第1回ではAIO(AI Optimization/AI最適化)の考え方を整理しました。では実際に、企業名やサービス名を生成AIに尋ねたとき、なぜ思うような回答が出てこないケースがあるのでしょうか。そこには、AIの精度だけでは片づけられない理由があります。今回は、企業サイトや公開情報にありがちな「不足」という観点から、その背景を見ていきます。
連載:生成AI時代の企業コンテンツ戦略「AIOとHIO」
目次
なぜ自社名が生成AIに出てこないのか―情報の材料不足が原因
生成AIに自社名やサービス名を入れてみたものの、競合は出てくるのに自社は出てこない。そんな場面に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。ただ、それを単純に「AIの気まぐれ」で片づけてしまうのは早計です。生成AIは、公開されている情報を手がかりに企業像を組み立てています。材料が少ない、古い、意味がつかみにくい、といった不足がある状態であれば、候補として挙がりにくくなるのは自然なことです。
実際、日経BPコンサルティングの調査(※1)でも、生成AIは情報収集の入り口として使われる一方、多くの人がその後に公式サイトやほかのWebサイトで裏取りをしていることが分かりました。
生成AIから得た情報の正確性の確認方法(日経BPコンサルティング調べ)
画面を拡大してご覧下さい。
つまり、AIに引用されること自体がゴールなのではなく、生成AIに聞いた後にユーザーが確認する企業情報に不足がないかどうかが問題となるのです。
- ※1出典:【生成AI活用調査】ビジネスの現場のリアルと本音 第1回 生成AIが変えるビジネス情報収集の未来――約半数が生成AIを活用も「賢く疑う」(日経BPコンサルティング, 2026.02.10)
何の会社かが伝わっていないのはなぜか―具体性のない表現が、AIにも人にも輪郭をつかませない
企業サイトで意外に多いのが、「結局、何の会社なのかがひと目で分からない」という具体的な情報が不足している状態です。トップページを開いても抽象的なスローガンが並ぶだけで、どんな課題に強く、誰に何を提供しているのかが見えてこない。社内では通じる言葉でも、外から見れば理解しづらい。こうした表現は、人にとって分かりにくいだけでなく、AIにとっても企業の輪郭をつかみにくくします。
Google検索で理解されやすいコンテンツの基本として、ページの主題が分かる見出しや、人が実際に使う言葉を適切な場所に置くというノウハウがあります。これはSEOの話に見えて、実は企業の自己紹介の話でもあります。何をしている会社なのか、どんな領域で価値を見いだしているのかが、ひと目で分かる状態でなければなりません。具体性の不足はAIにも人にも自社を伝わりにくいままにします。
強みが伝わらないのはなぜか―根拠となる情報が不足しているから
もう1つよくあるのが、強みは書いてあるのに、その根拠が不足しているケースです。「豊富な実績」「高い専門性」「多くの企業に選ばれている」といった言葉は並んでいても、具体的な事例や数字、導入企業の声、独自調査、専門家の見解などが不足していると、読む側は判断しにくくなります。AIも同じで、特徴をまとめる材料が薄ければ、他社との差が見えにくくなります。
Googleの考え方(※2)でも、独自の情報、調査、分析、明確な出典、誰が書いたのかが見えることが重視されています。企業サイトでもこれは同じです。何が強みなのかだけでなく、なぜそう言えるのかまで示されて初めて情報としての厚みが出ます。AIに引用されない理由を探っていくと、実は「語れるだけの根拠が不足している」というケースは少なくありません。
情報は公開しているのに伝わらないのはなぜか―古い情報・分散・表記の不統一が全体像を見えにくくする
企業情報が十分にあるつもりでも、実際には伝わりにくくなっている場合があります。典型的なのは、古い情報が残ったままになっていて最新情報が不足しているケースです。今注力している事業より、数年前の説明のほうが詳しく載っている。サービス名や訴求軸がページごとに微妙に違う。最新の実績や導入事例が更新されていない。そうなると、読み手は「この会社は今何を強みとしているのか」をつかみにくくなります。
Googleは企業情報について、公式サイトだけでなくBusiness Profileや各種公開情報を最新に保つことの重要性を示しています(※3)。つまり、1ページだけ直せばすむ話ではありません。企業に関する情報がいくつもの場所に存在する以上、それぞれの内容がずれていると、AIも人も全体像をつかみにくくなります。情報の不足というより、情報の分散と不統一が問題になっていることも多いのです。
AIに伝わらない情報は、人にも伝わっていないのか―AIの問題ではなく、情報発信そのものの問題
ここで大事なのは、「AIの回答結果に出てこない」現象を、AIだけの問題と考えないことです。生成AIは、人が読んでも分かりにくい情報を上手にすくい上げてくれる万能なツールではありません。具体性・根拠・鮮度・統一性が不足し、企業サイトの説明が抽象的で全体像が見えないのであれば、それはAIにとっても、人にとっても分かりにくい状態です。
人はAIの回答だけで判断を終えず、最終的には自分の目で確かめます。そのときに企業サイトが「何の会社か」「なぜ選ばれるのか」「どんな実績があるのか」を十分に伝えられていなければ、比較検討の候補から外れてしまいます。AIOはAI対策として語られがちですが、実際には自社の情報発信における「不足」を見直す機会でもあります。
何から見直すべきか―個別ページの追加ではなく、情報の全体設計から
AIOをきっかけに自社の情報設計を見直すならば、「AIに選ばれる」ために1ページを追加するといった発想だけでは不十分です。個別のコンテンツ整備は大切です。ただ、それ以上に問われるのは、企業として何を強みとして打ち出すのか、その強みを支える情報がどこにあり、どのようにつながっているのか、という全体設計です。具体性・根拠・鮮度・統一性という4つの「不足」は、どれか1つを補えばよいのではなく、情報全体を見渡して初めて解消できるものです。
日経BPコンサルティングのAIO支援では、WebコンテンツをAIに引用されやすい形に整えるだけでなく、一次情報の作成や企業価値の打ち出し方という企画設計を重視しています。AI時代の情報発信は、露出対策とイコールではありません。自社の情報資産を棚卸しし、人にもAIにも理解される全体最適な形に編集し直す必要があるのです。
日経BPコンサルティングのAIO支援事例
<金融業A社>
競合がひしめく金融業のコンテンツ企画・制作を支援。生成AIの回答結果に引用されるようにしたい、という要望に対し、AIO現状分析を基に、人が興味・関心を持つ連載コラムを企画・制作した。コラム公開後1週間以内に、狙ったプロンプトで上位表示を実現。
- 業種:金融
- 目的:マーケティング、生成AIからの引用増
- 支援内容:社会トレンド×活用シーン紹介コンテンツの制作、製品紹介ページとの連携
<研究所(シンクタンク)B社>
研究内容の社会的意義をビジネスパーソンや就職希望者にわかりやすく伝えたいというニーズに応え、論文調だった既存のトーンを刷新。AIO現状分析とトレンドを基に切り口を企画し、取材・撮影・執筆・デザイン・編集まで一貫して支援。オウンドメディアの役割を再定義し、メディアとしての質も強化。
- 業種:ICT
- 目的:研究所の認知拡大、技術広報、採用、生成AIからの引用増
- 支援内容:マーケットトレンド×研究・人物紹介、コーポレートサイトとオウンドメディアの連携強化
次回の記事でお伝えすること―「不足」の先にある、人の心を動かす「HIO」という考え方
本記事では、自社が生成AIに引用されない原因を、企業サイトに不足しがちな情報という観点から整理しました。具体性・根拠・鮮度・統一性の4つが不足すると、AIにも人にも伝わりません。見直すべきは個別ページの追加ではなく、情報の全体設計です。
ただし、「不足」を補い、情報設計を整えてAIに正しく理解されたとしても、それだけで終わりではありません。AIが候補を挙げた後、人は必ず自分の目で確かめます。その場面で「この会社に相談してみたい」という気持ちが生まれるかどうかは、また別の問いです。
次回は、不足を埋めた先にある課題として、人の理解・共感・行動につなげるHIO(Human Impact Optimization:人への影響力最適化)という考え方を紹介します。AIに伝わることと、人の心が動くことは同じではありません。この2つをどう設計するかが、生成AI時代の情報発信の核心です。
太田 美保(日経BPコンサルティング)
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