投資運用だけでなく、多様な視点からの発信を続けるレオス・キャピタルワークスの挑戦

  • コンテンツ本部 ソリューション3部

投資信託「ひふみ投信」や「ひふみプラス」などを運用するレオス・キャピタルワークスは、より多くの人に投資に関心を持ってもらうため、2023年秋より「ひふみ目論見倶楽部」という新たな戦略をスタート。同戦略では、経済評論家や地経学者といった専門家を巻き込みながら、「自分たちの手で10年先の未来を議論・選択し、世の中を動かしていく」ことを目的に、YouTubeチャンネルや冊子、オープン社内報などを通して積極的に発信を続けている。この活動の目的と同社が目指す未来について、代表取締役副社長の湯浅光裕氏と総合企画本部長兼経営企画部長の山崎孝氏に話を聞いた。文=尾越まり恵
写真=竹井俊晴
構成=青木真理

ファイナンシャル・インクルージョンを推進すべく、新たな戦略をスタート

レオス・キャピタルワークスは、「資本市場を通じて社会に貢献します」という経営理念の下、2003年に創業。アクティブファンド「ひふみシリーズ」を100万人以上から支持されるブランドに育て上げる一方、投資の魅力を分かりやすく、かつ楽しく広めることを目指し、ファイナンシャル・インクルージョンを推し進める。誰もが取り残されることなく金融サービスへアクセスでき、金融サービスの恩恵を受けられるように、また、誰にとっても投資がもっと身近なものになるように、創業以来、動画やSNSなどによる情報発信にも注力している。

自社で制作するYouTubeチャンネルでは、月次の運用報告会「ひふみアカデミー」の様子を収録した動画を配信。また、社長の藤野英人氏自身も参加するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」(登録者数約30万人)では、投資や経済について、なじみがない人にも分かりやすく解説しているほか、未来を担う子どもたち向けに、「お金の基本」について解説した書籍『投資家と考える10歳からのお金の話』(講談社)の制作なども行う。

そんな同社が、2023年秋に新たな戦略として「ひふみ目論見倶楽部」の活動をスタート。「ひふみ」の運用と連携し、10年先を見据えて運用に落とし込むことや、より多くの人を巻き込んだセミナーや勉強会を開催し、その様子をYouTubeや冊子で発信している。主導する総合企画本部長兼経営企画部長の山崎孝氏は、「『目論む』という言葉には、投資信託など有価証券の投資判断に必要な重要事項を記した書類『目論見書』と、『未来を企画して前進し、世の中を動かしていく』という2つの意味を込めています。親しみを込め、ひふみの『み』と目論見の『も』を取って『ミーモ』という愛称で呼んでいます」と説明する。

山崎孝氏の写真

ミーモの運営を主導する総合企画本部長兼経営企画部長の山崎孝氏

「ミーモ」の大きなテーマは、「10年先の未来を考える」こと

「AIにより、3カ月、半年先の短期的な予測は今、ある程度可能になっています。そんな中にあって、AIではまだまだ予測が難しい長期的な目線で、10年後どんな社会にしたいのか、どんな未来をつくりたいのか……。投資は未来をつくるものです。どんな分野に注目し、投資するべきなのかを見極めるために、私たちはミーモをスタートさせました。第一の思いは、投資を通じて日本を根っこから元気にすることです」と山崎氏。

取り上げる分野としては、「グリーン&エネルギー」「省人化&ロボティクス」「地政学&セキュリティ」など、10項目。テーマごとに外部の専門家を招いてイベントを開催し、学術的な視点からセミナーや勉強会などを行う。また、専門家を招いて話し合う中で、今ある種を発掘し、10年後に花咲かせる企業はどこなのか、10年後どのような企業や分野が伸びるのかを、ひふみの運用と連携するかたちで、具体的に銘柄に落とし込むことにも努める。

  (1)テクノロジー&サスティナビリティ群  1.グリーン&エネルギー  2.スマートインフラ&イノベーション  3.省人化&ロボティクス  (2)ソーシャルインパクト&ヘルスケア群  4.ダイバーシティ&エデュケーション  5.フード&ウォーターセキュリティ  6.ヘルスケアイノベーション  7.デジタルコミュニケーション&プライバシー  (3)グローバルエコノミー&地政学群  8.エコノミー&トレーディング  9.地政学&セキュリティ  10.人口動態&高齢化

「ひふみ目論見倶楽部」の主なテーマ(随時更新)

「未来を語るには、どんな準備をすればいいのか」を考えるフェーズとして、これまで経済評論家の勝間和代さんや情報学者・脳科学者の安宅和人さん、東京大学公共政策大学院教授の鈴木一人先生などをゲストとしてお招きし、お話を伺いました。今後は、特定のテーマについてのセミナーや勉強会などもできるといいですね。あまり専門的になりすぎても伝わりにくくなるため、テーマは試行錯誤しながら決めていく予定です。まずは身近なテーマを設定し、入り口のハードルを下げ、続けていくことが大事だと考えています」と山崎氏。

潜在顧客は老若男女、すべての人たち。届ける媒体にも気を配る

10年後の未来を考えるミーモの活動の狙いに対して、代表取締役副社長の湯浅光裕氏は、「明日どうなるか分からないような、変化の激しい時代です。私たちも10年後がどうなるかなんて、正直分かりません。でも、いろいろな知恵や経験を持つ人々や企業と交流していく中で、未来が少しずつ見えてくるかもしれない。ミーモの活動を広げるために、異業種イベントや団体への協賛、金融にまつわるワークショップや講義なども積極的に行っています」と語る。

湯浅光裕氏の写真

代表取締役副社長の湯浅光裕氏

山崎氏は、「そうやってミーモの活動を広げる中で、皆で一緒に未来を考え、明るい未来を実現していきたいと思います。さまざまな方と接点を持つことで、私たちもまだ気づいていないようなアクティブファンドの魅力を伝えていけたらと考えています」と述べる。

ミーモを届けたいターゲットについて、湯浅氏は次のように語る。「日本人の多くは投資経験者が少ないのが現状です。そういう意味では、私たちの潜在顧客は老若男女、すべての人たちになります。ターゲットを絞ることで、例えば『レオスは20代しか見ていないんだな』『高齢者が対象なんだな』などと思われることは本意ではありません。働いていない人も投資はするので、『働いている人が対象』と限定することもしたくない。そういった幅広い対象者の中で、5%でも10%でも、投資に関心を持ってくださる人に届いたら、そこから何かが始まっていくのではないかと考えています」

また、ミーモの魅力を、YouTubeチャンネルで定期的に配信していくことも大切だと山崎氏は語る。「セミナーや勉強会に参加できない方たちもたくさんいます。まずは、一人でも多くの人に、『レオスが何か面白いことを始めたな』『ほかのファンドとはちょっと違うな』と私たちの活動を知っていただくきっかけになればと思っています」

さらに、多様なライフスタイルの人々に広めるために、YouTubeだけでなく、冊子形式の紙媒体も配布していると山崎氏は続ける。「実は私自身、環境や時間的な制限などによってYouTubeを見られないことも多く、周囲を気にせず手軽に見られる紙媒体も重要だと考えています。紙媒体では焦点を絞って、さっと読めるダイジェスト的な内容を掲載しています。顧客や従業員、近隣地域の企業や学校、取引先の銀行や証券会社など、さまざまな人々に見てもらいやすく、簡潔にミーモの活動を伝えられるのも良い点だと思います」

YouTubeの配信内容をまとめたオリジナルの紙媒体「ひふみ目論見CLUB」(制作協力:日経BPコンサルティング)

「私たちは、ミーモを通して専門家とともに学術的に学び、その内容を、10年先を見据えたひふみシリーズの運用に落とし込んでいきたいと考えています。10年後に何十倍にも成長する企業の芽が、今すでにあるかもしれません。今ある情報から想像し、いかに投資に生かしていくか。それが私たちの役割だと考えています」(湯浅氏)