先日、江崎グリコ「ポッキー」とキリンビバレッジ「午後の紅茶」のコラボレーション商品が発売されました(2015年2月17日)。「ポッキーミディ<バター華やぐぽってりカスタード>」と「キリン 午後の紅茶 ほんのりシナモンのアップルティー」です(図1)。一緒に食べると、まるでアップルパイのような味わいが楽しめるとうたっています。
コラボレーション・マーケティング(以下、コラボ)に取り組む企業は増えているようです。その狙いは新商品の開発であったり、新規顧客の開拓であったりとさまざまです。では、コラボによって顧客の見る目(ブランド)はどう変わるのでしょうか。二つのコラボの事例について考察してみました。
強みをさらに高めるコラボレーション
「モスバーガー」(運営:モスフードサービス)と「ミスタードーナツ」(運営:ダスキン)は、2008年に「MOSDO!」という共同事業を始めました。商品を共同開発したり、店舗のスケールメリットを生かしたりといった活動を続けています。飲食店という意味では同じカテゴリーにあるブランドのコラボですが、一方で食事として取る商品と、デザート系商品を提供してきた両店舗のコラボですから、補完関係にあるともいえます。
これをブランド面でみるとどうでしょうか。コラボ商品発売前の調査(ブランド・ジャパン 2008)を見ると、「アウトスタンディング」を除けば、実は両ブランドはそれ以外の3つの因子がほぼ同じスコアを示し、よく似た特性パターンを持っていました(図2)。そしてコラボが始まり、5年を経過した後の調査(ブランド・ジャパン 2014)では、両ブランドとも多くの因子で伸びていることが分かります(実際、モスバーガーのアウトスタンディングが下がった以外はすべての因子でプラスとなっていました)。
つまり「フレンドリー」を強みとする両ブランドがコラボすることで、双方の強みを維持・成長させられたことが分かります。ミスタードーナツにおいては「アウトスタンディング」のイメージも新たに獲得しています。
両ブランドのうち、特にパターンの面積が広くなったミスタードーナツについて、経年変化を示したのが 図3 です。ミスタードーナツは、2013年から「カルピス」とのコラボもスタートさせ、カルピス味のドーナツを夏季限定で販売しています。新たな共同事業の投入と同期するようにブランドが強くなっていく様が分かります。
ドイツ車は新たなブランド・イメージ獲得のコラボ
一方、最近のドイツ車のテレビCMを見ていると、「親しみやすさ」をアピールするCMが目立ちます。これまでのドイツ車では極めて低かったブランド・イメージの補強です。
2013年には「フォルクスワーゲン」のCMに、幅広い世代に多くのファンを持つ「サザンオールスターズ」が起用されました。2014年には「メルセデス・ベンツ」のCMに任天堂の代表的ゲームキャラクター「スーパーマリオ」が実写版で登場。そして、2015年には「BMW」のCMにやはり多くのファンを持つ「Mr.Children」の楽曲が起用されています。
高級車として知られるドイツ車ですが、これらCMの車をよく見ると、実は300万円台あたりの、これまでより低価格帯の車種のCMであることが分かります。200万円台のモデルもあるフォルクスワーゲンの「ゴルフ」や、メルセデス・ベンツのコンパクトSUV「GLA」(300万円台から)、BMW初のファミリーカー「BMW 2シリーズアクティブツアラー」(300万円台から)といった車種です。ですから「親しみやすさ」を持ったコラボのパートナーにアピールしてもらい、新規顧客を取り込もうとする意図があることは明白でしょう。
「メルセデス・ベンツ」と「スーパーマリオ」を例に取り、「ブランド・ジャパン」でこれらのイメージ・パターンを確認してみましょう。「ブランド・ジャパン」にはキャラクターのノミネートはないので、ここでは「スーパーマリオ」をその産みの親である「任天堂」に読み替えて、図4 に示しました。
現時点で確認できるのは、コラボが始まる前の2013年11~12月の調査結果(ブランド・ジャパン 2014)です。このイメージ・パターンの違いをみると、「メルセデス・ベンツ」のブランドでは極めて低かった「フレンドリー」や「イノベーティブ」が、「任天堂」のブランドで補強される可能性が考えられます。
コラボ開始後、“第1コーナー”の結果は「ブランド・ジャパン 2015」で判明します。ご興味のある方は是非、ご確認していただければと思います。
「ミスタードーナツ」は「今あるブランド・イメージを高める」コラボ、「メルセデス・ベンツ」は「新たなブランド・イメージを獲得する」コラボでした。ブランド・ジャパンは、そうしたコラボの成果を評価する助けとなることが分かります。
このほかにも最近は注目のコラボが目白押しです。「ブランド・ジャパン」にノミネートがあるブランド同士のコラボを探すと、「サントリー」の缶コーヒー「BOSS」と「ソフトバンク」、同じく「サントリー」が「セブン&アイ・ホールディングス」のプライベート・ブランドで手掛ける缶ビールや缶コーヒー、さらに企業向けのITサービスにおける「Apple」と「IBM」のコラボなど、いくつもの事例が思い浮かびます。これらのコラボ・ペア(図5)の効果が「ブランド・ジャパン」の各指標においてどのような数値として表れるのか、とても楽しみです。
またここ数年、「コラボレーションのお相手を探すために『ブランド・ジャパン』を使いたいのですが」というお話をいただくことも出てきました。私どもは「はい。それもブランド・ジャパンの有効な使い方ですね」と答えるようにしています。業種を超えて、多くのブランドを掲載しているブランド・ジャパンは、異業種コラボのお相手を探す貴重な資料となるでしょう。
連載:ブランド・ジャパンの使い方
- 第1回 消費者の頭の中をひも解くことからブランド作りは始まる
- 第2回 ビジネスパーソンの視点から、企業ブランドの姿を見る
- 第3回 第5の経営資源―ブランドを活かすための“自己モニタリング”
- 第4回 コラボレーションでブランドはどう変わるのか?