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理想的なブランド構築のために踏むべきステップ(後編)吉田健一 NEW

前編では、ブランドづくりの本質は「ありたい姿」と「ターゲットがどう見るか」とのギャップを埋めることにあること、そのためのアプローチとしてのブランディングサイクルについて示した。後編では考え方から一歩踏み込み、より具体的な施策に言及していく。

聞き手:清水 秀起(コンテンツコミュニケーション・ラボ)

ブランド 企業イメージ 調査/分析 広報/PR IR 宣伝/広告 コンサルティング ブランド 広報

――ブランドづくりの考え方やアプローチ方法はわかりましたが、実際に、まず見出すべきというブランド・アイデンティティや目標を達成するための有効な施策を、策定するのは容易ではありません。具体的にはどのように形作っていくのですか。

吉田 ブランド・アイデンティティを決める会議では、私はいわばファシリテーター役を担い、まずクライアント企業の皆さんの発言から、可能性のある選択肢を複数ひきだします。

 この会議で注意すべきは、必ずしも多数派の答えが正しいわけではないということ。例えば意見が3つ出て、A案が5人、B案が4人、C案が1人と意見が分かれたとします。多数派の意見とは、過去の経験則に基づいていることも多く、一方でその会議はブランドの未来を見出すものなのですから、「3年後、ありたい姿になるために現状をどう変えるか」の観点で、客観的に判断すべきなのです。その観点で検討すると、結果として、少数派のC案が選ばれる場合が往々にしてあります。ブランドづくりにおいては、過去の経験則ももちろん大切ですが、未来のために今何を選択すべきかを考えることが肝心なのです。
 
 そして私は、クライアントの良いところを伸ばしながら効率的に改善する、そんなスタンスを大切にしています。企業が行ってきた施策の8割〜9割は生かし、残りの1割〜2割で、ブランドづくり全体のチューニングを行うという進め方です。例えば、新施策の導入はもちろんおすすめしますが、既存施策の選択と集中や、ターゲットのずれを正す等の施策を提案します。

 ですが時々、クライアント企業へうかがって、初めてブランドコンサルティングの会議を実施しようとする際に、ブランド担当の方に「今あるブランドのイメージや、取り組んできた施策を、根底からひっくり返されるのではないか」と誤解され、不安に思われることもあります。決してそのようなことはありません。もしも本当に根底から変える必要があるとしたら、そもそもその企業は今まで何年と続いていないでしょう。

 また、小さなところでは、「自社らしさ」「企業の個性や魅力」「ならではの特長」といった、認識がずれない平易な言葉をなるべく使うようにしています。

具体的なブランディング施策は、日経BPグループの得意とするコンテンツで提供

――ではブランディングサイクルのステップ4にて実行する、ブランド向上のための施策とは、具体的には何を行うのですか。

吉田 ブランドづくりの理由は企業ごとに当然異なります。業績向上のためなら商品ブランド力を改善することもありますし、人材採用のためなら企業イメージを変ることが必要かもしれません。ですので私たちは「この業種ならこの施策」と、金太郎飴のように短絡的に決めつけることはしません。企業が、誰に何を伝え、そして何を得たいのか。目的を明確にした上で、日経BPグループとして長年培ってきたコンテンツ制作力を活かした数あるコミュニケーション施策の中から、最適なものを提案します。
 
 具体的には、ブランドサイトやマーケティングサイトといった、Webサイトを中心としたデジタル施策をはじめ、ターゲットに対して、ブランドイメージを継続的に醸成する広報誌や、書店流通網と電子書籍インフラをつかってブランドメッセージを訴求するカスタム書籍、リクルーティングで、就職希望者へブランドイメージをわかりやすく伝える効果を狙った会社図鑑シリーズなどの印刷メディア、そしてブランドイメージを具象的に伝える映像などがあります。もちろん、企業とブランドのロゴやマークといったCI・VIのリニューアル、企業メッセージの制作も行います。
 
 日経BPグループとして、コンテンツの企画・編集・制作力を存分に生かした施策により、コンサルティングに留まらない、ブランドづくりのPDCAを一貫してお手伝いできるのが弊社の強みです。

ブランドづくりに欠かせないのは中・長期的な視点。一方で「イノベーティブ」というブースターも

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「戦略立案から施策実施、効果測定まで。ブランドづくりのPDCAを一貫してお手伝いできるのが強みです」と吉田。

――このブランディングサイクルはどれくらいの期間を見すえて取り組むべきと考えますか。

吉田 中期・長期経営計画と歩調を合わせる方が、効率的で具体的な施策を考えやすいので、3年、5年が一つの区切りになり得ます。経営目線で将来的なゴールを設定し、逆算してフェーズを区切って計画すればよいと思います。そうして区切った実行フェーズにおいては、社長と経営陣、ブランド担当者が、定期的に施策の振り返りをして、その効果を確認したり、軌道修正したりすることが大切です。

――最後に、ブランドづくりは中・長期的な視点になってくるわけですが、一方でブランド担当の方は、わかりやすい成果を求められることがあるのも、現実では。

吉田 その対処方法として、一つブランド・ジャパンのノウハウから述べるなら、キーは「イノベーティブ」のイメージです。やはり「時代を切り拓いている」「注目だ」と感じさせる施策は、社内外の目に留まりやすい。

 変わらない伝統と信頼ももちろん大切ですが、先進的、革新的なイメージを打ち出すと、社外から「最近、新しいことにチャレンジしていますね」「何か変えましたか」と声をかけられ、社内でも盛り上がる等、効果を実感しやすい。
 「イノベーティブ」のイメージは、それ自体が持つ印象の強さにより、ターゲットに知られ、その結果、商品・サービスが利用されて、徐々にブランド力につながっていく傾向がある。ただし、インパクトが強い半面、弱まりやすい特性を併せ持つイメージでもあります。そのため“ブランド力のブースター”として、イノベーティブを打ち出す施策は検討の価値があるでしょう。

 このようにブランドづくりは一筋縄ではいきませんが、当社にはブランド・ジャパンを通して蓄積してきた独自のノウハウがあり、私自身も2001年のプロジェクト立ち上げからブランド・ジャパンに携わってきています。そうしたノウハウを提供することで、ブランド力の向上、改善、お悩みの解決において、皆様のお役に立てるのではと考えています。

「ブランド・ジャパン」とは

権威ある方々で構成した客観性の高い委員会体制
独自の手法で調査し、日本社会が抱くブランド評価を可視化

ブランド・ジャパン2017パッケージ

 中立で良質な調査結果を目指し、ブランド理論、マーケティング分析、統計学の世界で活躍されている教授や専門家の方々5人からなるブランド・ジャパン企画委員会を組織している。委員会が調査手法や分析について協議を重ね、ブランドが持つ推進力を見極めるための基準を確立している。調査はまず、9月に、12の商品・サービスの分野ごとに、調査対象者が頭に思い浮かべるブランド名を調べる想起調査を行って、ノミネートブランド1500を選出します。次に、11月の本調査でコンシューマー市場(BtoC)編とビジネス市場(BtoB)編に分け、5万人超の消費者とビジネスパーソンがブランドを評価し、翌年3月に調査報告書として発行するというもの。2001年から毎年発行している。

  • コンシューマー市場(BtoC)編

    BtoC編
    消費者の抱く「フレンドリー」「コンビニエント」「アウトスタンディング」「イノベーティブ」の4イメージを因子としてスコア化。

  • ビジネス市場(BtoB)編

    BtoB編
    ビジネスパーソンが抱く「先見力」「人材力」「信用力」「親和力」「活力」の5イメージを因子としてスコア化。

※想起調査によりブランドがノミネートされていない場合、別途調査を行うことができる。ブランド・ジャパンの調査報告書データにそのブランドを組み込み、利用可能になる。

※ブランド・ジャパンをベースに目的に応じたカスタム調査を行うことも可能だ。例えば、社内外から見たブランドイメージのギャップを把握し、目指すべきブランド・アイデンティティを社内で共有する「社内外ブランド評価比較調査」、マーケティング施策やコミュニケーション施策がブランド評価に与える影響を定点的に観測する「マーケティング施策ブランド評価効果測定」など。

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前編ではブランドづくりの本質とブランディングサイクルの全体像が語られる

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吉田 健一
株式会社日経BPコンサルティング
コンサルティング本部 ブランドコミュニケーション部長
吉田 健一(よしだ けんいち)

慶應義塾大学経済学部卒業後、IT企業を経て、日経BP社に入社。日経BPコンサルティングに出向し、2001年より始まった日本最大のブランド価値評価調査「ブランド・ジャパン」ではプロジェクト初期から携わり、2004年からプロジェクト・マネージャー。2014年から現職。

 企業や大学のブランディングに関わる調査、コンサルティング業務に従事する傍ら、各種メディアへの記事執筆、セミナー講師などを務める。著書に「リアル企業ブランド論」(弊社刊)がある。

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