独自調査に見るマーケティング業界のトレンド 第2回

MAツールで解決する課題と適用範囲

2017.04.05

コンテンツマーケティング

独自調査に見るマーケティング業界のトレンド第2回: MAツールで解決する課題と適用範囲
弊社で展開している弊社の独自調査で実施した調査結果から、今年のマーケティングトレンドを探るコラムシリーズ。前回第1回では、2017年マーケターの方が注目する施策と、その施策を進める際の注意点をお伝えしました。第2回の今回はマーケティングオートメーションツール(以下MAツール)導入に焦点を当て、MAツール導入状況と、課題を探っていきます。

2017年2月、当社として初めて、マーケティングテクノロジーが一堂に会する「マーケティング・テクノロジーフェア2017」に出展しました。会場にてお客様とお話した中で印象に残ったのが、「MAツールを導入したのですが、どう活用すればいいのでしょうか?」という相談が多かったことです。MAツールという最新の武器を手に入れながらも、マーケターの方々はそれを活用する段になって、思わぬ「落とし穴」にはまってしまっているようでした。MAツール活用を阻む落とし穴とは一体何なのでしょうか。
展示会に先駆けて実施した「ちょこっとサーベイ」の結果から、「MAツールが解決できる課題」と「MAツールの適用範囲」という2つのキーワードが浮かび上がってきました。

MAツールが解決できる“課題”を見極める

マーケターの皆様は既にご認識の通り、MAツールは、仕組みでありシステムです。何らかのシステムを導入するときには、そのシステムでしか解決できない課題があり、その解決法として導入されることが一般的です。では、MAツールは、どんな課題を解決してくれるのでしょうか。
マーケティング活動における課題を尋ねたところ、MAツール導入済みと回答した人は未導入と回答した人に比べて、「予算不足」「人員不足」が課題であると回答する割合が、非常に少なくなっていました(図1)。このことから、MAツールを予算・人員不足の解消という目的で導入した場合、これらの課題は解消する可能性が大きいでしょう。

MAツール導入後も残るマーケティング施策の課題点
MAツール導入後も残るマーケティング施策の課題点

(図1:MAツール導入後も残るマーケティング施策の課題点 ※導入済みと回答した人が課題としている割合-未導入と回答した人が課題としている割合で算出)

 

一方、MAツール導入後も残り続けていて、かつ課題とする比率が増えた項目には、「コンテンツの品質」や「ROIの向上」、「ターゲット設定」が挙がりました。これらは、MAツールを導入しただけでは解消できない課題と言えるでしょう。特に「ROIの向上」と「ROIの可視化」を比べた場合、「ROIの向上」の方が課題として残る傾向が見て取れます。MAツールの導入によりある程度可視化はできても、向上までは難しいということかもしれません。
今回の調査において、課題として残る割合が最も高かった「コンテンツの品質」に関しては、以下のようなデータがあります。米国の調査会社であるForrester Researchが米国のBtoBマーケターを対象に、今後数年間の重点施策について聞いた調査結果です。「コンテンツの開発」は「デジタル化の推進」に次ぐ第2位に挙げられました。
(参考:「US Digital Marketing Forecast: 2016 To 2021」)
MAツールの先行国である米国では、ツールを用いて「人手不足」「予算不足」を解消しつつ、今後はその分の人手や予算で、コンテンツの品質をあげていく、こういった意図が読み取れそうです。
MAツールは魔法の道具ではありません。ツールひとつですべてのマーケティング施策上の課題が解決すると期待してしまうと、MAツールでは解消できない課題がとり残されたままになってしまいます。MAツール導入を検討する際には、ツールでは解決できない、コンテンツの品質に対する解決策も並行して考える必要があると言えるでしょう。

MAツールの“適用範囲”を見極める

次に、実際にMAツールを導入した人の満足度を、選定の際に重視したポイント別に見ていきます。導入済みの人は、MAツールのどのような機能に満足しているのでしょうか。導入済みの人の母数が少ないため、参考値ではありますが、「満足」という回答の割合が比較的高かったのは、「ベンダーの信頼性」「コンテンツマーケティングの実践」「シナリオやカスタマージャーニーの設定」を重要視したと回答した人でした(図2)。

「MAツール導入時に重視したポイント別 満足」と回答した割合(参考値)」
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(図2:MAツール導入時の重視ポイント別 「満足」と回答した割合(参考値))

一方で、「満足」という回答の割合が低かったのが「他ツール、システムとの親和性」を重視したと回答した人でした。コンテンツマーケティングやシナリオの設定など、マーケティング部門単体での施策を補助する役割としては充足するけれど、全社的に、たとえば他ツールを使用している営業部門と連携した施策を支えるには、現状のMAツールでは限界があることの表れとも考えられます。
MAツールで、マーケティング部門から営業部門まですべての課題が解決する、そう誤認してしまうと、期待した効果が得られず「活用できていない」と感じる原因になりかねません。こういった事態に陥らないためには、どこまでをMAツールの機能で補い、補えない部分はどう他システムと連携していくかを、整理しておく必要があります。
せっかく時間もお金もかけるのですから、MAツール導入を、うまく活用できなかった施策で終わらせてしまうのは、もったいないですよね。そのためには、ツールに解決してもらう課題の内容や範囲の定義、いわば「要件定義」をしっかりと行う必要があります。その際にはぜひ、次の考え方を押さえて進めていっていただきたいと思います。

  • MAツールは枠組みや仕組みを作るものに他ならない。コンテンツの品質や開発といった課題は、MAツールでは解決しないと理解する。
  • 全社、とくに営業部門と連携した施策を展開する場合は、既存のSFAなど他システムとの親和性を考える。

これらの点をクリアできれば、皆様のデジタルマーケティング施策も、また大きく前進すると思います。

(コンテンツコミュニケーション・ラボ)

調査概要

  • 調査内容:勤務先でのマーケティングやマーケティングツールの活用状況についての調査
  • 調査対象:勤務先でのマーケティング業務に関わる、マーケティング、広報ほか各部署の担当者
  • 調査手法:Webアンケート調査
  • 実査期間:2017年2月1日~5日
  • 有効回収数:3,722件
  • 調査実施機関:日経BPコンサルティング

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