連載:変革するデータ活用 第2回

パーソナルデータ活用 <第1回 勉強会>ダイジェスト

  • マーケティング本部 コンサルティング部長 石井 健介

ビジネスチェンジを加速させる「マーケティング4.1」ユーザーに選ばれるパーソナルデータ活用サービスとは?
2019年3月13日(水)、パーソナルデータ活用に関する勉強会(主催:日経BPコンサルティング主催)「ビジネスチェンジを加速させる『マーケティング4.1』」が、都内で開催されました。全3回の勉強会のうち、第1回目の今回の特別講演には、小説家の平野啓一郎氏が登壇。「分人と個人―― 勃興するパーソナルデータ活用は、人間社会をどう変えるのか?」と題して、縦横無尽に議論を展開され、われわれはいかにデータ活用と向き合うべきか、あるいは個人と社会の関係性はどのように変質するのか、新しい視座を提言されました。本レポートでは、この特別講演を含む第1回の模様をダイジェストでお届けします。

分人思考。分けられない「個人」からの脱却

勃興するパーソナルデータビジネスにおいて、データとして現出する「私」は、どこまでが「本当の私」が顕在化したものなのでしょうか。あるいは、そもそも「本当の私」って、存在するものなのでしょうか…。

平野啓一郎氏(小説家)は、「本当の私」を個人に強いてきた近代社会を、欧州の歴史や国家と社会の関係性などから喝破し、社会基盤を「個人」起点で規定することの限界と、それに替わる概念として「分人」思考を提示。異なる環境、文化、社会的背景をもつ人とのコミュニケーションにおいては、「俺は俺」「私は私」という一本調子ではコミュニケーションが成功しづらく、つまり社会的なコミュニケーションを成立させる上では、個人は内的に分化(=分人化)することを提示しました。

詳細レポートでは、パーソナルデータ活用時代の端緒にある現代において、分人思考で社会基盤を捉え直す価値について、平野氏の考察をお届けします。

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平野啓一郎氏

平野啓一郎氏

  • 1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。京都大学法学部卒。1999年大学在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。以後、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。2004年には、文化庁の「文化交流使」として一年間、パリに滞在。美術、音楽にも造詣が深く、幅広いジャンルで批評を執筆。また、2009年から2016年まで日本経済新聞の「アートレビュー」欄を担当した。2014年、フランス 芸術文化勲章シュヴァリエを受章。著書は小説、『葬送』『滴り落ちる時計たちの波紋 』『決壊』(芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞)『ドーン』(ドゥマゴ文学賞受賞)『かたちだけの愛』『空白を満たしなさい』、『透明な迷宮』『マチネの終わりに』(21万部突破/渡辺淳一文学賞受賞)、エッセイ・対談集に『私とは何か「個人」から「分人」へ』『「生命力」の行方~変わりゆく世界と分人主義』『考える葦』等がある。2018年9月に新作長編小説『ある男』(6万部突破/読売文学賞受賞)を刊行。

情報銀行で、暮らしは変わるのか?

伊達和幸氏伊達和幸(デジタル本部デジタルコミュニケーション部長)

パーソナルデータのさらなる活用、そして情報銀行の認定は、世の中にどのようなインパクトをもたらすのでしょか。勉強会の冒頭に伊達和幸(日経BPコンサルティング デジタル本部デジタルコミュニケーション部長)は、3つの課題を提示しました。1.消費者と企業の関係、2.データの集約と活用の方向性、3.情報銀行のサービスについて、です。いずれも、マーケティングのデジタル化、パーソナルデータ活用の必要性は理解しているものの、情報銀行については懐疑的という意見に端を発するものでした。

そこで重要になるのが、消費者の便益と、社会的な便益という2つの視点です。データ活用はあくまで手段であり、「何のために」にそれを行うのか。目的を叶えるための新サービスの創出、それを企画するためのデータ活用という視点を提示し、参加者の関心を引きます。

さらに、SNSの普及など社会的背景を例に、誰もが手軽に情報を発信し、かつ開発者・企画者になり得る時世を紹介し、かつて未来学者であるアルビン・トフラーが1980年に発表した著書『第三の波』の中で示した「生産消費者(プロシューマー)」を提示。40年の時を経て、情報銀行時代の消費者のあり方を定義づけました。

「1年以内に自動車ディーラーを訪れる人」に届けるコンテンツとは?

石井健介氏石井健介(デジタル本部デジタルコミュニケーション部)

平野啓一郎氏の講演内容を受けるかたちで、私も登壇させていただきました。冒頭に、平野氏が提唱される分人思考をマーケティングの視点で紐解き、本勉強会のテーマと目線を同じくしました。かねて業界では、シーンやチャネルごとに顧客のフェーズを分解してきた「カスタマージャーニー」を例示し、他者とのコミュニケーションごとに存在する個人(=分人思考)との親和性を提示しました。

では、パーソナルデータ活用、情報銀行の誕生によって、マーケティングはどのような変質を遂げるのでしょうか。マスからセグメントへとマーケティングが進化を遂げて久しく経つ今、「マーケティング4.0」の先を見据えると、私はデータとデータを繋ぎ合わせて考える視点が重要だと考えています。

顕在化した複数のデータを丁寧に繋ぐことができれば、そこから個人の文脈(コンテクスト)を読み解ける可能性も高まります。たとえば、現在の習慣と趣味嗜好に、今後のライフイベントをかけ合わせると、「1年以内に自動車ディーラーを訪問する可能性が高い人」が、わかるかもしれません。いわば「近い将来の欲求」に向けてコンテンツを届けるという、新しいマーケティングの世界が拓ける可能性を、このパーソナルデータ活用に期待しています。

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企業から個人へのパワーシフト

阿部一史氏阿部一史氏(富士通 第二システム事業本部 事業戦略統括部)

ラストのセッションを飾ったのが、富士通の阿部一史氏。「離陸間近。情報銀行で受け入れられるサービスとは?」と題して、GAFAの動きを中心にパーソナルデータ活用にまつわる世界的な潮流を紹介した上で、情報銀行の具体的なビジネスモデルについてご紹介いただきました。

阿部氏は冒頭で、パーソナルデータ時代を考える上で非常に役立つ「未来市場の予測」を提示。デジタライゼーションが不可逆的に進展する世の中に置いては、データ所有権が個人に回帰することに言及し、企業から個人へとパワーシフトが起こる可能性を説明しました。

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※:肩書は取材当時

マーケティング本部 コンサルティング部
石井 健介(いしい・けんすけ)

シニア通販誌で編集・商品開発を担当後、金融、住宅建築、化粧品など複数業界で編集、マーケティング支援に従事。リアルとデジタルを分断することなくコミュニケーショプランを企画・実行。2016年8月、日経BPコンサルティング入社

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