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研究員ブログ

成長市場の「エコシステム」を生み出すコンテスト

日経BP総研 イノベーションICT研究所 菊池 隆裕

2017/09/07

 「ムーブメントを起こしたい」「隠れた才能を発掘したい」。コンテストは、そんな目的をかなえるための一般的なツールとして使われています。長く専門メディアの記者を務めた経験から、審査員としてコンテストに参加したことも何度かあります。また、自らも運営側として推進したことがありました。その1つが、2010年から2014年まで開催したスマートフォンのアプリ開発コンテスト「Android Application Award(呼称:A3=エーキューブ)」です。

2014年開催時の受賞者の皆さん

 当時は、スマートフォンの世界的な広がりが見え始めていた時期。日本が先行していたモバイル・サービスの開発者の活躍の場を世界に広げたいと考えた私たちと、スマートフォン市場を拡大したいと考えていたソニーモバイルコミュニケーションズ(当時は、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ)の思惑が一致して始まりました。スマートフォンの勃興期というタイミングで、運良く実施できたこの活動を通じて、コンテストの奥深さを知ることとなりました。

ニワトリが先か、タマゴが先か

 コンテストの基本は「作品を集めて、審査し、表彰する」で、とてもシンプルなもの。たくさんの魅力的な作品が集まることが成功であり、最大のリスクは「魅力的な作品が集まらないこと」です。作品が集まらなければ、選びようもアピールしようもなく、結果によっては「魅力のないことがPRされる」というネガティブ・キャンペーンにもなりかねません。

 この点で、第1回開催当時の2010年というのは、スマホ向けアプリ開発コンテストにとって難しいタイミングでした。スマホ自体がほとんど普及しておらず、開発者ですら、コンテストのターゲット端末であるAndroid端末を持っている人はごくわずか。「さあ、応募してください」といったところで、簡単に集まる見込みが立ちませんでした。プラットフォーム型ビジネスにありがちな、いわゆる「ニワトリが先か、タマゴが先か」という問題です。収入を重視する開発者視点に立てば、Androidよりも、もっと儲けられるプラットフォームがある、というわけです。

 対策の1つとして、実際にスマートフォンを体験できる場を用意しました。開発者を対象としたスマートフォンの体験会です。全国各地でスマートフォンに触れてもらい、従来型携帯電話と比べた魅力を伝えて回りました。当時は一般的でなかった「アイデアソン」「ハッカソン」の開催にも取り組みました。さらに、「こんな審査員に評価してもらえたら、開発者の士気が上がりそう」と思える方々に審査員をお願いしました。その結果、初回は予想を超える200以上の応募をいただきました。東日本大震災からの復興をテーマとした特別版を含めた6回の開催で、応募総数は1600にも達しました。

 コンテストの運営を通じて、志を同じくする魅力的な人たちの出会いが数々あったことは、関係していただいた方々や私たちにとっても良い経験となりました。

 例えばハッカソンでは、コードの書き方など、専門的なことは教えられないので、開発者の方に一緒に動いていただきました。協力いただいた方の中には、個人で活動されている方がたくさんいらっしゃいましたが、オープンマインドで自身のノウハウを遠慮なく共有する姿勢には驚きました。卓越したスキルはもちろんですが、その姿勢もまた、大企業のエンジニアに大いに刺激になったようです。

 彼らに「なぜそこまでオープンなのか」と聞いてみると、「新しい技術や事象の前では皆平等。自分の知っていることをまず教える。そうすることで、自分が知らないことも誰かが教えてくれる」と話してくれました。最近になって、頻繁に言われる「コミュニティ」「エコシステム」ですが、従来の「大企業とその下請け企業との関係性」とはまったく違うつながりです。その中に入り、体験できたことは、現在の研究所での活動にも大いに参考になっています。

表彰式はゴール?

 「表彰だけでいいの?」。協賛者の1人からは、そんなご指摘をいただきました。主催者からすると表彰式というのはゴールとなりますが、これから大きく成長しようという開発者には通過点に過ぎません。開発者にとって、今後の活動の礎となる、もっと価値があるものを用意できないのかという問いかけでした。

 そこで、A3は「海外での実践体験」を副賞として用意することになりました。協賛者の伝を頼って、メーカーの海外開発拠点を訪問してエンジニアと意見交換する、海外の展示会に出展あるいは発表者として参加するなどの場を用意しました。ある受賞者からは、「A3の特典旅行が、人生の転機になった」と言っていただいたこともありました。

A3とは別枠で、ソニーと共同でグローバル・コンテストも運営(2013年1月にラスベガスで開催されたCESから)

 応募者について言えば、奇跡的な出来事がありました。第1回のコンテストで学生賞を受賞した方が、なんと最終回にはスタートアップ企業の一員として最優秀賞を獲得したのです。

 こうしたエピソードもほんの一部で、ここでは紹介しきれないたくさんの体験ができました。また機会があれば、こんな大きなシカケができればいいなと思っています。

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