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企業研究100年企業の源流(4)

ドイツの150年企業に学ぶ、持続的成長の秘訣(前編)

  • 文=津田浩司
  • 2017年12月22日
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ドイツの150年企業に学ぶ、持続的成長の秘訣(前編)

150年以上の歴史を持ち、長く世界の化学産業をリードしてきたBASF。化学品や高機能製品、機能性材料、農薬関連製品、石油・ガスなどの事業を世界で展開しており、私たちの快適で安全な暮らしを支える様々なモノの多くにBASFの製品が採用されている。現在、グループ全体の従業員は11万人超。BASFはどのようにして、今日に至る持続的な成長を遂げることができたのだろうか。BASFジャパン代表取締役副社長で財務管理統括本部長を務める須田修弘氏に、BASFのカルチャーや変革への向き合い方などを聞いた。(本文中敬称略)

モノと人、ノウハウや知見をつなぎ
イノベーションを実現

大川 BASFは創業から150年以上という老舗企業です。長い歴史を持つというだけでなく、著しい成長を遂げて、グローバル市場において強固なポジションを築いています。本日は持続的な成長の秘密に迫りたいと思いますが、まずBASFがどのような会社なのかをお話しください。

BASFジャパン株式会社 代表取締役副社長 財務管理統括本部長 須田修弘氏

BASFジャパン株式会社
代表取締役副社長 財務管理統括本部長
須田修弘氏

須田 一言でいうと、革新を求め続ける総合化学会社です。世界各地に拠点を持ち、グループ全体で11万人以上の社員が働いています。企業目的として掲げているのは、“We create chemistry for a sustainable future(私たちは持続可能な将来のために、化学でいい関係をつくります)”。ケミストリーには「化学」以外に「相性」といった意味もあります。BASFは多様な化学品や素材などを提供していますが、こうしたモノとモノをつないで相性を探りながら、革新的な製品やより付加価値の高いモノを生み出してきました。

 私たちは今、世界の人口と需要が増え続ける一方で、地球の資源には限りがあるという課題に直面しています。BASFは化学によって生まれるいい関係を通じて、お客様や社会が持つ課題を解決するとともに、限りある資源を最大限に有効活用していきたいと考えています。こうした考えは、モノだけでなく、人やノウハウも同様です。多様な専門性を持つ人や知見、技術などを結び付けることで、イノベーションを生み出す。そんな取り組みを営々と続けながら、今日に至る道のりを歩んできました。

資料:BASFジャパン
資料:BASFジャパン

大川 キーワードは「つなぐ」ですね。

須田 ドイツ語では「Verbund(フェアブント)」といいます。「つながり」とか「統合」を意味する言葉です。もともと生産現場で使用してきたもので、BASFが創業当時から掲げてきた考え方でもあります。世界6カ所に置かれた統合生産拠点も、フェアブント拠点と呼んでいます。日本のコンビナートは上流から下流に向かって、原材料や中間製品がA社→B社→C社と流れていきますが、フェアブント拠点ではすべてをBASFがカバーしています。これにより、原材料やエネルギーを効率的に活用するだけでなく、排出物の削減や物流コストを低減することができ、シナジー効果を発揮しています。

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ドイツ・ルートヴィッヒスハーフェンにある、BASFのフェアブント拠点。
敷地面積約10平方キロメートル、世界最大の統合化学コンビナー

大川 すべての工程をコントロールしているので、自分たちでつなぎ方を工夫しやすいといえるかもしれませんね。

戦略を具体的な施策に落とし込み
素早く、徹底的に実行する

株式会社日経BPコンサルティング  カスタムメディア本部 第二編集部  次長 キュレーター  大川亮

株式会社日経BPコンサルティング
カスタムメディア本部 第二編集部
次長 キュレーター 
大川亮

大川 次に、企業風土についてお聞きします。BASFは長い歴史の中で、どのようなカルチャーを培ってきたのでしょうか。

須田 もともと、ゲマインシャフト的な風土を持っている企業です。日本語では、「家族的」という表現が近いでしょうか。ただ、規模の拡大や事業のグローバル展開に伴い、そうしたカルチャーを従来通りの形で残すのは難しくなりました。そこで、「ベストチームを編成する」という戦略方針を掲げています。一人ひとりの社員に成長を促し、成長した社員を適切に評価する。そして、適材適所の人材配置によってベストチームをつくる。こうした方針に基づき、私たちは徐々にカルチャーを変えてきました。

大川 家族的なカルチャーは、ともすればなれ合いのような風土に転化しがちです。BASFはその落とし穴に対して意識的であり、戦略的にそれを回避してきたといえるでしょう。具体的にはどのようなやり方でなれ合いを排除してきたのですか。

BASFジャパン株式会社 代表取締役副社長 財務管理統括本部長 須田修弘氏

須田 ここでもフェアブントの考え方が生かされています。なれ合いに終わらず、自分の持つ知識と有機的につなぎ合わせる。つまり、一人ひとりがもつ知識を積極的に共有し合い、有機的につなぎ合わせることで、そこから革新性を生み出そうとする、そんな企業風土があります。

大川 そのフェアブントの考え方は、事業戦略にも根付いているように思います。

須田 はい。BASFは度重なる事業ポートフォリオの見直しを行ってきましたが、絶えずこだわりつづけてきたのは「総合化学会社」であること。それは私たちの誇りであり、強みでもあります。世界の化学産業を取り巻く環境は大きく変化してきました。例えば、車の燃料は、ガソリンなどの液化燃料からEV(電気自動車)向けリチウムイオン電池へとシフトしつつあります。自動車業界にとっては100年に一度の大転換期とされていますが、BASFは総合化学メーカーとしてどちらにも必要とされる化学品を取り扱っており、市場の需要に応じて対応することが可能です。グローバル市場における競争激化、新興国企業の台頭など、欧米や日本の化学メーカーは大きなチャレンジに直面しています。特に汎用品については、新興国企業の攻勢が強まっており、既存化学メーカーの多くが川下分野、スペシャリティ分野にシフトしています。当社も同様にこのような戦略を志向していますが、もし違いがあるとすれば、戦略実行のスピードや徹底の度合いかもしれません。

後編に続く>

企業プロフィール

BASF(ビーエーエスエフ)

150年の歴史を持つ世界をリードする総合化学メーカー。従業員数11万人を超える世界有数の巨大企業グループで、かつては三菱化学、三井化学、武田薬品工業や日油との合弁事業も行っていた。現在は日本法人BASFジャパン(従業員数1200人:2016年12月現在)のほか、出光興産、イノアックコーポレーション、住友 金属鉱山や戸田工業との合弁会社も設立している。
日本国内には24の生産拠点(建設化学品事業部の製造センター16カ所を含む)があり、製品ポートフォリオは化学品、高性能製品、機能性材料、農業関連製品などと幅広く、自動車、建設、包装材、医薬品、電気・電子、農業など、ほぼすべての産業で使用されている。例えば、六本木ヒルズ森タワー(コンクリート混和剤などの建設化学品)、ランニングシューズのソール(熱可塑性ポリウレタンエラストマー発泡粒子)、クリーニングスポンジ(メラミン樹脂発泡体)、コーヒーカプセル(生分解性プラスチック)や農業用殺菌剤などもBASF製品が使用されている一例である。

BASFの社屋ビルと製品

略歴

須田 修弘(すだ・のぶひろ)

BASFジャパン株式会社 代表取締役副社長 財務管理統括本部長

1962年神奈川県生まれ。1986年青山学院大学経済学部経済学科卒業。1986年BASFジャパン株式会社入社。樹脂化成品本部に配属。購買担当、経営開発室などを経て、2006年に財務・経理担当ゼネラルマネージャーに就任。2009年BASF東アジア地域統括本部(香港)ファイナンス&コントローリング アジアパシフィック ディレクターを歴任し、2013年8月から現職。

大川 亮(おおかわ・りょう)

株式会社日経BPコンサルティング カスタムメディア本部 第二編集部 次長 キュレーター

1973年大阪府生まれ。1998年明治大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経て、2001年株式会社IDGジャパン入社。エンタープライズIT分野の編集記者として、月刊Computerworld副編集長、月刊CIO Magazine副編集長などを歴任。2012年株式会社日経BPコンサルティング入社。現職に至る。ICTを活用した経営革新やイノベーション創出などをテーマに各種メディアの企画・取材・制作を担当。

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