ポストデジタル時代のマーケティング・コミュニケーション 第2回

サービスサイトの全体設計 “未開拓層/興味関心層へのアプローチが重要”

  • 伊達和幸

    マーケティング本部 本部長 伊達 和幸

第1回では、ポストデジタル時代の移行期における、サービスサイトが担う役割について整理しました。
サービスサイトの見直しや立ち上げを行う際には、全体設計においていくつかの重要な点に留意する必要があります。新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響を受けたここ数年の支援実績から、代表的なご相談事例を紹介します。

コンテンツマーケティング全体の見直し、目的の明確化

コンテンツマーケティングの一貫としてオウンドメディアを立ち上げたものの、当初の狙いだったブランドメッセージを具体化したコンテンツ発信から変容し、デジタル広告/デジタルマーケティングの受け皿、SEO対策、SNS連携を含めて集客に比重を置いた状態で見込み客の獲得と育成を担うようになった。

コーポレートサイトリニューアルに合わせたサービスサイトの立ち上げ

コーポレートサイトとは異なる目的であるマーケティング・コミュニケーションの領域が、導線や構造の面でコーポレートサイトの中心に据えられた結果、マーケティング関連のコンテンツが中心の見え方となってしまい、コーポレートサイトの範囲と役割が不明確になっている。

乱立化したマイクロサイト・LP(ランディングページ)の整理

MA(マーケティングオートメーション)に合わせて、広告効果測定、ヒートマップ解析などのツールを導入する際、統合的なサービスサイトが存在しなかったため、個別のマイクロサイトやLP(ランディングページ)を次々と制作した結果、多数の小規模な特設サイトが乱立してしまった。

こうした問題を解決するためには、単なるサービスサイトのリニューアル制作ではなく、リニューアル前段階での要件整理、コンテンツの棚卸し、KPI設計を含めた全体の設計が必要です。これらのステップを実行するには、ブランド・コンテンツ・デジタルのチームを適材適所に配置させた上で、日々の営業活動(SGL)の引き合いにも対応可能な、統合的かつ横断的なプロジェクトをスタートさせる必要があります。

また、サステナビリティサイトの立ち上げに伴い、コーポレートサイトの対応範囲を再定義される際に、マーケティング・コミュニケーション領域についても見直しをされる場合があります。いずれにしても、サイトリニューアルのタイミングで急ごしらえの検討をするよりも、定期的に自社の展開状況を把握し、目的に合った内容かどうかを確認・修正することが重要です。

サステナビリティサイトの重要性が増していく中で、企業の強みを具体化したコンテンツを強化することは、コーポレート・コミュニケーション全体に大きな影響を与えていきます。サステナビリティ/パーパスコンテンツは、新規顧客の開拓、新規事業の創出、そして採用候補者の獲得において競争力の源泉となる役割を果たすことが期待されます。

サービスサイト設計の流れ

需要の創出(デマンドジェネレーション)と見込み客の獲得・育成(リードジェネレーション及びナーチャリング)は、マーケティング戦略において欠かせない要素であり、サービスサイト設計にも重要です。サービスサイトの設計では、まずペルソナ設定によりターゲットになる顧客像を明確にします。次にジャーニーマップを作成し、顧客がサービスに接触する全てのタッチポイントを可視化してユーザー体験を最適化します。続いて、具体的な施策を計画します。最後にKPI(重要業績評価指標)を設定し、マーケティング活動の効果を測定します。

ペルソナ、ジャーニーマップについては、弊社のブランド戦略&マーケティング情報メディア“CCL.”にて、記事を掲載していますので、ご覧ください。

BtoBマーケティングの最適解 ビジネスにつながるジャーニーマップ

以降では、ターゲットに対応したコンテンツの考え方、ポジションニングマップについてお伝えします。

サービスサイトの対象は顕在層だけではない

商品やサービスが市場にある程度浸透している段階において、顕在層のみをターゲットとすると、一定の水準を超えた段階でCV(顧客獲得数)は鈍化し、結果的にCPA(顧客獲得単価)の高騰を招きます。そういった状況を打開するには、潜在層を視野に入れたアプローチが不可欠です。さらに、その潜在層の前段階に位置する未開拓層や興味関心層へのリーチも重要です。潜在層は、まだ具体的な購買意欲を示していないものの、適切な情報提供やブランド認知を通じて、将来的な顧客となり得る層です。

ここで重要なのは、潜在層が持つニーズに対して、テキストコンテンツによるホワイトペーパーの提供に加え、動画コンテンツの提供が不可欠であるということです。動画コンテンツは視覚的かつ聴覚的な情報伝達が可能で、顧客の関心を引きやすく、理解を深めるのに適しています。特に、技術的な説明や商品・サービスの特徴を視覚的に示すことができる動画コンテンツは、複雑な情報を分かりやすく解説する手段として効果的です。これにより、潜在的なニーズを持つ顧客に対して、より具体的で実践的な価値を提供し、興味を喚起できます。さらに、動画コンテンツはソーシャルメディアでのシェアが容易であり、広範なリーチを実現する手段としても優れています。

需要創出は未開拓層/興味関心層へのアプローチが必要不可欠

潜在層の前段階に位置する未開拓層や興味関心層へのアプローチも欠かせません。これらの層は、現時点ではブランドや商品に対する認知度が低いものの、適切なマーケティング施策を通じて興味を喚起し、将来的な顧客基盤を構築する可能性があります。具体的には、教育的なコンテンツや啓発的な情報提供を通じて、ブランドの価値を伝えることが求められます。マーケティング・コミュニケーションでは、顕在層への集中的なアプローチから脱却し、潜在層およびその前段階に位置する未開拓層や興味関心層を含めた包括的な施策により、長期的な成長と競争優位性を確保することが可能となります。

未開拓層や興味関心層へのアプローチは、新市場の開拓と商品・サービスの成長に不可欠です。これらの層をターゲットとすることで、需要を創出し、成長基盤を築くことができます。短期的な見込み客の獲得にとどまらず、ブランドの長期的価値向上と市場ポジションの確立にも寄与します。

顧客の段階別施策と即時顧客化時代の両立

サービスサイトでは、見込み客全体に対応する必要があります。具体的には、1. 未開拓層/興味関心層、2. 潜在層(課題意識あり)、3. 顕在層(購入・導入意向あり)の全てを網羅することが求められます。さらに、4. 既存顧客に対するアップセル・クロスセルの対応も重要です。これに加え、サポートやCRMのためのマイページを用意することで、中長期的に良好な関係を維持し、顧客満足度の向上を図ることが望ましいのです。

マーケティング・コミュニケーションの環境は、SNSの影響力拡大、デジタル広告のさらなる成長、コネクトテッドTV、リテールメディアの進展によって、ますます多様化しています。この結果、顧客とのタッチポイントが増加し、企業は顧客とより深く、広範に接することが可能になっています。また、オンラインツールの普及により、商談は時間や場所にとらわれずに行うことができ、まさに「即時顧客化」の時代が到来しています。

BtoB、BtoCという区分けは依然として存在しますが、現実には個人は一般消費者としての人格とビジネスパーソンとしての人格を使い分けることはほとんどなく、一人の人格としてあらゆるコンテンツに接し、意思決定を行っています。企業にとって重要なのは、こうした一人一人の顧客を理解し、顧客が求める価値をサービスサイトで提供することです。そして、その価値提供を通じて顧客との信頼関係を築き、良好な関係性を継続することが、競争の激しい市場での成功の鍵となります。

企業はこれらの課題を克服し、顧客にとって価値ある情報を一貫して提供し、効果的な情報発信と顧客との関係構築を目指すにあたり、具体的にどういった考えでサービスサイトの設計をすればいいのでしょうか。

第3回では、サービスサイトへの集客・コンテンツの考え方について解説します。

連載:ポストデジタル時代のマーケティング・コミュニケーション

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ポストデジタル時代のマーケティング・コミュニケーション
“サービスサイトの整備・見直し”
ポストデジタル時代への移行期である今、競争力を高めるための考え方やポイントをまとめています。
ぜひダウンロードいただき、ご活用ください。

伊達 和幸

マーケティング本部 本部長
伊達 和幸

デジタルエージェンシー及びコンサルティング会社で、通信、エネルギー、航空業界のデジタル戦略立案、マーケティング、新規事業・サービス開発に従事。
2016年に日経BPコンサルティングに入社し、デジタル領域のコンサルティング及び施策の立案・実行を多数手掛ける。

※肩書きは記事公開時点のものです。

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