「Webブランド調査」結果解説②
「使いやすい」Webサイトの共通点──「Webブランド調査」で見るリニューアルの成果
「サイトリニューアル→高評価」ではない、ユーザー評価の実態
「Webブランド調査」は半年ごとに、国内の企業・組織が運営する500サイトを対象に実施している。「2024-秋冬」の調査(2024年10月実施)では、「2024-春夏」(2024年4月実施)からトップページが大幅に変更されたサイトは500サイト中26サイト(全体の約5%)だった。そのうち、リニューアルの結果として総合力(Webブランド指数)が上昇したサイトは9サイトに留まる(図1)。この結果から、単にサイトデザインや構成などを見直すだけでは、必ずしも評価が向上するわけではない現実が見えてくる。今回は、本調査の評価指標の一つである「サイト・ユーザビリティ」に着目し、スコアが上昇したサイトの評価の特徴を紹介する。
図1 サイトリニューアル後、Webブランド指数(WBI)が上昇したサイト
評価向上につながる「サイト・ユーザビリティ」改善のポイント
本調査における「サイト・ユーザビリティ」は、「サイトの見やすさ、読みやすさ」「情報の探しやすさ」「内容の分かりやすさ」「全体的な使い勝手」の4つの項目で評価している。総合力が上昇した9サイトの中で最もスコアが高い「JR西日本」は、4項目すべてで評価が上昇した。リニューアル前はテキスト中心のファーストビューとなっていたが、リニューアル後は画像や見出しがゆとりを持って配置され、視認性が向上している(図2)。「2024-春夏」の自由意見では、「欲しい情報が探しづらい」「文字数が多い」といった意見が挙がっていたが、「2024-秋冬」はこれらの指摘が減少し、「情報がすっきりまとめられており、ストレスを感じなかった」といったポジティブな反応も見られた。
また、9サイトの中で「サイト・ユーザビリティ」のスコアが最も高かった「タイガー魔法瓶」では、リニューアル前はデザイン性の高さが評価されつつも、「スタイリッシュだが具体性に欠ける」「どこを見ればよいかわからない」といった自由意見での指摘があった。しかし、リニューアル後は、洗練された雰囲気は維持しながら各コンテンツ導線が以前より明確になり(図3)、「情報の探しやすさ」の評価が上昇している。
このように、ユーザー視点でのユーザビリティ、特に「情報の探しやすさ」の改善が評価向上のポイントといえる。ただし、「情報の探しやすさ」と一言で言っても、情報量の整理や文字・画像等のデザインの改善、コンテンツ導線設計など、多面的な要素がある。そこで、自社のサイトが取り組むべき課題を明確化するために、ユーザーの声を聞くことが重要となってくる。
ユーザー評価の可視化でWebリニューアルの成果を最大化
サイトリニューアルは、多くの時間とコストを要し、担当者にとって大変な作業だ。それにもかかわらず、伝えたい情報がステークホルダーにきちんと伝わらなければ、その効果は十分に発揮されない。リニューアルの目的を確実に達成するためには、ユーザー評価を定量的・定性的に把握し、「何がどのように伝わっているか」を検証することが極めて重要である。担当者の主観やアクセス解析だけでは見えないユーザーの「生の声」を聞き、実際の評価や課題を把握することが、リニューアルの価値を最大化するポイントといえる。
2025年6月に発行を予定している「Webブランド調査」は、自社サイトのユーザビリティを一般生活者の視点から多角的に評価できる有効なツールだ。リニューアル効果の検証や継続的なPDCAサイクルの一環として、ぜひ活用いただきたい。
図2 「JR西日本」のトップページ(2024年10月時点)
図3 「タイガー魔法瓶」のトップページ(2024年10月時点)
■Webブランド調査について
(URL:https://consult.nikkeibp.co.jp/branding/solutions/web-brand/)
調査目的 | Webサイトのブランド力を測定し、企業や団体のWebにおけるブランドコミュニケーション戦略の成果を定点観測する |
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調査手法 | インターネット調査 |
調査対象 | 全国、20歳以上のインターネット・ユーザー (日経BPコンサルティングの提携調査会社の調査モニター) |
有効回答数 | 36,962件 |
調査対象ブランド | 企業や団体が運営する日本の主要500サイト |
調査実施期間 | 2024年10月11日(金)~2024年10月21日(月) ※半年ごとに年2回実施(春夏:4月、秋冬:10月) |
調査企画・実施 | 日経BPコンサルティング |
連載:「Webブランド調査」結果解説
- 1)ユーザーにとって「良い」サイトとは何か? 企業サイトの役割を最大限発揮するためのポイント
- 2)「使いやすい」Webサイトの共通点──「Webブランド調査」で見るリニューアルの成果
- 3)「Webブランド調査」から見る、Webサイトが築く企業の信頼性
- 4)ユーザーの関心を動かすWebサイト──「Webブランド調査」が示す態度変容のポイント
- 5)コーポレートサイトにおける企業活動訴求成功のヒントとは
ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
池田 梨子
Webサイト評価調査「Webブランド調査」を担当するほか、各種ブランド調査やインタビュー、ブランドメッセージ制作などのブランディング支援に従事。周年事業デザインセンターのコンサルタントとして周年事業の各種支援も行う。
※肩書きは記事公開時点のものです。