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企業研究長生き企業の“ねばり理論”(3)

長寿企業大国日本、これからの100年企業に求められること

  • 中小企業経営研究所 伊藤暢人所長
    聞き手=内野侑美/文=河村裕介
  • 2017年10月06日
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2015年9月の国連サミットで、2030年までの国際目標としてSDGs(持続可能な開発目標)が採択された。持続可能な世界を実現するための17のゴールが示されたことで、多くの企業が、事業を通じた社会課題の解決と持続可能な経営に本腰を入れ始めた。連載第3回では、これからの長寿企業が注力すべきことについて、日経BP総研 中小企業経営研究所の伊藤暢人所長に聞いた。

第2回「長寿企業大国日本で今、起きている社会と企業の変化」はこちら。

企業市民であることが長生き企業の条件

― 前回は、これまでに生き延びてきた企業の取り組みについて伺いました。

伊藤:マーケットの変化への対応や経営者の覚悟が求められることをお話ししましたが、これからは企業市民であることも重要な条件になります。

中村ブレイスは、石見銀山のある島根県太田市大森町にある義肢義足メーカーで、地元出身の中村俊郎さんが京都や米国で修行し、地元に戻って1974年に創業した会社です。品質の高さが知られたことで売り上げが伸び、インターネットの普及とともに顧客も世界に広がりました。中村社長は、かつては銀山の麓で代官所の陣屋町として栄えた地元を、再び世界に誇れる町にしたいという思いから古民家の再生を開始。44年間で約55軒を買い取り、社員の住居、迎賓館兼資料館、オペラハウス、喫茶店などに改修しました。町がきれいになり、活気を取り戻したこともあり、石見銀山は10年前に世界遺産に登録されました。大森町には、パンやケーキのマイスター、芸術家なども暮らすようになり、子どもの数も増え始めています。

「かんてんぱぱ」ブランドなどの寒天製品の製造・販売で知られる長野県の伊那食品工業は、会長の塚越寛さんが事実上の創業者として立て直し、今では20人の社員募集枠に全国から7000人が集まるような人気企業になりました。同社では、工場のある約3万坪の緑地にレストラン、アートギャラリー、ショップなどを展開していますが、夜間の営業は行っていません。地元の飲食店のお客さんを奪うことになってしまうからです。社員も地元を大切にしていて、毎朝会社に車で来るときは渋滞を防ぐために右折をせず、遠回りでも左折だけで出勤します。伊那食品は、自然界に学び、少しずつ、そして確実に成長する「年輪経営」を続けており、これは、サステナビリティーに通じる考え方です。地元を大切にし、地元にいてほしいと思われなくては、会社は長続きしません。

インターネット時代のサステナブルな経営とは

― インターネットの普及は、中小企業にどのような影響を与えていますか。

伊藤:「会社のストーリー」や「こだわり」をアピールすることで、共感型の顧客を獲得できるようになっています。

小豆島のヤマロク醤油は、社長の山本康夫さんが五代目として継いだときに、売り上げの4分の3を占めていた安価な量産型商品からは撤退し、すべての商品を木桶で作った天然醸造の醤油にシフトさせる決断をしました。さらに、木桶を作る会社も日本に1社しか残っていなかったため、木桶職人復活プロジェクトを立ち上げ、ご自身も桶作りの修行を行っています。こういった決断は、オーナー企業にしかできないでしょう。今は、高くてもストーリーのある商品を買いたい人が増えていますから、そういう人たちに支えられて、高付加価値商品を作り、成長のための再投資をすることができるようになっています。

― ニッチ商品が増えているのでしょうか。

伊藤:顧客の想像を超えて、ニッチの「枠」が増えています。兵庫県の丸玉運送グループは、ジャストヨット運送というブランドを展開しています。それまでなかったヨットの陸送というサービスに特化し、料金と納期を明瞭にすることで大ヒットし、「ヨットを運ぶ時はジャストヨット運送」と言われるまでになりました。インターネットの時代ですから、とんがった企業やサービスがあれば、そこに世界中から顧客が集まるという構図になっています。

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中小企業経営研究所 伊藤暢人所長

2020年のその先へ、今こそ余力を蓄える時

― 2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。

伊藤:大きな経済の流れとして、2020年までは好景気が続き、その後は悪くなっていきます。ロンドンでも、リオでも同じことが起きています。景気のいいこの時期に、2020年以降に備えて自分の会社がどう生き延びるかを考え、選べるなら利益率の高い仕事を選び、体力のあるうちに先行投資をしておくべきなのです。100年企業は、第一次世界大戦、第二次世界大戦があり、関東大震災、阪神・淡路大震災、東日本大震災といったクライシスを乗り越えてきた会社です。運不運もありますが、常に余力を蓄えている会社でなければ生き延びられないということはいえると思います。

プロフィール

伊藤暢人

広島県出身。1990年に東京外国語大学を卒業し日経BP社に入社。新媒体開発、日経ビジネス、ロンドン支局などを経て、日経トップリーダー編集長に。2017年、中小企業経営研究所の設立に携わり所長に就任した。幅広い業界の中小企業経営に詳しく、経済産業省やトーマツ ベンチャーサポートなどが主催する賞の審査員を歴任。

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  • 2017年10月06日
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