ブランド価値評価調査の活用事例

新たな企業ブランド「TOMOWEL(トモウェル)」の認知強化

  • ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント 池田 梨子

共同印刷は2017年、創業120周年を迎えるに当たり、新たなコーポレートブランドとして「TOMOWEL(トモウェル)」を打ち出した。「共に良い関係を築く」という意味を込め、日本語の「とも(共・友・知・智)」と、英語の「WEL(Wellの古語であり、良い・満ちる・親しみの意)」を掛け合わせた言葉である。現在、大きな事業環境の転換期にあり、印刷からさまざまな事業に広がりつつある共同印刷グループのビジョンを示している。この重要な時期のブランディングを担当する光田亮介さんに狙いや苦労を聞いた。
共同印刷株式会社
グループコーポレート本部
コーポレートコミュニケーション部
広報課 光田 亮介氏(左)

広報課 課長 山田 麗子氏(右)

聞き手=池田 梨子/文=吉村 克己

2018年からブランド・ジャパン(BJ)のカスタム調査を毎年ご利用頂いていますが、採用されたきっかけは何でしょうか。

光田 当社は2017年に「TOMOWEL」をコーポレートブランドとして導入し、以来、その認知向上に注力しています。18年からBJのカスタム調査を採用し始めたのも、認知度の状況を確認するためです。私は当時、企業の販促支援を目的としたカタログやWebサイトの企画制作などを行っていましたが、当然ながらTOMOWEL導入にも関わっており、告知ツールを制作していたため、調査のことは承知していました。2019年にコーポレートコミュニケーション部に異動し、現在ではTOMOWELの周知、浸透および製品・サービスの拡販・広告などを担当しています。来年3月に新社屋が竣工予定ですが、そのエントランスのデザイン監修なども行っています。TOMOWELの趣旨を体現する場となるはずです。

最初のブランド調査の結果はいかがでしたか。

光田 立ち上げ時でもあり、一般のビジネスパーソンの正直な声を知りたかったので、高い認知度は期待していませんでした。TOMOWELと共同印刷という言葉にはほとんど関連性がないので、簡単には認知度を上げられないと、今も覚悟しています。

光田 亮介氏

第1回目と比べて、2020年度のブランド調査ではTOMOWELの認知度やイメージの評価に上昇傾向が見られました。要因は何でしょうか。

光田 昨年公開した「Hands(ハンズ)」というブランディング動画が好評で、その影響もあると考えています。Handsは御社にご協力いただき制作したものですが、社内でも好評でした。

弊社ではブランド調査の他に、動画制作などの広報・PRツールの制作もお手伝いさせていただいていますが、お役に立っていますでしょうか。

光田 大変助かっています。動画に関しては、実は私自身ブランディング動画を作ったことがなかったため、上司のアドバイスももらいつつ、何社か制作会社を調べました。その中で、御社はブランドコンサルティング会社として、当社の風土や目指すべき方向性を理解しており、なおかつブランディングにも精通した上で、質の高い企画提案をしてもらいました。

調査では、TOMOWELの認知度の把握に加えて、御社の広告評価も行っていますが、結果はどうですか。

光田 日経電子版での動画を含めて、日経本紙、日経産業新聞などにも広告を出していますが、これまでその評価を確認する術がありませんでした。BJの指標を使って調査できたのは助かりました。ブランドイメージのうち、「時代を切り開いている」や「信頼できる」という評価が高く、その成果をブランディングにも活用しています。一方で、ブランディングも外部向けのアウターと社内向けのインナーがありますが、インナーブランディングが弱いことが分かったので、今後、強化したいと思っています。

社内にTOMOWELのビジョンを浸透させる取り組みは何かされているのですか。

光田 現在の部署では企業風土の改善もミッションの1つです。社員に対する意識調査を行っていますが、社員は外部からの評価ほど「時代を切り開いている」や「信頼できる」ことを実感していません。そこで、昨年からグループ社員を集めて座談会を開き、意見交換する場を定期的に設けています。これまでそのような場が少なかったので、ホンネが聞けて参考になっています。もっと自社に自信を持ってもらうために、啓発活動を続けていきます。

ブランド調査の結果は社内で公開されていますか。

光田 経営陣への報告はもちろん、社内報で取り上げて知らせています。閲読状況を調べてみると、すごく関心が高いというわけではないのですが、インナーブランディングの一環として、広く社内にも自社のブランディングを知ってもらう契機になったと思います。

ブランド調査の中で、今後どのような項目の指標を上げたいとお考えですか。

光田 「共同印刷を知っている人」に対して「TOMOWELを知っているか」という調査項目があるのですが、まだ10%未満です。少しでもこの数値を上げたいというのが一番の願いです。また、「時代を切り開いている」という評価が高めとは言え、回答者のばらつきがあるのも気になっています。

ブランド調査では競合ブランドとの比較も行っていますが、どう捉えていますか。

光田 競合と言っても他の印刷大手はそれぞれ目指すべき事業方針が異なっています。社員との座談会でも「単に競合と比較するだけでよいのか」という声がありました。今後、競合分析をどうするか検討したいと思っています。

BJをカスタマイズした調査のメリットはなんでしょうか。

光田 一般的なインターネット調査も手軽でいいのですが、BJ調査は当社のコアターゲットであるビジネスユーザを主な調査対象としていること。しかも、日経ブランドを冠した調査ですから、その対象者の信頼性も高く、全国まんべんなく、多様な業界の人たちに調査できる点を評価しています。広告のイメージ調査ができるのも役立っています。

ブランド調査を経て、ブランディング施策の変化はありましたか。

光田 調査結果からも垣間見られるのですが、現在、対面での営業活動などが激減する中で、マーケティングの面ではオウンドメディアや広告の重要性が高まり、営業部門からの問合せや要望が増えてきました。そのため、オンラインセミナーやメルマガなどの情報発信も強化しています。デジタルを活用した施策の中にTOMOWELに関する広報をどのように盛り込めるかなど検討中です。

今後の御社の、ブランディング施策の展開を教えてください。

光田 TOMOWELの理念である「共にある、未来へ」と「関わるすべてと共に良い関係であり、未来を創り拡げていく」というメッセージをこれまでより一層、強く発信していきたいと思っています。当社に求められている社会的な価値を突き詰め、それをステークホルダーと共有することが大事だと考えています。これまで当社には顧客第一主義はあっても、新たな道を切り開いていくという発想が足りませんでした。社会的価値を提供することこそ企業活動であり、TOMOWELがその方向性を示していると思います。

共同印刷株式会社
グループコーポレート本部
コーポレートコミュニケーション部
広報課
光田 亮介氏

2007年共同印刷(株)入社。企業の販促活動支援を目的に、通販カタログやキャンペーン、Webサイトなどの企画制作に従事。2019年よりコーポレートコミュニケーション部で広報業務を担当。企業ブランドの周知浸透と自社製品・サービスの拡販をめざして、自社サイトの運営や広告の企画制作、展示会の監修などに携わる。現在は2022年3月に竣工予定の新社屋の受付周りの設計・監修も担当。

※部門名等は記事公開時点のものです。

ブランド本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
池田 梨子(いけだ・りこ)

Webサイト評価調査「Webブランド調査」を担当するほか、各種ブランド調査やメッセージ制作などのブランディング支援に従事。周年事業センターのコンサルタントとして周年事業の支援も行う。2016年3月、日経BPコンサルティング入社。

 

※このプロフィールは、掲載時点のものです。最新のものとは異なる場合があります。

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