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サバイバル分析経営者の誤解(1)

異業種の社外ブレーンが経営計画づくりには不可欠

  • 日経BP総研 望月洋介所長
    文=菅野和利
  • 2017年07月28日
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異業種の社外ブレーンが経営計画づくりには不可欠

企業の発展に欠かせない経営計画は、いったん策定されるとその達成が至上命題となる。多少の修正はあるものの、途中で戻れるケースは少ない。だが昨今の環境の変化は、従来型の計画方法では不十分な状況を生み出した。「今までこうしてきたから」「前任者がこうだったから」は通用しなくなってきた。経営計画を決定する経営者にとっても、計画づくりに携わる実務スタッフにとっても、必ず意識しておかなければならない要素がある。

自社の論理だけで経営計画をつくる勘違い

「周年を迎えるに当たり、中長期の経営計画の素案を作成した。ご意見をいただきたい」

日経BPのシンクタンクである日経BP総研には、第三者の意見を求めてこのような問い合わせが寄せられる。経営者の方針の下、多大な労力を割いて作成したであろう経営計画には、重要な要素が欠けているケースが多い。

日経BP総研の望月洋介所長は「これからどんな企業も、AIやIoT、ビッグデータといった要素から影響を受けるようになる。ところが、中長期の経営計画なのに、AIもIoTもビッグデータの要素も入っていないケースがある」と語る。市場が加速度的に変化する中、自社が築いてきた過去から未来を考えても、的を射た経営計画にはならない。

例えば自動車関連の企業ならば、ガソリン自動車から電気自動車へ移行していく流れは、中長期の経営計画を考える際に欠かせない要素となるはずだ。AI、IoT、ビッグデータの固まりといえる自動運転も考慮しなければならない。これまでに関わってこなかった領域が主流になれば、事業が立ち行かなくなる可能性すらある。

「経営者はつい過去の成功の延長線上に経営計画を作りがちだ。しかし、自社の論理だけで中長期の経営計画を作ろうとしているなら、すでに“勘違いをしている”と言っていい」(望月所長)

異業種との交流で社会トレンドを見極める

勘違いにならない中長期の経営計画をつくるには、自社の業種だけでなく異業種の変化も見逃せない。今はどんな時代なのか、これから5年、10年、20年先はどんな時代になるのか。社会全体の変化に知見を持つべきだ。ある世界的なIT企業は、経営計画を策定するために、未来をつくるであろう世界中のキーパーソンにインタビューを行っている。そこに割く予算は年間10億円とも20億円ともいわれる。様々な業種のキーパーソンとの会話から社会トレンドを把握し、未来の可能性を探る。

いまや、自社の未来を描こうと思ったら、異業種を含めた社会トレンドの知見が不可欠になっている。先の自動車関連の企業であれば、電気自動車や自動運転を経営計画に反映するためには、情報通信、エネルギー、社会インフラ分野の知見が必要だ。

つまり、異業種を知らなければ、もはや時代の先を捉えられない。異業種を知る最も有効な手立ては、先の世界的なIT企業のように、異業種のキーパーソンに会うことだ。理想をいえば、異業種の枠を超えたチームをつくりたい。あなたが経営者なら、異業種のキーパーソンを含めたあなた専用の「社外ブレーンチーム」(望月所長)をつくる。あなたが経営計画策定の実務担当者なら、経営者が勘違い経営計画にゴーサインを出す前に、社外ブレーンチームをつくるお膳立てをする。

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異業種の枠を超えた社外ブレーンチームの例

第三者とチームを組む

社外ブレーンチームをつくるためにはどうすればよいのか。業種内で関係が閉じがちな日本企業において、複数の異業種とつなぎを付けるのは難しい。例えば、経営者や経営計画の実務責任者が異業種のキーパーソンに会いたいとする。つてがない場合はどうするか。勤務先の代表電話にかけても、なかなか話は通らないだろう。運よくセミナーなどで名刺交換できればよいが、講演する立場にいない人なら、名刺交換にたどり着くまでにかなりのハードルがある。日本企業には異業種の経営者・社員同士が直接コンタクトする文化が少ない。

ただ、方法はある。第三者を介するのだ。異業種のつてを豊富に持つコンサルタントや、ニュートラルな立場である学者を利用する手がある。第三者をうまく利用すれば、難なく異業種とつなぎを付けられる場合も多い。望月氏は「例えば、あらゆる業界とのネットワークを持つ日経BPのシンクタンクである総研は、どんな業種の企業・組織でも連絡が取れる。企業の将来像をつくるために、異業種のキーパーソンや研究者、アナリストなどでチームを編成できる。周年のタイミングだと協力を得やすい」と、第三者の強みを語る。

第三者を介して異業種とつなぎを付け、経営計画策定のための社外ブレーンチームをつくる。第三者、異業種とともに、将来像に関する意見を募る。異業種を知り、社会トレンドを知れば、自社が目指すべきポジションとビジョンも明確になってくる。ここまでたどり着ければ、しめたものだ。見えたビジョンはもちろん、異業種のキーパーソンと語り合った経験自体が価値となる。中長期の経営計画も的を射たものになるだろう。

企業を経営していると必ず直面する経営計画策定は、周年のタイミングで動くと成果を得やすい。周年事業に何百万円、何千万円もかけて、一過性のお祭り騒ぎで終わらせてはもったいない。異業種と交流して未来を推し量り、企業を永続させるための中長期経営計画をつくるべきだ。周年はその絶好のタイミングである。

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  • 2017年07月28日
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