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サバイバル分析経営者の誤解(5)

オープンイノベーション前編―自前主義でのイノベーションは限界

  • 日経BP総研 クリーンテック研究所 河井保博所長
    文=菅野和利
  • 2018年01月22日
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オープンイノベーション前編―自前主義でのイノベーションは限界

ビジネスの現場で、オープンイノベーションのかけ声の下に新規プロジェクトを開始するケースが増えてきた。企業の情報発信においても、オープンイノベーションがキーワードになっている。例えばニコンのWebサイトには「オープンイノベーション」ページがあり、「未来を拓く新たな価値を、社外とのパートナーシップで」とうたっている。同様に清水建設大阪ガスもオープンイノベーションに関するWebページを持つ。ここ数年でオープンイノベーションはビジネスワードとして定着しつつある。

事実、「オープンイノベーション」というキーワードが雑誌の中で使われる比率が高まっている。5年前に遡る2013年には、日経BP社発行の雑誌媒体で「オープンイノベーション」は21記事でしか使われていない(「オープン・イノベーション」を含む)。ところが、2014年に46記事、2015年に70記事と次第に増え、2016年は115記事に出現する。2017年は92本と少し下がるが、2013年に比べると5倍近い数値となっている。念のため、Googleトレンドで「オープンイノベーション」の検索トレンドを調べても、2015年後半から検索トレンドが上向きに変化する。

9割が「オープンイノベーションが必要」

オープンイノベーションがトレンドになりつつある背景には、もはや自前主義(クローズドイノベーション)では、昨今の広い視野がなければ新たな価値を生み出せない、生み出せても市場の変化のスピードについていけない、といった事情がある。従来と同じ目線で市場を見ているのでは、新たな顧客層や、そうした顧客の心に刺さる新たな価値を見いだすのは難しい。また、技術の進化が速く、市場変化も激しいなかで、自前主義で試行錯誤を重ねているうちに、技術が陳腐化したり、当初想定していた市場がなくなったりすることもある。組織外との連携で新規事業を素早くつくり出さなければ、企業が生き残れない厳しい環境といえる。

日経BPのシンクタンクである日経BP総研クリーンテック研究所の河井保博所長は「ビジネスパーソンのオープンイノベーションへの意識は高い」と語る。日経BP総研が2017年5月に経営企画・事業開発担当者を対象として行った調査によると、「あなたの勤務先にオープンイノベーションは必要ですか?」という質問に対し、実に91.8%が「必要あり」と答えた。

ところが「あなたの勤務先はオープンイノベーションしていますか?」という質問に対しては、「実践中」が38.2%、「準備中」が39.8%だった。重要性を認識しつつも、なかなかオープンイノベーションに取り組めていない実態が分かる。

変化には対応できるのに外部と連携できない

もう一つ興味深い調査がある。2017年7月に周年事業ラボが行った調査では、「勤務先にとって組織の生命力を維持するために大事なことは」という問いに対し、「外部と連携できること」と答えた企業の割合はわずか3.9%だった。しかも、企業の存続年数によって顕著な傾向が見える。存続年数が長い企業ほど、外部との連携を軽く見ていることだ。

存続年数と「外部と連携できる」割合が反比例に

存続年数と「外部と連携できる」割合が反比例に

さらに関連するデータとして「変化に対応できる」がある。このデータからは、存続年数が長い企業ほど、変化に対応できることが企業存続に大きく影響すると考えていることがうかがえる。

「変化に対応できる」のが大事だと考える割合は、存続年数の長さとほぼ比例

「変化に対応できる」のが大事だと考える割合は、存続年数の長さとほぼ比例

変化への対応を重視しているものの、外部との連携はあまり考えない――。しかも、幾度も経営の危機を乗り越えてきたような長く存続している企業ほど、その傾向が強い。そこにあるのは、多くの日本企業が抱いている自前主義である。

自前で問題を解決できているうちは、もちろんそれで構わない。ただ、ここまで成熟してきた社会では、価値観は人によって大きく異なり、従来の発想の延長では新たな価値は生み出しづらくなっている。自前にこだわると、ビジネス展開に多くの時間がかかる。極端な場合は、現業を重視する社内の勢力に押され、新たなビジネスに踏み出せないまま時間が経過していく。このスピード感と危機意識の欠如は、いつ他業種から第三のプレーヤーが既存の事業モデルを破壊していくか分からない今後の社会では命取りになりかねない。

大切なのは、これからの社会の方向性を見据え、他社に先駆けて新しい価値を提供すべく、その模索・開発に努めること。そのためには、既存の市場や技術についての固定的な考え方を排除できるような異分野のプレーヤーや、自社にはない技術や市場を持つ企業との連携が欠かせない。

後編に続く

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  • 2018年01月22日
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