を得た。2010年12月5日に調査報告書を発行。
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株式会社 日経BPコンサルティング ブランド・コンサルティング部 コンサルタント
ブランド・チャイナ プロジェクト・マネージャー 銭 愛麗
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