「Webブランド調査」結果解説⑤
コーポレートサイトにおける企業活動訴求成功のヒントとは
コーポレートサイトにおける企業活動の発信強化
「Webブランド調査」の調査対象となっているコーポレートサイトでは、近年、「企業理念(パーパス)」のメッセージや企業活動の発信を強化する傾向が見られる。これは、コーポレートサイトがあらゆるステークホルダーとの重要な接点となるプラットフォームと位置づけられ、情報発信力の重要性が高まっていることを示している。
「2024-秋冬」の調査結果(2024年10月実施)から、企業活動の発信において高評価を獲得しているサイトを紹介する。以下には、「Webブランド調査」の評価指標「態度変容:企業活動」を構成する「事業活動への関心」の得票率を示した(図1)。500サイト中のトップ3は「JR西日本」「住友林業」「トヨタ自動車」となっている。
これらの上位サイトは、研究開発・技術開発、サステナビリティ、安心・安全への取り組みなどを明確に打ち出し、企業活動として認識されやすい形で訴求していることが共通している。
図1 「事業活動への関心」得票率ランキング
ユーザーが関心を持つ、企業活動コンテンツの特徴
「事業活動への関心」の上位サイトでは、どのようなコンテンツに関心が集まっているのだろうか。本調査では、回答時に「関心を持ったコンテンツ」を複数選択で尋ねている(図2)。
この結果を見ると、「JR西日本」「住友林業」は、「企業理念(ミッション、パーパス等)」の得票率が特に高い。両サイトとも、メインビジュアルで企業理念を伝えるメッセージやビジュアルを明確に打ち出し、ユーザーへの印象付けに成功している。また、「住友林業」は「サステナビリティ」の関心度も高い。トップページでは、事業とサステナビリティの一体化を通じた社会課題解決への取り組みを包括的に伝える構成となっており、企業姿勢と具体的な取り組みが結びついた情報設計が評価を高めている。さらに、上位サイトの「富士フイルム」や「大塚製薬」は、「研究開発」への関心度の高さが特徴となっている。先進的な取り組みを従業員へのインタビューなどを通じてストーリー化して発信することで、専門知識がなくても一般生活者が関心を持てる内容となっている。
図2 「関心を持ったコンテンツ」調査項目一覧
- 製品・サービス全般
- 新製品・新サービス
- キャンペーンやイベント
- ユーザーの声や利用・導入の事例
- 会社概要、事業概要
- 採用情報
- 経営方針、経営ビジョン
- 企業理念(ミッション、パーパス等)
- IR情報
- 研究開発
- サステナビリティ
- オウンドメディア(企業・組織が運営するメディア、読み物)
- ニュースリリース、お知らせ
コーポレートサイトを通じた、多様なステークホルダーへの価値訴求のポイント
コーポレートサイトは、一般生活者、投資家、学生や若手ビジネスパーソン等の就職・転職希望者、取引関係者など、さまざまなステークホルダーとの接点となる。こうした多様なユーザーに対して、必要な情報を網羅することは基本となるが、それだけでは十分とはいえない。
上位サイトに共通するのは、以下の3つの要素である。
- ユーザー視点の情報設計
専門用語や業界特有の表現に頼りすぎず、各ターゲット層に合わせた分かりやすい表現 - 「自社らしさ」の表現
自社の個性が伝わるビジュアルやトーン&マナー、独自のコンテンツ展開 - 一貫したメッセージ
企業理念から具体的な活動まで、一貫したストーリーラインでの情報発信
自社サイトが主要なターゲットに対して効果的に情報を届けるためには、「Webブランド調査」のような定期的な評価と継続的な改善が重要だ。
コーポレートサイトは、企業ブランディングにおいてますます中核的な役割を担うようになっている。「Webブランド調査」で企業活動訴求の効果を定量的に測定し、改善サイクルを構築することで、効果的なコーポレートブランディングの実現に活用いただきたい。
■Webブランド調査について
(URL:https://consult.nikkeibp.co.jp/branding/solutions/web-brand/)
調査目的 | Webサイトのブランド力を測定し、企業や団体のWebにおけるブランドコミュニケーション戦略の成果を定点観測する |
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調査手法 | インターネット調査 |
調査対象 | 全国、20歳以上のインターネット・ユーザー (日経BPコンサルティングの提携調査会社の調査モニター) |
有効回答数 | 36,962件 |
調査対象ブランド | 企業や団体が運営する日本の主要500サイト |
調査実施期間 | 2024年10月11日(金)~2024年10月21日(月) ※半年ごとに年2回実施(春夏:4月、秋冬:10月) |
調査企画・実施 | 日経BPコンサルティング |
連載:「Webブランド調査」結果解説
- 1)ユーザーにとって「良い」サイトとは何か? 企業サイトの役割を最大限発揮するためのポイント
- 2)「使いやすい」Webサイトの共通点──「Webブランド調査」で見るリニューアルの成果
- 3)「Webブランド調査」から見る、Webサイトが築く企業の信頼性
- 4)ユーザーの関心を動かすWebサイト──「Webブランド調査」が示す態度変容のポイント
- 5)コーポレートサイトにおける企業活動訴求成功のヒントとは
ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
池田 梨子
Webサイト評価調査「Webブランド調査」を担当するほか、各種ブランド調査やインタビュー、ブランドメッセージ制作などのブランディング支援に従事。周年事業デザインセンターのコンサルタントとして周年事業の各種支援も行う。
※肩書きは記事公開時点のものです。