50周年記念誌を通じて歴史を紡ぎ、社員と企業の絆を深めたヴァンドームヤマダの挑戦

  • ブランド本部 ブランドクリエイティブ部 兼 周年事業・デザインセンター 脇山 誠司

2023年に創業から50年を迎えたヴァンドームヤマダ。同社は節目となるこの年に、過去の軌跡を忠実に記録し、未来に受け継ぐための50周年記念誌を日経BPコンサルティングとともに制作、単なる社史にとどまらず、社員一人ひとりが自社の歴史と価値を再認識する機会となった。制作の背景とプロセス、そして得られた成果について、同社代表取締役副社長 兼 マーケティング本部長の山田稔子氏と、同本部で広報グループ長を務める本田菜穂美氏に話を聞いた。
聞き手=菊池 由希子 文=脇山 誠司 写真=本浪 隆弘

「50年の歩みを未来へ――創業時の歴史を正確に紡ぐ」

50周年記念誌を制作しようと思った背景を教えてください。

山田 当社では40周年の際にも記念誌を作成していました。しかし、その内容は商品やブランドの紹介が多く、深く歴史を掘り下げたものではありませんでした。今回は、創業時の歴史や初期の事業展開を正確に記録し、未来の社員たちにも読み継がれる内容にしたいという社長の思いが強くありました。特に創業から20年頃までの歴史については、資料が限られており、当時を知る社員も少ないため、記録として残しておきたかったのです。創業当時を知る元役員の方々にもご協力いただき、写真や資料の収集に尽力しました。本誌では、社長自身が制作初期から深く関わり、私たちと一緒に社長も細部にわたる内容確認を行い、時には記憶と資料を何度も照らし合わせながら進めました。『50年後に読んでも正しい記録でありたい』という思いが、制作の原動力でした。

株式会社ヴァンドームヤマダ
代表取締役副社長 兼 マーケティング本部長 山田 稔子 氏

具体的にはどのようなプロセスで制作を進めたのですか?

山田 制作にあたっては、まず主要な関係者へのヒアリングを行い、過去の記憶と残された資料をすり合わせる作業をしました。社員や元社員、さらには取引先からも資料を借り受け、写真や文書をもとに構成を練りました。制作の中で特に大変だったのは、初期のブランド展開に関する正確なデータの収集で、古い写真や商品資料を探し出すのに時間がかかりましたが、その過程で社員同士が自然とコミュニケーションを取り合い、楽しんで作業に取り組んでいたことが印象的でした。

本田 元役員や当時のキーパーソンへのインタビューを通じて50年の節目で、改めて創業時を知る方々の思いやエピソードを伺えたことは、私たち社員にとっても貴重な時間となりました。結果的に、記念誌には社内外の多くの声が反映されることになりました。

誌面には過去の雑誌掲載記事や当時の広告写真などをたくさん掲載

「記念誌が生んだ共感と感動――社内外に広がる喜びの声」

完成した記念誌に対する反響を教えてください。

山田 完成した記念誌は、全社員と退職された元社員の一部、これまでの歴史を共にした関係先にお届けし、社内外で大きな反響をいただきました。社員からは「こんなブランドも扱っていたんですね」「自分たちが携わった時代がこうして形になり、後輩たちに伝えられることがうれしい」といった声が上がり、特に若手社員が会社の歴史に興味を持ってくれたことがうれしかったです。

また、御取引先にもお届けし、多くの感謝の言葉を寄せていただきました。御取引先からは、「御社の長い歴史を知り、大変興味深く感銘を受けました」との声が寄せられたり、手書きのお礼状をいただいたりしました。さらに、ある関係者は所有しているヴァンドームヤマダのアクセサリーを記念誌の写真の上に重ねて撮影し、その動画を送ってくれる等ブランドへの愛着や関心の深さが感じられる印象的な出来事となりました。

「歴史を未来へつなぐ――復刻商品の発表や新たな活用」

記念誌の制作を通じて得られた成果や気づきには、どのようなものがありますか?

本田 制作するプロセスそのものが社内での一体感を生む機会となりました。記念誌制作を通じて、社員同士の結束が強まり、会社に対する誇りを再認識する機会になったと思います。これは会社全体のブランド価値向上にもつながる重要な取り組みでした。

山田 制作を進める中で、過去のブランド商品が再評価され、復刻版商品の発表や新たな企画の種にもなりました。50年の歴史を振り返る中で、「このデザインをもう一度現代に蘇らせよう」という動きが自然と生まれました。

写真:本田 菜穂美 氏

株式会社ヴァンドームヤマダ
マーケティング本部 広報グループ長 本田 菜穂美 氏

制作した「50周年記念誌」をどのように活用されていますか。

山田 ヴァンドームヤマダでは、50周年記念誌を新入社員研修や採用活動にも活用しています。記念誌を通じて、これから入社する社員に会社の歴史や価値観を伝えたいと考えています。新たな御取引様とのコミュニケーションにも、周年史を活用し、ヴァンドームヤマダのブランド価値を知っていただくツールとしても利用しています。この記念誌は、未来への架け橋として、これからのヴァンドームヤマダを支える一助となるでしょう。

株式会社ヴァンドームヤマダ
代表取締役副社長 兼 マーケティング本部長 山田 稔子 氏(写真左)
マーケティング本部 広報グループ長 本田 菜穂美 氏(写真右)

株式会社ヴァンドームヤマダ

ジュエリーの企画・販売・輸出入を手がける企業。高品質で洗練されたデザインが特徴のブランド「VENDOME AOYAMA」などを展開し、幅広い年齢層のファンに愛され続けている。ジュエリーの歴史とともに、時代に合わせた新しい価値を提案し続ける。

創立: 1973年

本社: 東京都港区南青山5-12-1

事業内容: ジュエリーの企画・販売・輸出入

従業員数: 691名(臨時社員数171名を除く、2024年8月末)