デジマ担当者のためのリードが獲れるコンテンツマーケティング実制作の秘訣〈第2回〉

広告・宣伝色を控えるべし!

2017.12.27

コンテンツマーケティング

  • 雨宮 健人

    コンテンツ本部 本部長 雨宮 健人

マーケティングに活かせるWebコンテンツ制作の秘訣、1つ目は「1記事1ミッション」、そして2つ目に「広告・宣伝色を出さないこと」を、カスタムメディア本部第二編集部長の雨宮健人は挙げる。
Webコンテンツ作りは、コンテンツマーケティングを成功させる最重要キーでありながら、同時に担当者がぶつかる壁でもある。担当者の悩みに答えよう 。

聞き手:清水 秀起(コンテンツコミュニケーション・ラボ)

コンテンツマーケティングを行うサイトでのWebコンテンツ制作のコツを聞きましたが、そもそも、企業のコーポレートサイト(※)や、ニュースや各種情報を扱う一般のメディアサイトの場合と比べると、何が違うのでしょう。

※コーポレートサイト…ここでは、企業情報や事業内容、ニュースリリースなどの情報開示・紹介を主たる目的とした企業のサイトを指す

雨宮 Webコンテンツの果たす役割が違うといえます。前回話した「ミッション」ですね。

コーポレートサイトのコンテンツは、自社の商品がどういうものであるかを、ターゲットにしっかりと説明するのが主な役割です。一方、一般のメディアサイトのコンテンツは、何にも増して読者の興味を喚起するのが第一義となります。もちろん、興味を喚起する確率が低くても、そのサイトのコンセプトやテーマ上、提供すべき情報と判断されれば掲載はされます。そのジャッジはサイト全体のバランスを考慮しながら、中立的な見地から編集長が行います。

コンテンツーケティングを行うサイトの場合は、ちょうどこの中間に位置すると考えれば分かりやすいかと思います。ターゲットの一般的興味・関心を引きつつ、かつ自社の商品と結びつけることを役割とする。それがマーケティングサイトのコンテンツです。

事例紹介記事を例に解説。相手に「様」は付ける?

サイトによって役割が変わるのなら、Webコンテンツの作り方も変わってくると思います。表現方法の違いや制作時のポイントはありますか?

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雨宮 昨今では、コーポレートサイトでも、いわゆる“カタログ的”に情報を載せるだけでなく、ターゲットの興味・関心を引くよう、工夫を凝らす試みが増えています。

例えば、自社商品の導入事例、顧客の声などの記事をコーポレートサイトに掲載するのは、実際にその商品に興味を持つ“比較・検討層”には非常に響くといえます。この事例紹介記事は、たとえ同じ内容でも掲載されるサイトによって役割が異なるため、表現方法が変わってきます。どのように変わるかを説明しましょう。

まずコーポレートサイトの場合、商品の導入先はサイトを運営する企業にとってお客さまです。ですから、「○○株式会社様では~~が課題となっていました」というふうに、たいてい企業名には「様」をつけます。そして、自社商品をターゲットに説明するのが役割なので、お客さまの課題解決にどのように対応し、どのような効果をもたらしたかを、商品を主体に語る記事になります。

これが一般のメディアサイトですと、第三者的視線で「苦境から半年で立ち直った○○社」といったテイストで、主体は完全に導入先企業となります。下手をすると、解決に導いた商品名は一切出てこないこともあります。読者の興味を最も喚起する「どのように解決したか」という部分にスポットライトが当てられるからです。企業名に敬称はつけませんし、取材を受けても導入先企業、商品提供企業の双方とも、公開前の原稿チェックができないケースも珍しくありません。

マーケティングサイトではどのような表現になりますか。企業の担当者が取り組みやすいように教えてください。

雨宮 マーケティングサイトの事例紹介記事は役割がそうであったように、テイスト的にもこの中間であるといえます。コンテンツマーケティングの仕組みの中でいうと、事例紹介記事を読むターゲットは、かなりステータスが進んだ“HOT”な段階と位置づけられます。そういったターゲットが求める記事は何かと考えると、「広告っぽさ」「宣伝っぽさ」はマイナス要素になります。企業名に「様」を付けるのは広告・宣伝っぽさが生じるため、本来は避けたほうがよいでしょう。

ただ、コーポレートサイト内でコンテンツマーケティングを実行する際は、企業名に「様」を付けざるをえないかと思われますが、特設サイトのように、コーポレートサイトと切り離す場合は、一般のメディアサイトのように企業名のみでいくケースが見られます。

どちらのケースでも肝心なのは、課題解決に導いた商品やサービスについては、記事内では仕様や料金など詳細は説明せず、ですが商品名はきちんと出し、ハイパーリンクやバナー等で商品専門サイトやコーポレートサイトの商品説明ページ等へ、遷移できるようにしておくことです。ポイントは、ユーザーが自分の意思で遷移できるところです。

事例紹介記事は“上司の説得材料”の役割も

「ユーザーが自分の意思で遷移できるところがポイント」とはどういう意味ですか?


ユーザーの心の進行を7段階に分け、その過程で人数が増減することを表す図です。Webを漂う潜在層にコンテンツで働きかけ「認知」させる段階から、「興味・関心」「理解」「検討・比較」を経てリードとなり、「購入」へ至ります。その後、商品・サービスに「満足」して知人へ「推薦」する段階へ進みます。詳しくはマーケティング用コンテンツ設計・制作ページにて ユーザーの心の進行を7段階に分け、その過程で人数が増減することを表す図です。Webを漂う潜在層にコンテンツで働きかけ「認知」させる段階から、「興味・関心」「理解」「検討・比較」を経てリードとなり、「購入」へ至ります。その後、商品・サービスに「満足」して知人へ「推薦」する段階へ進みます。 詳しくはマーケティング用コンテンツ設計・制作ページにて

雨宮 読みたいページを自分の意思で選び、遷移するからこそ、ユーザーはこういう興味、段階にあると、閲覧履歴の解析から推測できるからです。前回、Webコンテンツは1記事1ミッションで作るべきとした理由の一つに「閲覧履歴から、興味分野の分析を行いやすくするため」と話したことにもつながりますね。

商品がB2Bの場合は、情報収集者と意思決定者は異なるケースがほとんどです。まず情報収集者はWeb上で自社の課題に照らし合わせながら、解決手段を探しています。導入を検討する商品候補に、ある程度あたりを付けた段階で、今度は上司を説得する材料を用意する必要が生じます。その際に使われる資料の1つが事例紹介記事です。

上司を説得する材料だとすれば、事細かに商品がなんたるかを説明するよりも、導入効果を示したり、導入事例の企業が自社と同業だったりするほうが、説得力があるわけです。同業他社が導入して効果が出ていれば、「うちもすぐに導入しないと取り残される!」と決裁が下りるかもしれないですからね。商品の詳細な紹介はそれこそコンパクトにまとまったカタログで事足ります。

広告・宣伝色を排し、コンテンツマーケティングの効果を上げる

事例紹介をはじめ、Webコンテンツの広告・宣伝っぽさを減らすと、リード獲得に影響しますか?

雨宮 とても大きく影響します。情報収集者は、世の中で山のように発信されている情報の中から、真実味のあるもの、自分のニーズに合ったものを探しています。そこで選ばれる条件は、自分で探し当てた情報かどうかが影響します。

事例紹介記事であれば、商品提供企業と導入企業の「お付き合い」で効果があったと言わされているのではなく、ガチンコで「世の成功事例」として紹介されているほうが、信ぴょう性や説得性が当然増すでしょう。Webコンテンツの広告・宣伝色を極力排除したほうが、サイト全体への信頼感も増し、「情報をたどってみよう、もっとページを読んでみよう」という意欲が湧いてくるのは明らかです。
そうして、ターゲットを引き込むためのWebコンテンツ設計(詳しくはこちら)に沿って、ターゲットをサイト内で回遊させられれば、ステータスの深いリード獲得につなげられます。

まとめると、マーケティングサイトの事例紹介記事は、「様」を付けず、「どのように課題解決したか」を解説するところは、ターゲットの興味を喚起する役割において一般のメディアサイトと同じ。そして、解決に寄与した自社商品名はきっちりと明記します。でも、商品の詳細説明は記事内では基本行いません。たいていの場合、情報が増えすぎて読み手側がどちらの情報も頭に入らない事態を招くからです。この「捨てる勇気」の大切さは前回お話ししましたね。

ただ、商品がグループウエアで、業務効率化が導入の目的の場合など、操作そのものが課題解決につながる場合はきちんと説明しましょう。使い勝手やインターフェースを説明したほうが、効果を実感しやすいからです。

他にも企業の担当者が取り組みやすい、広告・宣伝色を薄めるコツはありますか?

雨宮 記事に、より第三者感を出すとよいでしょう。取材や執筆を自社で行わず、外部の制作会社を使うと効果的です。自社で事例紹介記事を執筆・制作するとなると、どうしてもお客さま相手ですから、多少なりとも持ち上げる感じになりますし、相手からもうわべだけの謝辞しか引き出せない、なんてことになりがちです。執筆者や監修などとして、クレジットを入れるだけでも効果はあります。ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

秘訣その3「『商材』と『ターゲットの興味・関心』をつなぐ」につづきます。

連載:デジマ担当者のためのリードが獲れるコンテンツマーケティング実制作の秘訣

ブランド・ジャパン企画委員会からの提言

雨宮 健人

コンテンツ本部 本部長雨宮 健人

経営層へのIT活用をメインジャンルに、2007年からB2Bマーケティング、社員・OB向けインナーブランディングの媒体制作に携わる。2016年まで「ANA AZURE」(ANA)編集長、「Biz Clip」(NTT西日本)編集長、「周年事業ラボ」(日経BPコンサルティング)編集長などを歴任。