「見られている」と意識したサイトは良くなる? ― 女子大学のスマホ・サイトが見やすい理由 ―

  • 伊藤 憲

    ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 部長 伊藤 憲

女子大学スマホ・サイトは見やすさ/使いやすさのレベルが高い。これは「大学スマホ・サイト ユーザビリティ調査」の調査結果から見えてきたことだ。ここ2、3年はユーザビリティに磨きをかけて、さらにスコアを伸ばす女子大学も多い。なぜ女子大学はサイトの見やすさ/使いやすさに気を配るのか。
文・分析=橋本 敏彦

全大学平均を5ポイントも上回る

弊社が毎年実施している「大学スマホ・サイト ユーザビリティ調査」で女子大学の躍進が目立っている。ノミネート対象に入っている女子大学24校について総合スコアの推移を確認したところ、平均値は全大学平均を上回った(図1)。しかも年々、差を広げていて、2023年調査では5ポイント以上の差をつけている(※)。

※2023年調査では駒沢女子大学が新規にノミネート対象となった。同大学を含む25校の平均スコアは64.03となり、全大学平均との差はさらに広がる

総合スコアの推移 女子大学平均(24校)2021年59.71 2022年61.60 2023年63.22 全大学平均 2021年56.38 2022年57.14 2023年58.12

図1 全大学と女子大学の総合スコア比較 「大学スマホ・サイト ユーザビリティ調査」より

なぜ女子大学スマホ・サイトのユーザビリティはレベルが高いのか。以下は推察(仮説)である。

まず第一に、女子大学に危機感があること。1998年には全国に98校あった4年制女子大学の数は、共学化、統廃合の流れにもまれ、2023年には73校に減った。そうしたなかで女子大学は個々の大学の魅力や女子大学の存在意義を、サイトを通じて強く関係者に伝える必要を感じたのだろう。

第二に女子高校生たちの“厳しい目”で見られていること。女子が好ましく心地よいと感じるデザインを提供することはもちろんだが、ちょっとした読みにくさや操作性の悪さで大学のセンスを疑われ、場合によっては学生に対する大学の態度までも感じ取られてしまうかもしれない。分かりにくい誘導も排除しないといけないだろう。

そうした厳しい目に「見られている」と意識することでユーザビリティ・レベルは高まる。そしてレベルの高い他の女子大学サイトと比較されることで、さらにユーザビリティやデザインに磨きをかけなくてはいけなくなるのではないか。

女子大学サイトはお手本になる

筆者の浅い推察はともかく、女子大学のスマホ・サイト、特に「大学スマホ・サイト ユーザビリティ調査」でランキング上位になった大学サイトは良いサイトが多いので、一度、見ていただきたい。そこには参考になるデザインのアイデアも見つかると思う。

例えば東京女子大学(2023年調査で24位)のトップページはメニューアイコンをフローティングの小さな丸いハンバーガーアイコンにして画面の右下に配置している。ページのどこを見ていても追いかけてくるメニューなので、すぐにタップできる。ページ上部(ヘッダー)まで戻る必要はないのだ。

また、ナビゲーション関連のボタンをほぼこの小さなアイコンにまとめているので、画面はすっきりし、ページ本体を表示する面積が広くなった。画面のほぼ全面がページ本体の表示領域なので、ビジターはページ内容により没入しやすくなる。キャンパスの雰囲気を体現するサイトデザインと相まって、写真や文章によるアピールがより伝わりやすい画面になっているといえる。

図2 東京女子大学スマホ・サイトのトップページ

実践女子大学(2023年調査で21位)は、メニュー内にちょっとした工夫がある。PC表示の切り替えボタンをメニュー内に置いているのだ。

PCサイトで見たリンクやレイアウトを確認したいときのためにPC表示への切り替えボタンを設けるサイトはあるが、多くはページ下部(フッター)に配置している。つまり下部までスクロールしないと切り替えができないので、これはちょっとしたストレスだ。実践女子大学のメニューは画面の上部の固定メニューなので、ページのどこを見ていても常に画面上部に表示されている。つまりページのどこを見ているときでも、メニューを開き、PC表示切り替えボタンをタップできるのだ。ちょっとしたストレスが解消される。

女子大学スマホ・サイトは、ユーザビリティを良くする細やかな工夫の発信源になっている気がするのだが、どうだろうか。

伊藤 憲

ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 部長
伊藤(いとう) (けん)

大学卒業後、広告代理店勤務を経て2005年より調査業務に従事し、企業のマーケティングリサーチ、国・自治体の各種調査を担当。
2019年日経BPコンサルティングに入社し、企業や大学などのブランドコミュニケーション活動支援を行う。
「大学ブランド・イメージ調査」のプロジェクトマネージャーを務める。

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