これからのウェルビーイング④

ウェルビーイングの取り組みが進まない3つの理由 ~鍵になるテクノロジーとソリューション~

2021.12.13

マーケティングリサーチ

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    デジタル本部コンサルティング部 豊田 康裕

ウェルビーイングは、企業活動を左右する様々な要素に対して強力な相関関係が指摘されたことで企業経営の文脈でも大きな意味を持つようになっています。
一方で、ウェルビーイングはその重要性と注目度に反して、取り組みが進んでいる組織は限定的です。
その原因を探り、どう解決していくのかを考えます。

ウェルビーイングとは、経営における意味とは

ウェルビーイングとは、肉体的にも、精神的にも、社会的にも満たされた状態のことで、(ウェルビーイングとは?)経営においても売上や生産性、創造性といった企業を左右する要素とのの強い相関が確認され、人材確保や人的資本情報開示、SDGsの観点からも注目を集めています。(今求められる、ウェルビーイング経営

一方で、ウェルビーイングはその重要性と注目度に反して取り組みが進んでいる組織は限定的です。その原因を探り、どう解決していくのかを考えます。

なぜウェルビーイングの取り組みは難しいのか

ウェルビーイングの取り組みが進まない理由は3つあります。

  • a. 効果測定が困難
  • b. 日々の業務に追われ、継続しない
  • c. ウェルビーイングには個人差がある

a.効果測定が困難

医学的ウェルビーイング(ヘルスケア観点)において重要な、身体的健康はウェアラブルデバイスなどを通じて、手間を掛けずに計測が可能です。

一方、生産性や離職率低下などに寄与されるとされるポジティブ感情、価値を感じるかなどといった持続的ウェルビーイングの指標は、本人による評価が必要になります。自己評価を行うには時間を要しますが、効果に実感が持てないと、短期的には仕事に取り組むほうが生産的ではないかと感じてしまい、仕事を中断してまでウェルビーイングの取り組みを継続するのは難しくなります。

(図)ウェルビーイングの種類、PERMA理論

b.日々の業務に追われ、継続しない

ウェルビーイングの取り組みにおいて効果的な、マインドフルネス、運動、内省、といった活動は時間を要すため、日々業務におわれているなかで取り組みを継続することは困難です。

c.ウェルビーイングには個人差がある

  • ・ コミュニケーションの頻度
  • ・ 集中できる環境
  • ・ 喜びや仕事の意義を感じること

といったウェルビーイングにかかわる様々な問題は、同じ組織内でも、メンバーによって多様です。

(図)個人差_モチベーションタイプ

心理的安全性という組織として、生産性や新しいアイデアを取り入れるのに必要な要素からコミュニケーションルールを設計したり、多くの人が集中しやすい環境づくりを試みたり、といったことは可能ですが、それらの取り組みによる効果は、大きい人もいれば小さい人もいます。

テクノロジーによる解決

3つのウェルビーイングが進まない理由を見てきましたが、これらの問題は、テクノロジーの進歩によって解決が可能になってきています。

a.「効果測定が困難」への対応
センシング✕推定技術によって、手間を掛けずに効果測定が可能に

センシング技術発達と民主化、推定技術-特に感情コンピューティング領域(感情を推定する技術)の進歩によって、直接計測することはできなくても、効果測定が可能なレベルで、感情や集中しているかどうかといったウェルビーイングにおける重要指数の推定が可能になってきています。

COVID-19にともなう生活様式、働き方の変化もあってPCカメラ(ウェブカメラ)の需要が急増している。感情推定技術(後述)を使えばPCに搭載されている簡易的なウェブカメラで捉えた表情をもとに、どのような感情を抱いているのかを推測することができます。

また、ウェアラブル端末から取得した心拍数からストレスを推定する、イヤホン型デバイスから脳波を測定し精神状態や集中度を推定する(後述)、といったことも手軽に実現できるようになりました。

b.「日々の業務に追われ、継続しない」への対応
テクノロジーによって、ウェルビーイングを日常へ組み込む

ウェルビーイングを仕事とは別に時間をとって取り組むものと考えていると、日々の業務とコンフリクトしてしまい、忙しくなったタイミングで継続が困難になります。故に、いかに日々の業務に組み込むかが重要です。

テクノロジーを活用した、状態最適な介入がその解決策になります。
例えば、ウェブカメラでとらえた表情から感情を推定、ネガティブになっているタイミングで効果的な休憩や運動を推奨する、自動でアロマディフューザーを起動して感情の切り替えを促す、といったことが可能です。

一人ひとりの、そのときの状態に合わせた介入を行うことで、日々の業務に負担をかけるのではなく、補助をする形でウェルビーイングを組み込むことが可能になります。

(図)テクノロジーによるウェルビーイング推進

c.「ウェルビーイングには個人差がある」への対応
一人ひとりの特性をテクノロジーで把握し、個人最適な介入を

センシング・推定~状態に合わせた介入を行うなかで、介入の結果、「感情の改善」「集中度の回復」などの効果が見られたのかを学習。

効果がなかった介入はアプローチを変える、効果があった介入のアプローチを強める、といった一人ひとりの特性にあわせた最適化が可能です。

特にテレワークでメンバー同士のケアが困難になるなかで、欠落する領域のため、重要度が高まっています。

注目のテクノロジー・ソリューション

下記2つの領域における、最新技術・サービスをご紹介します。

A. センシング/現状把握
  • a.「効果測定が困難」
  • c.「ウェルビーイングには個人差がある」

に対応する、一人ひとりの状態を把握することができる技術・デバイス

B. 分析/活用
  • b.「日々の業務に追われ、継続しない」

に対応する、自動で継続的に改善をすることができる技術・ソリューション

A.センシング/現状把握

一人ひとりにとってのウェルビーイング(良い状態)がわからない限り取り組みは進みません。意識することなく、感情、集中といったウェルビーイングにおいて重要なパラメーターを把握することができる技術・デバイスをご紹介します。

センシング_ソフト

表情認識AI(富士通株式会社)

カメラで取得した表情筋(ActionUnit:AU)の動きから、人の感情や集中度を定量的に推定する汎用AIモデル.。

センシング ソフト
計測対象 表情(筋)
計測方法 動画・画像データを、ウェブカメラ等を通して取得
インサイト 感情/集中度/態度
シーン オンライン会議/PC作業

PC付属のウェブカメラなどから精度の高い推定が可能です。テレワークで一人ひとりが別々の場所で働くなかで、難しくなっているメンバー一人ひとりの状態把握が可能になります。オンライン会議中のコミュニケーション改善や、PC作業の集中度を高めていくために活用されることが期待されます。

センシング_ハード

b-tone®™(凸版印刷株式会社/SOSO H&C社)

使用者の心理状態を可視化できる超小型・超軽量のイヤホン型脳波デバイス。
使用するシーンを選ばずに使用者の集中状態を可視化し、パフォーマンスの向上を支援します。

計測対象 脳波/心拍/頭の動き
計測方法 イヤホン型デバイス装着
インサイト 集中度/ストレスレベル/運動量/姿勢
シーン いつでも

従来の脳波デバイスが、ヘルメット型やヘッドバンド型のような装着負荷の高いものが多い中で、「b-tone®™」はその超軽量・小型の形状で長時間の装着と計測を可能にします。脳波のみならず心拍・加速度の計測機能を持ち、活動量や姿勢等の情報の取得も可能です。

また「b-tone®™」は計測デバイスとしてだけでなく、イヤホンとしても利用可能のためe-learningやテレビ会議などのシーンで聴講しながらの同時計測により、従来の生活シーンを変化させない自然な計測が可能です。

B.分析/活用

せっかく状態がわかっても、分析し、具体的な改善につなげれば効果は期待できません。人が行うこともできますが、負荷がかかり継続することは困難です。ウェルビーイングの取り組みを継続化していく上で重要な、分析や仮説立案を自動化する技術、ソリューションをご紹介します。

ビジネス領域最適な特化型

Arkプロセスマイニング(PLAY株式会社)

オフィス業務のログデータを活用することで、実行すべき改善施策のロードマップを明確化、業務改革を成功へと導くサービスです。PC作業ログを取得、自動で「誰が」「どんな業務を」「どれくらい」行っているのかを可視化します。改善が必要なポイントが客観的に特定し、改善効果を測定しながら業務改革が進められます。

計測対象 PCログ
計測方法 PCにインストールし自動取得
インサイト 業務可視化~ボトルネック特定
シーン PC作業

Arkプロセスマイニングは自動で問題点を洗い出してくれるため、テレワークやフリーアドレスなどが一般化し、一人ひとり異なる働き方をしているなかで難しくなっているメンバーのマネジメント、業務改革を強力にサポートしてくれます。

直接のウェルイーイング改善を目的としたサービスではありませんが、業務負荷/マネジメント領域から、ウェルビーイング改善への貢献が期待されます(※1)。

無限の使い方ができる汎用型

Wide Learning(富士通株式会社)

人に理解しやすい「特徴(※2)の組み合わせ」を仮説として判断に利用する、説明可能なAI技術です。人では確認しきれない膨大な量の仮説を高速かつ網羅的に列挙し、統計的に検証して重要な仮説を発見します。この仮説を用いて、予測や分類などの知的な判断を自動的に行い、根拠として示します。この検証された仮説から、納得性の高いインサイトを得て活用することができます。

分析対象 数種類の性質・状態などの特徴が記述されたデータ
分析方法 特徴の組み合わせを網羅的に探索
インサイト 組み合わせて初めて現れる、識別対象と深く関わる性質
シーン アクションプランの検討などにも適用可能(体質改善法提案など)

少ないデータで仮説立案と検証ができるため、取り組み始めからインサイトを得て継続的に精度を上げていくことができます。実際に取り組みを行うメンバーが根拠まで理解 した上で取り組むことが可能な点が他のAI技術と大きく異なる点です。

ウェルビーイングはこれまで、重要性が認識されながらも、十分に取り組まれてきませんでしたが、センシングや推定の無意識化、それによって得られたデータの自動分析、継続的改善が可能になったことで、取り組みが急激に進んでいます。

ウェルビーイングのはじめの一歩

下記の資料に、ウェルビーイングに取り組むための手順とヒントをまとめました。
ぜひご活用ください。

ウェルビーイング調査レポート/スタートガイド

  • ウェルビーイング実現にあたって、仕事をする上で「あったらよいもの」と「排除したいもの」
  • 職場環境とビジネスパーソンの幸福度の関係
  • ウェルビーイングの取り組みを始めるための手順とヒント
  • 重要概念(心理的安全性、デジタルウェルビーイング)
  • ウェルビーイング×テクノロジーのユースケース

(※1)日経BPコンサルティング実施調査:ビジネスパーソンが求めるリアルなウェルビーイング「職場でストレスを感じるときは」回答数1位~3位は業務負荷/マネジメント/人間関係に関わる領域。

(※2)ヘルスケア分析における体温、血圧などの患者の状態、マーケティング分析における年収、購買頻度など顧客属性、投資分析における株価、営業利益など企業指標など

ウェルビーイング特集

デジタル本部コンサルティング部
豊田康裕(とよだ・やすひろ)

コンビニエンスストア大手オペレーション部門を経て現職。
飲料/食品メーカー、機器メーカー、インフラ、大学などのビジネス支援を行う。

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