システムインテグレーター各社の業績が絶好調です。日本経済新聞によると、野村総合研究所など専業7社の2018年3月期の売上高営業利益率は平均9.2%と過去最高を記録する見通し。13年3月期は7.3%だったので、5年間で1.9%も上昇したことになります。営業利益の絶対額も、7社合計で5年前より46%多い3162億円に達する見通しです。
各社の好業績を後押ししているのは、旺盛なシステム構築需要。最大で8000人が張り付いた、みずほ銀行の新勘定系システム構築プロジェクトはピークを越えたものの、製造業の基幹システム刷新など、大規模プロジェクトが目白押しです。
これに働き方改革関連のシステム構築プロジェクトが加わって、各社の経営者はエンジニアの確保に追われています。情報サービス産業協会(JISA)が四半期ごとに発表している雇用判断DI(JISA-DI=従業員が「不足」との回答から「過剰」との回答を引いた値)は2017年9月末時点で54.4と2009年6月の調査開始以来、最高を記録しました(図)。
旺盛なシステム投資意欲とエンジニア不足を受けて、システムインテグレーター各社は、顧客や案件の選別を始めています。「要件をなかなか決められない筋悪の顧客には、わざと高い見積もりを出して受注しないようにする」「システム部門が弱体化した顧客の保守案件は手間の割に利益率が低いので撤退する」と打ち明ける営業担当者も少なくありません。
システムインテグレーター各社の「この世の春」は、いつまで続くのでしょうか。
転機になりそうなのは、やはり2020年の東京オリンピック(五輪)・パラリンピック。五輪後はどうしても景気の後退が避けられず、企業のシステム投資も減少に転じる可能性が高そうです。
加えて2020年以降はパブリッククラウドの利用がいっそう加速することはほぼ確実です(なんといっても米CIAがAWSを全面採用する時代です)。パブリッククラウドに移行した分のシステムインフラの構築・運用の仕事はなくなります。
もう一つささやかれているのは、従来型システムインテグレーションの限界です。ユーザー企業自らがAIやIoTを駆使して顧客に付加価値を提供する動き(いわゆるデジタルトランスフォーメーション)が盛んとなればなるほど、受け身体質で顧客に言われたモノを正確に作るだけのシステムインテグレーターにはお声がかからなくなるとの指摘です。
こうした「システムインテグレーター2020年危機説」は4~5年前は盛んに議論されていましたが、好景気の影に隠れたのか、最近は耳にすることが減りました。
でも、本質的な問題はまったく変わっていないはずです。システムインテグレーター各社の経営者は、業績が好調な今こそ、2020年以降に向けた展望を描くべきでしょう。
日経BP総研 イノベーションICT研究所では、IT業界を長く取材してきた知見を活かして、IT企業の戦略策定のお手伝いをしています。全社の中期経営計画から個別の製品/サービスのマーケティング・プロモーション計画まで幅広く策定を支援しています。
過去には、システムインテグレーター準大手の中期経営計画作成をお手伝いした実績もあります。このときは経営陣や中堅社員とのディスカッションを経て、その会社のSWOT分析を実施。加えて日経BP社が持つ豊富な調査データを駆使して、競合他社と比べたときの強み・弱みを定量的に示しました。さらに競合他社における新規事業の生存率も調査し、中期経営計画の方向性固めに役立てました。
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日経BP総研 イノベーションICT研究所
星野 友彦