生成AI(人工知能)は、企業やサービスとの出会い方そのものを変えつつあります。検索結果をたどって複数のサイトを見比べる前に、ChatGPTやGoogleのAI Overview、Microsoft Copilotなどに「どの会社がよいか」「何が違うのか」を尋ね、要約された答えから候補を絞り込む。そんな情報収集が、すでに当たり前になり始めています。
本連載では、生成AI時代の企業コンテンツの在り方を、AIO(AI Optimization/AI最適化)とHIO(Human Impact Optimization/人への影響力の最適化)という視点から考えていきます。第1回ではまず、AIOとは何か、なぜ今それが重要なのかを整理します。
連載:生成AI時代の企業コンテンツ戦略「AIOとHIO」
目次
AIOとは何か―生成AIに「正しく語られる」ための最適化
生成AIが企業情報を「語る」時代が来ています。ユーザーは今、企業名やサービス名を検索バーに打ち込むだけでなく、「〇〇分野でおすすめの会社を教えて」「△△サービスと□□サービス、どちらが自社に向いているか」「◇◇の課題を解決するには、どんな会社に相談すればいい?」といった問いをそのままAIに投げかけます。するとAIは、公開情報を基に企業を整理し、特徴をまとめ、候補を挙げます。企業の第一印象が自社サイトではなく、AIの回答から形づくられる場面が、確実に増えています。
この変化の中で重要になるのが、AIO(AI Optimization/AI最適化)という考え方です。AIOとは、生成AI時代において、自社や自社サービスに関する情報がAIに正しく理解され、適切な文脈で言及される状態をつくるための考え方です。単にAIの回答に出てくることだけを目指すものではありません。どのような企業として理解され、どのような強みを持つ存在として語られるか、そこまでが問われます。
なお、この領域ではAIO以外にもGEO(Generative Engine Optimization/生成エンジン最適化)やAEO(Answer Engine Optimization/回答エンジン最適化)などの呼び方が使われることもあります。本稿では分かりやすさを優先し、生成AI時代の情報最適化を総称してAIOと呼びます。
なぜ今、AIOが必要なのか―情報収集の入り口がAIへとシフトしているから
AIOが必要とされる背景には、情報収集の入り口そのものの変化があります。
日経BPコンサルティングの調査(※)では、仕事で生成AIを活用している人のうち、75.2%が「何らかの情報収集を生成AIで完結できる」と回答しています。生成AIは特に「概要を素早く把握したい」「何を調べればよいか分からない」「新しい言葉や事柄の意味を知りたい」といった初期段階で多く活用されており、情報収集の起点がAIへと広がりつつあるのが実態です。
何らかの情報収集を生成AIで完結できると思う割合(日経BPコンサルティング調べ)
この変化が企業にとって意味するのは、顧客との接点が変わるということです。従来であれば、ユーザーは検索結果からリンクをたどり、企業サイトへ直接訪れた上で情報に触れていました。しかしAIが比較・要約・推薦を行うようになると、ユーザーが企業の発信する情報に直接触れる前に、候補の絞り込みが終わってしまうケースが増えます。企業と顧客が出会う前段階で、AIが情報の橋渡しを担うようになっているのです。
さらに見落とせないのが、AIが誤った情報を学習・回答するハルシネーションのリスクです。企業に関する情報が少ない・古い・断片的であれば、AIは限られた材料から企業像を組み立てます。現在の主力事業ではなく過去のイメージで語られる、競合と似た会社として理解される、本来の強みが伝わらない。そういった「誤解」が生じる可能性があります。
BtoBビジネスでは特に、こうした誤解は商談機会の損失に直結します。正確に言及されるかどうかは、競争優位性そのものに影響する問題です。
「自社の情報が公開されているか」だけでは足りない時代になりました。AIが自社を正しく語れる状態になっているか。それが、AIOが問いかける核心です。
出典:【生成AI活用調査】ビジネスの現場のリアルと本音 第1回 生成AIが変えるビジネス情報収集の未来――約半数が生成AIを活用も「賢く疑う」(日経BPコンサルティング, 2026.02.10)
SEOとの違い
ここで気になるのがAIOはSEOと何が違うのか、という点です。結論からいえば、AIOはSEOと対立する考え方ではありません。SEOの先に生まれた新しい課題、と捉えるほうが近いでしょう。
SEOが目指してきたのは検索エンジンに見つけてもらい、ページを理解してもらい、検索結果で上位に表示されることでした。AIOが向き合うのはその先、つまり生成AIが企業情報をどう整理し、どう位置づけ、どう説明するかです。SEOが「見つけてもらうための最適化」だとすれば、AIOは「正しく語られるための最適化」といえます。
もちろん、土台としてのSEOは今も重要です。Googleも、AI OverviewやAI Modeにおいて特別な裏技より、検索の基本に沿った良質なコンテンツづくりが重要だと示しています。
AIOをどう捉えるべきか―企業価値を文脈化・構造化する、編集と戦略の課題
AIOを単なる“AI露出対策”として捉えると、本質を見失いがちです。AIに社名や製品・サービス名が出ること自体は表面的な効果にすぎません。企業や製品・サービスの価値や強みが適切な文脈で理解されることが、AIOの本来の目的です。
その意味でAIOは、AI向けの小手先の施策というより、企業が持つ情報資産を整理し、市場や社会の文脈の中で意味が伝わる形に整える取り組みとして捉えるほうが適切です。
どの情報を、どの順番で、どのような意味づけで発信するか。情報の量よりも、情報を文脈化・構造化し、価値が伝わる形へ編集する視点が問われます。
情報を増やすだけでは十分ではありません。企業の専門性や独自性が、AIにも人にも誤解なく伝わる情報環境をつくること。それが生成AI時代に求められる発想です。AIOはテクノロジー対応であると同時に、企業価値をどう言語化し、どう届けるかという、編集と戦略の課題でもあります。
日経BPコンサルティングのAIO支援事例
<金融業A社>
競合がひしめく金融業のコンテンツ企画・制作を支援。生成AIの回答結果に引用されるようにしたい、という要望に対し、AIO現状分析を基に、人が興味・関心を持つ連載コラムを企画・制作した。コラム公開後1週間以内に、狙ったプロンプトで上位表示を実現。
- 業種:金融
- 目的:マーケティング、生成AIからの引用増
- 支援内容:社会トレンド×活用シーン紹介コンテンツの制作、製品紹介ページとの連携
<研究所(シンクタンク)B社>
研究内容の社会的意義を、ビジネスパーソンや就職希望者にわかりやすく伝えたい、というニーズに応え、論文調だった既存のトーンを刷新。AIO現状分析とトレンドを基に切り口を企画し、取材・撮影・執筆・デザイン・編集まで一貫して支援した。
- 業種:ICT
- 目的:研究所の認知拡大、技術広報、採用、生成AIからの引用増
- 支援内容:マーケットトレンド×研究・人物紹介、コーポレートサイトとオウンドメディアの連携強化」+「オウンドメディアの役割を再定義し、メディアとしての質も強化」
次回以降の記事でお伝えすること―なぜ自社がAIに引用されないのか
本記事では、AIOを「生成AI時代に企業情報が正しく語られるための考え方」として整理しました。ただし、これだけで十分ではありません。AIに理解されることと、人の心を動かすことは同じではありません。自社名が生成AIに出てこない背景には、企業サイトや情報発信の構造的な課題が潜んでいる場合も少なくありません。
次回以降は、AIOの先にある論点をさらに掘り下げていきます。第2回では、なぜ自社名が生成AIに出てこないのかを、企業サイトに不足しがちな情報という視点から考えます。第3回では、AIOだけでは足りない理由と、人の理解や共感・行動につなげるHIOという考え方を扱います。第4回では、AIO/HIOを踏まえたコンテンツ制作をどう捉えるべきかを整理します。
AIOは、単なる新しい流行語ではありません。企業の情報発信の影響がAIの回答空間へ広がった今、何を、どう伝えるかを見直すための出発点です。
太田 美保(日経BPコンサルティング)
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