営業部門の理解不足、MAツールの活用に悩む

欧米のマーケッターの悩みと打開策 「欧米と日本のBtoBマーケ事情」(その1)

2015.10.26

コンテンツマーケティング

  • 古賀 雅隆

    マーケティング本部 シニアコンサルタント 古賀 雅隆

日経BPコンサルティングでは、取材やコンサルティングを通して聞き出した欧米のBtoBマーケティング最新事情についてまとめ、ITProACTIVEのチュートリアルカテゴリーに連載「欧米と日本のBtoBマーケ事情」を掲載しています。

日本より進んでいると言われている、欧米のBtoBマーケティング。しかし欧米でコンテンツマーケティングを展開するマーケッターも、多くの悩みを抱えているようです。今回はその悩みと打開策について、ご紹介します。

さらに欧州では、見込み客創出に関して米国と少し異なる展開が見えてきました。

マーケと営業の意思疎通は「アラインメント」で

欧米のマーケッターの悩みの一つは、マーケティング部門(=以下マーケ部門)から出したアタックリストが、営業部門に受け入れられにくいことです。

もう一つは、日本でもよく耳にしますが、MA(マーケティングオートメーション)ツールの活用方法が分からないことです。

「営業部門がアタックリストを受け入れてくれない」という悩みを解決する方法について、米Content Marketing Institute(CMI、オハイオ州)創始者のジョー・ピューリッジ氏がインタビューで語った打開策を、「マーケ部門が作ったアタックリストを営業部門が無視する理由」にまとめました。

この状況の打開策としては、マーケ部門と営業部門のゴールを合致させる「アラインメント(Alignment)」という考え方が主流です。

Alignmentを直訳すると「一直線にする」「一列に並べる」という意味で、マーケティングや営業をはじめ、製品担当者全員の意識を合致させることを求めています。

MAツールをうまく使いこなすには

もう一つは、「MAツールの活用方法が分からない」という悩みです。

MAツールのベンダーは、企業にMAツールを導入した後初期設定こそやってくれるものの、その後の運用に協力してくれるとは限りません。当たり前ですが、設定してくれるのは初期分だけです。MAツールを買って導入しても、ツールのベンダーがあまりきちんと取り組んでくれずに途方にくれていた企業もあります。

この打開策について、米国カリフォルニア州サンラモンに本拠を持つデマンド・ジェン(=DemandGen)社のFounder & CEOのDavid Lewis 氏に取材しました。

この内容を「MAツールは「魔法の杖」に非ず、コンサルタントが語る改善の糸口」にまとめました。

MAツールの最適設定と、利用における最適化のためのコンサルティングに専門に取り組む80人規模のコンサルティング会社が出会った米国マーケッターの悩みを紹介し、これらの課題をマーケッターたちがどのように克服したかを紹介しています。

また記事の中では、「ホット度合いの判定」において、何を基準とするかにも触れています。

欧州で進み始めた「ダブルファネル」の考え方

さらに、MAツールに関して米国よりも利用が2年遅れていると言われる欧州、特にドイツやイギリスなどの状況を、フォレスターリサーチのVice Presidentで Research DirectorのPeter O’Neill氏に取材しました。

この内容は、「「切り捨てる」米国と「育む」欧州、なぜリードの扱いに差があるのか」にまとめました。

これをご覧いただくと、欧州では米国とは少し違ったMAツールの活用が始まっていることが分かります。

「(欧州では)MAツールを使いこなすという意味では、まだ成熟していないと思う」とO’Neill氏が指摘しているように、欧州の企業でシステムのセットアップに追わる状況や、ホワイトペーパーダウンロードに対応して営業対象とするような段階を紹介しています。

一方で、自社サイトのランディングページを起点としたインバウンドマーケティングやソーシャルコンタクトの促進、リードスコアリングへのトライアル、リアルのタッチポイントとの連携評価などまで広まってきて、「より進んだ状況である」(O’Neill氏)という状況も出てきています。

リード創出の動き以外にぜひ注目したい欧州の動き、リード創出ではないもうひとつのファネルについても触れています。

つまり顧客になった後に満足度を高め、契約を継続させ、さらなる購買に結びつけるための役割を、デジタルコンテンツに持たせようという動きです。

既存顧客のアップセル・クロスセルを獲得するための「ダブルファネル」という考え方
マーケティングファネルはリード獲得から受注まで(上半分)だけではなく、既存顧客の満足度を高めて上位商材や別商材の購入につなげるための「アンダーファネル」も併せて考える。
既存顧客のアップセル・クロスセルを獲得するための「ダブルファネル」という考え方

従来のリード創出のための「マーケティングファネル」(下が狭まる形のじょうご)の下に、売り上げ拡大のために下方に向かって開く「アンダーファネル」(下が広がる形のじょうご)を置くイメージの、「ダブルファネル」とも呼ばれる考え方です。

欧州では対面営業に出向きやすいこともあって、新規リードの獲得もさることながら、既存顧客の満足度を高めて契約を継続させたり、アップセル、クロスセルを獲得したりすることも大切と考えられているようです。

今後も「欧米と日本のBtoBマーケ事情」の連載にあわせ、内容をこちらで紹介していきます。