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企業研究100年企業の源流(6)1699年創業

鰹節一筋300年の老舗企業「にんべん」が追求する"こだわりと新しさ"

  • 文=里見渉
  • 2018年04月06日
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鰹節一筋300年の老舗企業「にんべん」が追求する

東京・日本橋にある三越本店のはす向かいに立つ「コレド室町」。鰹節専門店「にんべん」の日本橋本店は、日本橋再生計画の一環として完成した同ビルの1階にある。店内には鰹節、惣菜、お菓子など鰹節を使った商品が並び、プロの削り師による鰹節削りの実演も行われている。 この日本橋本店の一角あるのが「一汁一飯」をテーマにかつお節だし、月替わりのだしスープメニュー、かつぶしめし、数量限定のお弁当、惣菜などを提供する「日本橋だし場(DASHI BAR)」である。ランチタイムには汁物とご飯物を組み合わせたランチメニューも用意され、行列ができる盛況ぶりだ。2010年のオープン以降、かつお節だしは累計85万杯を達成(2018年3月現在)したという。

鰹節にこだわりながら常にビジネスを変革

初代の高津伊兵衛がにんべんを創業したのは元禄12年、1699年のことだ。20歳の伊兵衛は、現在の野村證券本社付近で戸板を並べて鰹節や塩干類の商いを始めた。当初は苦労の連続だったが、やがて鰹節問屋として成長し、1720年には現在の本店がある室町に移転して鰹節問屋として初めて"現金掛け値なし"(正札どおりの値段で販売する)の看板を掲げた。

この「現金掛け値なし」という商売は、わかりやすいことで支持された。また、江戸末期の8代目の高津伊兵衛は、銀製の薄板でつくられた商品券を発行するなど、鰹節の製法や原材料の調達方法だけでなく、売り方(ビジネス)についても工夫が重ねられてきた。

戦後には大きな危機もあった。化学調味料が普及したことで鰹節の売り上げが激減したのだ。それを救ったのが「つゆの素」と「フレッシュパック」という2大ヒット商品だった。これらの商品は鰹節の利用形態に変革を起こす。削り器で削り出すことなく鰹節を使用できるようにしたことで、鰹節が身近な食品として見直されるようになった。

日本の食文化を代表する食品として領域を広げる

このように、長い歴史の中でにんべんはビジネスの新しいスタイルを創り出し、新商品を生むことで企業として存続し成長してきた。

アンテナショップの役割を担う日本橋本店も、提供するメニューを毎月変えている。顧客の嗜好性を探り、変化を察知するのが狙いだ。惣菜など商品の品揃えについても拡大し、異業種とのコラボレーションも積極的に展開している。実際に日本橋本店で人気のある「ぬれおかき」は、食品卸の老舗である国分株式会社との共同開発であり、同じフロアの金箔専門店「箔座日本橋」では金箔入りだしなども販売している。

さらに冒頭で紹介した「だし場(DASHI BAR)」は、2010年に第1号店をオープンしたあと、2014年8月に羽田空港国際線ターミナルに2号店を、2015年8月には東京・丸の内の丸ビル地下1階に「日本橋だし場 丸ビル店」、東名高速道路の海老名SAに「日本橋だし場+EXPASA海老名店」をそれぞれオープン。また、2014年には同社初の飲食店「日本橋だし場 はなれ」を開設。"だしの旨味"を生かした料理を一汁三菜のスタイルで提供し、日本型食生活(鰹節から始める健康生活)を提案している。

日本の食文化を代表する鰹節の用途を広げ、食品としての領域を広げるにんべん。“だし”の魅力を海外に広め、日本人にはその文化を再認識する機会になる。そして、これらの変革が長寿企業の成長を支えている。

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  • 2018年04月06日
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