食品メーカーのサイトで最近「食育」の文字を見かけることが多くなりました。その背景について考えてみました。
そういえば「食育」というワード、以前に比べてよく見かけるようになったなぁ――食品メーカーのサイトを見ていて、最近気づいたことです。江崎グリコやキッコーマン、ハウス食品、明治のサイトではトップページに「食育」のリンクが載っています。トップページになくても、CSRのメニューの下(カゴメや日清食品グループなど)だったり、やわらかいタッチのサイトなら「知る・楽しむ」というメニューの下(フジッコやヤマザキ製パンなど)に「食育」の文字を見つけることができるのです。
この言葉が普及した背景には、2005年(平成17年)に成立した「食育基本法」と、それを推進する各省庁や地方自治体(※1)、学校の活動などが大きな役割を果たしています。10年ほどの間に「食育」という言葉を知っている人の割合は52.6%(調査は2005年7月)から77.9%(同2014年11~12月)と増えています(※2)。食品メーカーはこの活動に食品メーカーの立場から参加しているわけです。
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※1 例えば「食育」取組データベースを参照
※2 「食育に関する特別世論調査」内閣府政府広報室(平成17年9月)、および「食育に関する意識調査報告書」内閣府食育推進室(平成27年3月)
食育は、おもに子どもたちの「食」を意識した活動です。そこでちょっと意地悪に「お菓子のメーカーやお酒のメーカーはどうしているのだろう」と思い、各社のサイトを見てみました。すると、筆者の不真面目な発想とは対照的に、どのメーカーも実に真摯に取り組んでいました。
森永製菓は「菓子育」というページを立ち上げていました。そこには、消化器官が未発達な子どもにとって、おやつは三度の食事で不足するエネルギーを補う食品であること、またお菓子には人の心を和やかにし、気分をリフレッシュさせる効果があること、親や友だちとのコミュニケーションを演出する役割があることなどが書かれているのです。
ビール会社を持つアサヒグループはどうでしょうか。「アサヒグループの食育」サイトを見ると、食育を子どもに限定するのではなく、ライフステージを妊娠期・授乳期から高齢期に分けて、それぞれのステージごとに取り組みを示していました。例えば乳児期はベビーフードなどを扱うグループ企業の和光堂の取り組みを挙げ、幼児期や学童期はカルピスの活動を挙げる、そして青年期・壮年期ではアサヒビールの「人とお酒のイイ関係」サイトを紹介する、といった具合です。
サントリーは「水育」ページを立ち上げています。“水と生きる”同社らしいアプローチだと思います。ただしこのサイトは、もちろん水と人との関わりについて説明はあるのですが、どちらかというと水と環境の説明がメインになっています。「次世代環境教育」であると同社は位置づけています。
多くの食品メーカーが「食育」活動に熱心な理由を考えてみました。
その基本は、未来の消費者に食に無関心になってほしくない、ということでしょう。それは食品メーカーの将来の利益にも関係します。食に興味を持ち、健全な食生活を実践していく消費者に育ってほしい。そのうえでそのメーカーの製品を選んでくれれば、その後も長い間、買い続けてくれる可能性があります。アサヒグループの食育サイトには「すべての人の食に寄り添う」というコピーがありました。同グループの食品は、人々のあらゆるライフステージで選ばれる食品であるという自負と覚悟があるのだろうと思います。
思惑が見え隠れするサイトがないわけではありませんが、それでも食育に取り組んでいるメーカーには好印象を持ちます。これは私だけの印象でしょうか。一度、多くの消費者を対象に調査してみたいと思っています。
渡邉 真由美
コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部 コンサルタント
大学卒業後、食関連のメーカーに勤務、主に小売店を中心にマーケティング業務に従事。2014年に日経BPコンサルティング入社。2014年12月発行の「食の安全・安心 企業ブランド調査」を担当。2級カラーコーディネーター。食べることが大好きで週末は食べ歩き・飲み歩きをして過ごす。