周年事業研究員が語る周年事業ソリューション(1)
鳴かぬなら鳴かせてみよう「従業員意識調査」
- 2018年06月18日
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周年事業というと、担当者はまず社史の制作を思い描きます。特に兼任の場合、日々の仕事が忙しくて時間をさけないので、取りあえず社史をつくれば形になるだろう、と安直な方法を選びがちです。しかし、社史制作だけではせっかくのチャンスをみすみす逃しているようなものです。周年事業は組織を強くする“千載一遇”の機会です。周年をきっかけに組織が生まれ変われば、従業員は働きやすくなり、業績向上につながる可能性もあるのです。
周年事業ラボでは、「しらべる」「きめる」「つくる」「つたえる」の4つのフローで周年事業を捉えています。社史などを「つくる」だけでなく、その前に「しらべる」「きめる」という準備をしっかり行うのが特徴です。当ラボは4つのフローに基づいて、さまざまなソリューションを提供しています。本連載では、1つずつのソリューションについて研究員に質問をぶつけてみました。
第1回は「しらべる」フローの「従業員意識調査」です。
お答えする研究員
周年事業ラボ・コンサルタント
菅野和利
- 「従業員意識調査」にキャッチコピーをつけてください。
- いきなり難しいですね……。“鳴かぬなら鳴かせてみよう「従業員意識調査」”でしょうか。
- その心は?
- 従業員が組織に対して公に意見を言いにくいケースが多々あります。また、経営陣が従業員の声を認識していない組織も少なからず見られます。そこで、従業員意識調査というきっかけを設け、鳴かぬ(意見を出さない)従業員も、調査によって鳴かせてみよう(意見を出す)というわけです。
- なんとも下手な謎かけですね。どんな調査をするのでしょうか。
- 全従業員に対し、アンケート調査を行います。質問には複数の切り口を設けます。企業理念を知っているか、理解しているか、賛同しているか、といったブランドに対する質問を投げかけます。組織文化への質問も欠かせません。コミュニケーションは取りやすいか、自発的に意見を述べやすいかなど、風通しのよさも質問します。項目を選択する定量的なものと、自由記述する定性的なものを組み合わせます。
- 調査結果は何に使うのですか。
従業員意識調査のポイントは、結果の使い方にあります。結果を眺めて従業員の意識を知るだけではもったいない。調査には従業員の意識が「言葉」として表れます。仕事の現場から引き出された言葉には、組織が目指すべき姿が埋もれています。例えば、「技術力」「先進性」「伝統」「信頼」など、組織の強みを表す言葉が散見されます。それらの言葉を注意深く掘り出して分類します。3年後、5年後にどの強みを伸ばせばよいか、いくつかの可能性が分類結果から見えてきます。
お勧めは、分類した言葉を基にしたブランドコンセプトの作成です。自分が答えた調査結果がコンセプトに結実したと知れば、従業員は、組織の未来の姿を“自分事化”できます。結果的に、従業員みんなが参画してつくったブランドコンセプトとなるのです。
- ネガティブな言葉ばかり出てきませんか。
- 質問の仕方に注意すれば、ポジティブな表現を引き出せます。今に不満があったとしても、3年後、5年後にどうなりたいか、どうなっていてほしいかを聞くのです。未来を明るくするための質問にすれば、前向きな意見が出てきます。
- 従業員から出た意見が過去の考え方の延長で、未来志向ではない場合もあるのではないでしょうか。
- 調査はあくまで「審議」のプロセスです。「決定」は当然、経営陣が行う必要があります。調査は決定を行うための情報収集と考えてください。さまざまな立場の従業員から多様な意見を引き出せば、幅広い選択肢を集められます。多くの従業員が過去志向であっても、少数の従業員から未来志向の言葉が出てくるかもしれません。“全”従業員である意味がここにあります。多様な意見を吸い上げて、未来づくりの選択肢とする。経営陣はそれらの選択肢を検討して、最終的に未来志向のコンセプトを決定すればよいのです。
- 従業員の感覚と経営陣の方針が大きく違っている場合はどうすればよいでしょうか。
- 従業員と経営陣のギャップを知るのも、「しらべる」フローの大きな役割です。経営陣の方針を深く知るためには、経営陣やキーパーソンにインタビューを行う「キーパーソンヒアリング」が有効です。ヒアリングの結果と従業員意識調査の結果を比較すれば、両者のギャップを明確にできます。
次回は「キーパーソンヒアリング」について研究員に聞きます。
- 2018年06月18日
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連載「研究員が語る周年事業ソリューション」
- (1)鳴かぬなら鳴かせてみよう「従業員意識調査」
- (2)理想と現実のギャップを知る「キーパーソンヒアリング」
- (3)ふわっとさせずしっかり決める「ブランドコンセプトの設計」
- (4)「未来年表づくり」で人ごとから自分事へ
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